感動経験をロボットを通じて伝えたい
当初は、同社の先端技術をアピールするプラットフォーム開発プロジェクトというテーマだけで、どのようなロボットを作るのか具体的なイメージはなかったといいます。開発メンバーが議論を重ねた結果、「見たことない自転車ロボットを作りたい」という結論になりました。
それというのも、同社は1991年に自転車型ロボットを発表しています。これはCMにも登場し話題となりました。その後、稼働していない状況だったにも関わらず、10数年経っても、年に数件の問い合わせがある人気キャラクタです。
村田製作所のPRロボットを作るにあたり、この初代に対するユーザーの記憶を大事にしたいということと、自転車には環境負荷が小さく優しいイメージがあるという点が大きかったといいます。また、村田製作所の技術をアピールするため、ジャイロセンサやミリ派レーダなのど車載アプリケーションの単純化モデルとしても自転車は都合がよかったのです。
もうひとつ、多くの人が一生懸命に練習をして自転車に乗れるようになったという「人生のエポック」といえる感動体験を持っていることが大きな要因でした。練習を重ねて自転車に乗れるようになった時の感動、自転車により行動範囲が広くなってちょっとオトナに近づいた嬉しい気分。そうした感動経験をロボットを通じて伝えたい。そのように二代目ムラタセイサク君のコンセプトが決定しました。
わずか半年のプロジェクトがスタート
2005年4月に開発体制が決定し、社内のフロンティアテーマとして正式にプロジェクトがスタートしました。スタート時点の開発目標は、滑らかな走行と幅10cm×長さ2mの平均台での走行、1秒間のスタンディングの3点でした。10月に開催されるCEATEC2005に出展するために、わずか半年後の9月末が完成時期として定められました。
実は初代ムラタセイサク君の走行は、かなりフラフラ運転で運転する側の操縦スキルが要求されていたといいます。そこで、最新のジャイロセンサーや超音波センサーなどを搭載することは、事前に決定していました。
まず、端材を利用して不倒停止の実験装置を作成しました。装置の下部にベアリングを置き左右に動く鉄の棒を立てています。バランスを取るための慣性円盤を真ん中に取り付け、角度を測定するためにジャイロセンサを搭載しています。
実験装置上では不倒停止制御をスムースに行うことができました。けれど、自転車という乗り物の形にして解析すると難しい問題が多々あったといいます。開発当初は、走ることができず、転倒して床に激突するのを避けるために、紐をつけて犬の散歩状態でテストを繰り返していたそうです。動画で走行距離を0cmから10cm、パラメータ調整を繰り返し2.5m、4.5mと伸ばし、コーナーリングへチャレンジしていく過程が披露されました。数え切れないほどトライアンドエラーを繰り返し、スムーズな走行が可能となり紐を取り、通常走行から不倒停止まで完成した瞬間には、開発者一同が「おぉー!」と歓声を上げています。その時の気持ちは、子ども時代に初めて自転車を補助輪なしで乗った時と同じなのでしょう。
ムラタセイサク君は2種類の走行モードを持っています。ある程度の速度でカーブなどを走る時(これを“通常走行”と呼びます)には、人間と同じようにハンドル操舵でバランスを制御しています。もうひとつは、不倒停止、微速、直線走行の時の制御で、倒立振子を利用しています。不倒停止は、前進から後退への切り替えをするために必須の技術として開発当初から目標としていたものす。


