ユーザーに長く愛され収益化につながるプロダクト作りが、PMの重要な仕事
基調講演「愛されるプロダクトを創るべき『3つの理由』」に登壇した丹野瑞紀氏は、「プロダクトマネージャー(PM)1年生向けに、PMの基本的なことがらを改めて伝えたい」と語り、最初にプロジェクトマネージャーの役割について説明した。
一般にPMの役割とは、エンジニアやデザイナーと共にプロダクト開発を進めることだと考えられている。だが最近の大規模プロジェクトでは、データアナリストなどの専門家や、マーケター、ビジネスデベロップメントなど業務サイドの人間が加わることも珍しくない。こうした社内のあらゆるステークホルダーと協力しながらプロダクトを開発していくのが、PMの役割になってきていると丹野氏は指摘する。
「ではどんなプロダクトを作るのかというと、もちろん自社の事業目標を達成できるプロダクトになるが、事業目標と製品機能は最初から一致しているわけではない。この大きな溝を埋める架け橋を作っていくのがPMの仕事だ」
例えば繰上げ前年度比50%という売上目標が与えられた場合、その達成にはどんな打ち手があるのか。競合調査やユーザーヒアリングを重ねながら、もっとも目標に近づける形で機能を落とし込んでいく作業がPMには求められるというわけだ。
一方で、丹野氏は「愛されるプロダクトを作ることの重要さ」にも言及する。マーケットや消費者の行動は時代と共に大きく変わりつつある。例えばソフトウェアは、パッケージを購入する「ライセンス型」から、毎月少額の料金を払って利用する「サブスクリプション型」に移行してきている。この利用形態では、ユーザーがプロダクトに愛着や好感を持てなければすぐに離れていってしまう。
加えてソーシャルメディアによる情報伝播の速さだ。良い評判も悪い評判もSNSを通じてあっという間に広がる。良いプロダクトを作れば、口コミでどんどん需要が広がる一方、不満や不祥事が起これば即刻アウトだと丹野氏は言う。
「こういう時代には、ユーザーにとって本当に価値があるもの、愛すべきものでなければすぐに見放されてしまう。一定期間の継続的利用を維持して収益化にたどり着ける、息の長いプロダクト作りは、これからのPMのもっとも重要な仕事の一つになるだろう」
自社の都合やビジネスの要請を優先するのではなく、あくまでユーザーの視点に立って利益を追求していくことが必要であり、その具体的な着眼点を皆さんと一緒に考えていきたいと丹野氏は呼びかけた。