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「Adobe MAX 2011」イベントレポート

【Adobe MAX 2011】UI開発のスペシャリストが語るFlex/Flashの優位性


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 「Adobeにとって、FlashとHTML5はいずれも戦略上極めて重要な技術であり、今後も両者を継続してサポートしていく」――HTML5の登場以来、米Adobe Systemsは一貫してこの姿勢を貫いてきた。2011年に入ってからは、オーサリングツール「Edge」やWebサイト構築ツール「Muse」といったHTML5向けのツールも投入し始めている。では、開発者はFlashとHTML5はどのように使い分けていったらいいのだろうか。

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 本稿では、10月3日から5日にかけて開催されたAdobe主催のユーザカンファレンス「Adobe MAX 2011」より、米EffectiveUIのシニアソフトウェアアーキテクトを務めるRJ Owen氏による技術セッションの様子をお伝えする。EffectiveUIはUIの設計や開発に関する高度かつ専門的な技術を持つ企業である。セッションでは、Owen氏がUIの専門家としての視点からFlexおよびFlashの優位点を紹介した。

図1 米EffectiveUI シニアソフトウェアアーキテクト RJ Owen氏
図1 米EffectiveUI シニアソフトウェアアーキテクト RJ Owen氏

1. エンタープライズアプリケーション

 まず最初に挙げられたのがエンタープライズ分野だ。エンタープライズ・アプリケーションの開発に使う言語やツールには次のような要素が求められる。

  • クライアントとサーバの連携
  • オブジェクト指向
  • 優れた開発ツールセット
  • 言語としての成熟度
  • 自動コード生成機能
  • ベストプラクティス

 JavaやFlexがこの要件をすべて満たしているのに対し、HTML5は現時点ではまだ発展途上であり、エンタープライズシステムで採用できるほど成熟しきってはいない。Flexが特に優れているのは言うまでもなくUIを中心とするアプリケーションのフロントエンドの開発能力である。今後も当面の間は、バックエンドをJava、フロントエンドをFlexで開発するというスタイルが主流であり続けるだろうとOwen氏は指摘している。

2. マルチスクリーン開発

 ここ数年でスマートフォンやタブレットは爆発的な普及を遂げてきたが、この傾向は少なくともあと数年は続くだろう。従って、PCだけでなく複数のデバイスに対応したアプリケーションを作成することは、この市場で勝ち抜くためには必要不可欠だ。PCだけでなくiOS、Android、BlackBerry、そしてテレビにも対応しているFlexは、この点では間違いなく優位だ。

 もちろん、HTML5もマルチスクリーン開発のための有力な候補であることに間違いはない。Owen氏は、Flexが特に威力を発揮するのはビジネスユースのアプリケーション開発においてだと指摘する。また、同じコードベースでAIRアプリケーションが開発できる点も大きなメリットだという。AIRを使えばデバイスごとのネイティブのアプリケーションを提供することができる。AIR 3より追加されたNative Extensionsの機能を活用すれば、デバイス固有の機能を利用することも可能になる。マルチスクリーン対応とネイティブ機能の活用、その落とし所としてFlex/Flashは優れた選択肢と言える。

3. コミュニティ

 歴史があり、活発なコミュニティはFlexの魅力の一つだ。コミュニティから発祥した非常に多くのプロジェクトがあり、膨大な数の成果物が生まれている。最近では、AdobeのFlexチームとコミュニティがよりうまいサイクルでFlexの開発を進められるような、新しい開発プラットフォームの構築を目指す「Spoonプロジェクト」も開始された。Flexのユーザはさまざまなプロジェクトの成果物を利用したり、コミュニティの協力を求めることもできるし、逆にコミュニティに貢献することでFlexの成長を促すこともできるわけだ。

4. ビデオおよびオーディオ

 ブラウザベースのビデオ再生技術でも、現在のところFlashに一日の長があると言えるだろう。HTML5のビデオ再生はコーデックに依存する。現在利用されているコーデックとしてはOgg TheoraやH.264、WebMなどがあるが、Webブラウザごとにサポート状況が異なるという問題がある。例えばH.264はIE9/IE10やSafariでは標準で利用できるが、FirefoxやGoogle Chrome、Operaでは再生することができない。Webブラウザがサポートするコーデックについてはライセンス面の事情が絡み合っており、解決は一筋縄ではいかない。

図4.1 主要ブラウザのビデオコーデック対応状況(緑:対応、赤:非対応)
図4.1 主要ブラウザのビデオコーデック対応状況(緑:対応、赤:非対応)
図4.2 主要ブラウザのFlashビデオ対応状況(緑:対応、赤:非対応)
図4.2 主要ブラウザのFlashビデオ対応状況(緑:対応、赤:非対応)

 その点、Flashビデオは主要なWebブラウザを一通りカバーしている。Flashビデオの再生に対応していない一部のモバイル端末についても、Flash Media Serverを利用すれば再生可能な形式でコンテンツを配信できる。それに加えて、適切なコンテンツ保護機能を備えていることもFlashビデオの強みだとOwen氏は言う。コンテンツ配信ビジネスを展開する上で、この機能は必要不可欠だからだ。現時点で、HTML5には同様の機能は備わっていない。

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この記事の著者

杉山 貴章(スギヤマ タカアキ)

有限会社オングスにて、Javaを中心としたソフトウェア開発や、プログラミング関連書籍の執筆、IT系の解説記事やニュース記事の執筆などを手がけている。そのかたわら、専門学校の非常勤講師としてプログラミングやソフトウェア開発の基礎などを教えている。著書に『Javaアルゴリズム+データ構造完全制覇』『Ja...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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