手軽なデバイスや技術による、IoTで畑と会話する「オラクル畑」
近年のビッグワードとなりつつある「IoT」。あらゆるものがネットワークでつながり、コミュニケーションし合うとなれば、いったいどのような世界になるのだろうか。日本オラクルの中嶋一樹氏は、「IoTが実現すれば、一見ITとはかけ離れたもの、例えば“畑”ともコミュニケーションできるようになる」という。
畑の例だと、畑に設置したセンサーが土壌の水分量や温度などを測定し、その数値から状況を言語化して伝達する。「畑」に問い合わせれば知りたい状況を教えてもらえるというわけだ。もちろん、これまでもさまざまな技術を組み合わせれば実現できなかったわけではない。しかし、特別な技術や知識がなくとも、高額な投資をせずとも、容易に調達できる安価な技術や道具で実現できる。それがIoT活用を大きく牽引するという。
実際に中嶋氏が「オラクル畑」と名付けたIoTシステムに使用したデバイスや技術などは次の通りだ。いずれも容易に調達できるものばかりだ。
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Raspberry Pi(ラズベリーパイ)
- Linuxが入った小さなコンピュータ。GPO端子にセンサーが接続できるようになっている。
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土壌水分センサー
- 土に刺しておくと水分量を測定できるセンサー。他、pHセンサーやカラーセンサーなどもある。
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Oracle Database Cloud
- クラウドデータベースとしてデータを蓄積。用途によってはパブリッククラウドでも代用可能。
インタフェイスにLINEを使用、Botで自然なコミュニケーションに
セッションでは実際に「オラクル畑」のデモンストレーションが行われた。まず中嶋氏が畑に見立てた「容器に入れた土」に土壌水分センサーを刺し、システムの電源を入れると、その水分量が測定され、Raspberry Piを通じてクラウドデータベースに送られる。と、ここまでは一昔前のサーバ監視にそっくりであり、畑に行かずして状況を把握できるとはいえ、取得したデータに対して常に監視し判断する必要がある。
これをもっと便利な“イノベーティブな仕組み”として成り立たせるためには、ITリテラシーが低い人でも容易に使えなくてはならない。そこで、中嶋氏が採用したのが「LINE Bot」である。
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LINE
- SNSをコミュニケーションインタフェイスとして活用。「オラクル畑」のアカウントを取り、それに問いかける形で状況を把握する。
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Bot
- データや命令を受け取ると、それに合わせた内容を自動送信する仕組み。今回は自然言語処理対応を間において柔軟性を高めている。
「オラクル畑」のBotをLINEの友達として登録し、「水分は?」と問いかけると「からからです」「じゃぶじゃぶです」というように、自然言語で畑の状況が返ってくる。
この答えは決められたルールに基づいた固定文ではなく、センサーの数値に基づいた動的なものだ。つまり、取得したデータがしきい値以下なら「からから」、以上なら「じゃぶじゃぶ」というように答えの内容が変えられるように設定されている。
まず、畑のセンサーからRaspberry Piにデータが伝わり、ソラコムのIoT向けデータ通信SIM「Air SIM」を通じてOracle Database Cloudに送られる。一方、LINE BotのプログラムはNode.jsで実装しており、届いたメッセージ(「水分は?」など)に応じてOracle Database Cloudに最新の水分量のデータをとりにいく。その値に応じて答えが設定されており、LINEに返されるという仕組みだ。