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自分の可能性を広げよう!U30デベロッパーのための「キャリアのすゝめ」

U30エンジニアが考える、人間と機械のハイブリッドな未来――BEDORE 安野貴博さん

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 東大工学部の松尾研究室、サンフランシスコのデザインファームでインターン、未踏プロジェクトへの応募、ペッパーとの漫才などを経て、今は株式会社BEDOREの立ち上げに参画し、コンタクトセンター向け対話エンジンを提供している。20代を駆け抜けた安野貴博が、いまU30エンジニアとして描く未来とは?

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未踏、ペッパー漫才……機械と人間が手を取り合う世界に向かって

――これまでの経緯をおうかがいします。学生時代は何を?

 学生時代、Twitter上で授業を実況することが流行っていたのをみて、大学シラバスのデータとツイッターのアカウントを連携し、授業中の実況を自動でまとめるWebサービスを作ったりしていました。授業で何を話したか後からログが辿れたりするので便利だったんです。「おかげで留年を回避できた」と感謝の声を頂いたのは嬉しかったですね。

 研究室は機械学習の松尾研究室に。研究内容はWeb上のデータからクラウドワーカー(仕事の受注者)のアウトプットの質を予測する研究をしました。本当に仕事ができる人なのか、さまざまなデータを組み合わせてスコアリングをより精緻化していました。

 当時から、人間がシステムの一部として機能するサービスということで、クラウドソーシングという仕組みにはとても興味を持っていました。以来、人間と機械のハイブリッドなシステムを不思議とよく扱っています。

 大学4年生で1年休学してサンフランシスコへ。当時、デザイン思考やHuman Centered Innovationなどに興味があり、テック系のデザインファームでインターンをしました。日本、中国、アメリカのデザイナーが混じり、多国籍なカルチャーで楽しかったです。

株式会社BEDORE 取締役/ファウンダー 安野貴博さん
株式会社BEDORE 取締役/ファウンダー 安野貴博さん

 機械学習、ウェブ工学を専門とする東京大学工学部松尾研究室を卒業。ボストン・コンサルティング・グループにてデジタル関連の戦略策定プロジェクトにコンサルタントとして携わったのち、PKSHA Technologyに参画し、株式会社BEDOREの立ち上げを実施。「言葉がわかるソフトウェアを形にする」をミッションにコールセンター等で用いられる対話エンジンのSaaSサービス事業に取り組む。2016年未踏IPAスーパークリエイターに認定。ペッパーと人間の混成漫才コンビを組みロボットとして史上初めて人間の漫才大会(M-1)で勝ち抜く。

――卒業後はどうされましたか?

 コンサルティングファームに就職しました。実社会にインパクトを出す上で重要な要素として、ビジネスとテクノロジーとデザインという3つの要素があると思っていて、学生時代にテクノロジーとデザインを簡単ではありますが経験することができたので、ビジネスの世界を覗いてみたかったのです。いろんなインダストリーの企業を見ることができて、視野がぐっと広がって良かったです。

――未踏ではどのようなことに取り組まれていたのですか?

 未踏プロジェクトでは「LIGHTNING UI」という新しいユーザーインターフェースを作りました。昨今のRPAのようにGUI(パワーポイント)上の操作の自動化をするものです。Javaで動くアプリケーションとして実装しました。

――アイデアはどこから?

 当時働いていたコンサルティングファームでパワポをよく使っていたので作業効率化のために自動化をしたかったことが動機としては大きいです。機械学習やデータ分析などの自分の知見が生かせること、実際にUIに落とし込むデザイン的なチャレンジがあることもモチベーションになりました。実際にやってみると、予測系のUI/UXは学習の精度により最適な形が全く変わると分かるなど、デザイン上での学びはとてもありました。大阪大学でアンドロイドの研究をしている石黒先生にご指導いただけたのも非常に貴重な経験で、人間と機械の関係を再定義する上で、UI/UXがいかに重要であるかを考えさせられました。

――ロボットのペッパーによる漫才にも挑戦したとか。

 まだペッパーが出はじめたころでした。人型ロボットですが、何かを持つこともできず、移動や会話にも制限がありました。どのようなシチュエーションで人型であることが意味を持つだろうかと考え、漫才という応用先をふと思いつきました。

 ネタはオーソドックスな漫才にできるだけ寄せました。機械であることを全面に出しすぎると漫才というよりコントに近くなってしまうので、なるべくそうならないようにしました。

 面白かったのはIT業界でよくあるユーザーテストやA/Bテストのような手法が漫才のネタ作りの方にも応用できたことです。ベータ版をSNS上で協力していただいていた方に見ていただいて、「いいね」の数でフィードバックをもらいながら、イテラティブにネタを改善していったのですが、やっていてアジャイル開発に近いなあと思っていました。

 技術的なチャレンジもありました。当然漫才といえどペッパーが自発的に喋るのは難しいので、人間(安野さん)が舞台裏で会場の雰囲気を見ながら、パソコンから次のセリフを出していました。当時はまだWiFi経由でコマンドを打ってもペッパーのレイテンシーが大きく、会場の電波状況によっては数百ミリ秒くらい遅延しました。漫才はテンポの良い間の精度がとても重要なので、タイミングよく発話できることはとても重要だったのです。結局、オペレーターである私が遅延状況に合わせてタイミングをコントロールする練習をすることで何とかなりました。舞台裏ではほかの出演者がリハーサルをするなか、ぼくたちだけがノートパソコンを開いてデバッグしたり遅延状況を確認したりしていて、いろんな芸人さんに「何しとんねん!?」と絡んでいただきました。

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この記事の著者

近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...

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加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

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CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/11257 2018/12/07 11:00

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