人の代わりに何かをしてくれるBot、自然言語解析の進化がカギに
あたかも畑が答えてくれるような「オラクル畑」の仕組みの要となっているのが「Bot」である。かつてBotはスパムなどの悪いイメージが先行していたが、ピザの注文などで自動応答に対応したり、スマートハウスで音声命令すると電気を消してくれたり、いまや「人の代わりに何かをしてくれる」便利な存在として注目されつつある。身近なところではiPhoneに搭載された「Siri」やGoogleのチャットアシスタント「Allo」、Amazonの音声認識エンジンAlexaが搭載された「Amazon Echo」などが代表格だろう。
Botへの注目度が高まってきた理由として、中嶋氏は「自然言語処理技術の進歩」を挙げる。つまり、自然言語解析の精度が上がったことで、Bot自体の精度も上がり、便利なものになってきたというわけだ。一般的に自然言語処理では、伝えられた命令文の中から“インテント=意図”を抽出し、理解することが最も重要なステップになる。
「オラクル畑」では、自然言語からインテントを抽出する役割を自然言語解析エンジンの「api.ai」が担っている。api.aiはインテントを表す例文を与えることで学習し、完全に一致していなくても意図を汲み取れるという機能を持つ。つまり「水分は?」「水は?」といった自然言語での命令から「畑の水分量について知りたい」というインテントを抽出しているわけだ。とはいえ英語に比べて日本語の理解度がやや低いため、「オラクル畑」では間に、翻訳APIである「Google Translate」を挟んでメッセージの翻訳を行い、それをapi.aiで処理するようになっている。
こうしたBotによるシステムを動かすのは、インテントと対応する答えについて記載されたBotのプログラムだ。例えば「オラクル畑」なら、「get latest moisture」という入力に対し、クラウドに水分データを取りに行き、その数値に応じてLINE用のメッセージを生成して配信するという分岐が必要だ。このスイッチ文を増やすことによってBotが「できること=スキル」を増やすことができる。
従来のアプリとBotの違いについて、中嶋氏は「アプリは人間が操作方法を覚える必要があったが、Botなら何も覚える必要がない」と語る。面倒な学習部分をBot側が吸収し、ITリテラシーを問わずに誰もが使えることが重要というわけだ。
BotやAIがASPで使い放題、アイディア次第でチャレンジを!
今回はLINE上でBotを活用したが、こうしたBotを使用できるプラットフォームは、現在続々と増えている。まず、既に開発者の間ではSlack上での利用が活性化しており、iOSでもSiriのAPIが公開されたことで自身のアプリに入れ込んで活用できるようになった。他にもFacebookやSkypeなどでも対応している。
またBotの自然言語処理をサポートするサービスとして、「オラクル畑」に活用されたapi.aiの他に、ストーリー仕立てで会話を行い、文脈を保存して必要なパラメータを拾う機能を持つ「wit.ai」などがある。wit.aiは2015年1月にFacebookに買収され、その活用が期待されるが、現在もフリープランが用意されており、api.ai同様自由に使うことができる。
そして、若干用途は異なるものの、Googleからは、文から感情分析やパラメータ抽出、文脈解析を行う「Google Natural Language API」のβ版が登場している。社内のSNSの中から現在つぶやかれているキーワードを抽出するなどの活用法が想定される。
こうした多彩なAIやBotおよび自然言語処理が、安価かつ容易に利用できるようになったことで、IoTがもたらす新たな価値が大きく広がることが期待される。
中嶋氏は「センサーとサーバのみでは従来のシステムと大差がない。そこにたとえば『畑と会話する』といったコンセプトを持ち込むことで一気に活用の可能性が広がる。そしてそれを実現するAIやBotなどが登場している今、あとはアイディア次第」と力強いメッセージを送り、セッションの結びとした。
なお「オラクル畑」のソースコードはGitHubで公開されている。ぜひ、挑戦してみてはいかがだろうか。
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