5. ゲーム
ゲームは最新バージョンのFlashにおいてAdobeがもっとも力を入れてきた分野の一つである(製品担当者インタビュー参照)。HTML5でもCanvasを使うことでアニメーションやゲームを作成できるが、表現力という点ではまだFlashに敵うものではない。さらに、最新のFlashではGPUのハードウェアアクセラレーションを利用する「Stage 3D」が加わったことにより、パフォーマンスも大幅に向上している。
HTML5のCanvasが有望であることは間違いがないが、ブラウザによるサポート状況が統一されていないことや、パフォーマンスが十分でないことなどの理由から、現時点ではFlashが現実的な選択肢だろうとOwen氏は言う。
Flashがゲーム分野で優位であるもう一つの理由として、ここにもAIRの存在がある。高性能なグラフィックスを駆使するゲームや、端末のセンサーなどを利用するゲームなどでは、プラットフォームネイティブの機能や性能を最大限に活用する必要がある。そのようなケースでは、WebブラウザベースのFlashだけでなく、ネイティブアプリケーションとして動作するAIRを使えるメリットが大きいというわけだ。
6. Flashが劣勢となるのは
最後にOwen氏は、以下に挙げる点では、HTML5の方がFlex/Flashよりも優位であると指摘した。
- アクセシビリティの確保
- サーチエンジンに対する最適化
- Webサイトの構築
同氏によれば、HTMLがセマンティックなマークアップ言語であるのに対し、MXMLはビジュアルなマークアップ言語にあたるという。前者は単一のデータ構造に複数のビューを適用することが得意であるのに対し、後者は外部のデータオブジェクトを見せるための視覚効果を定義するのに適しているとのこと。Webブラウザはセマンティックなマークアップ言語を前提として設計されているため、Webブラウザの機能として完結できる分野であれば、当然HTML5に優位性があることになる。
また、Owen氏はネイティブアプリケーションとFlex/Flashを比べた場合についても言及した。以下の点では、Flex/Flashはネイティブアプリケーションには敵わないという。
- パフォーマンス
- アプリケーションサイズ
- 一貫性
結果として同じことが実現できる場合、どの技術を選択するかはメリット/デメリットのトレードオフということになる。それぞれの技術の得意とする分野、苦手とする分野を把握し、どこにフォーカスを当てるかによって適切な技術を選ぶことが重要ということだ。