新しい技術潮流の中でWebはどのような役割を果たすのか
ITが社会インフラの一部となって久しく、技術は著しい速度で発展している。技術的イノベーションが進む中、Webをどのようにとらえたらよいか考えてみようと、及川氏は会場に呼びかけた。
エマージングテクノロジーとWebの関わりを考える
米国の調査会社ガートナーは、1995年以降、特定の技術がどのように普及し、社会で使われるようになるかを示すハイプサイクルを発表している。ハイプサイクルは、新技術が登場して注目を集める「黎明期(Innovation Trigger)」、利用され始め変革を起こす「流行期(Peak of Inflated Expectations)」、関心が失われ普及に至らない「幻滅期(Trough of Disillusionment)」、世間の耳目には触れないが改良しながら継続する「回復期(Slope of Enlightenment)」、広範に受け入れられ次の世代への進化が進む「安定期(Plateau of Productivity)」といったフェーズから構成される。
2017年版では、エマージングテクノロジーとして5G、4Dプリンティング、スマートダストなどが挙げられている。及川氏はその中から、深層学習、強化学習などのAI、VR、ARなどの没入感体験(Transparently Immersive Experience)、5G、ブロックチェーン、IoTなどのデジタルプラットフォームの3つに絞り、Webとの関係について考えてみたいと述べた。
2010年に開催されたGoogle IOでは、アプリの主流は2005年を境にインストールして利用する従来型から、Webアプリに移ったと発表された。そのきっかけは、AjaxやXMLHttpRequestにより非同期処理が可能になり、対話性が高くリアルタイムな処理が可能になったことだ。その口火を切ったのは、Google MapsでありGmailである。それ以降、Webアプリの開発が推進され、HTML5が注目を集めるようになった。
現在はどうだろうか。Webアプリは進展しているものの、一部はスマホアプリに移っている。多くの人がスマートフォンをメインのデバイスとして利用するようになった今、Webアプリが岐路に立たされていることを多くの開発者が実感している。
人にも機械にもやさしいWebへ
ハイプサイクルの3つのエリアとWebの関係をW3Cのアクティビティから見てみると、WebVRやWoT(Web of Things)は仕様があり、ARやブロックチェーンに関してはコミュニティグループが存在するが、AIに関してはN/A状態である。とはいえ、AIはどこにでも使われる技術となっており、Googleも2017年にはモバイルファーストからAIファーストにシフトし、すべての製品にAI体験を含めると宣言している。
AIが普及し始めたきっかけは、2012年にトロント大学が深層学習による画像認識で大きな成果を上げたことだ。機械学習や深層学習は昔から研究されていたが、学習に必要なデータや強力なコンピューティングパワーが得られるようになり、実現性の高い技術となったのである。機械学習では、データを集め、格納し、教育用に処理をしてトレーニングをする。そしてモデルに適用し、学習結果をタスクに適用するが、この時、データの取得にWebが大きな役割を果たしている。Webは、HTML、CSS、JavaScript、画像などのリソースをブラウザという機械がダウンロードし、レンダリング、ペインティングにより見やすい形にしてユーザに提供する。また、クローリングしてインデックスを作成し、検索結果をユーザに表示するのが検索エンジンだ。同様に、世界中のデータを集めてスクレイピング、クローリングしてデータを集めて機械学習に利用することができる。
インターネットの果たす役割は非常に大きく、Webは今まで以上に人だけでなく機械にやさしいことを意識しなければならない。そのためには、W3Cが提唱するセマンティクスがますます重要となる。人にも機械にも読まれることを考えると、リッチコンテンツの埋め込みを可能にするJSON-LDなどの技術の利用が進むだろう。
Webは、AIに対してはメディアとして、ARやVRに対してはアプリケーションとして、IoTやブロックチェーンに対してはAPIとして役割を果たしていくと考えられる。岐路に立っている今だからこそ、Webに対して再投資をし、われわれ自身が再発見をしてWebの位置付けを明確にしていかなければならない。次世代のWebを考えてほしいとの言葉で、及川氏は講演を終えた。
