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ユーザーにとって本当に価値のある「愛されるプロダクト」作りとは?【プロダクトマネージャー・カンファレンス 2018】

プロダクトマネージャー・カンファレンス2018 レポート

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現場とのコミュニケーションを重ねてグローバル対応の新システムを実現

 「世界で愛されるプロダクトを作ろう」と題して自社の取り組みを例に説明したのが、楽天株式会社 トラベルプロダクトマネジメント課 マネージャー 熊谷 亘太郎氏だ。同氏はPMとはユーザーを喜ばせると同時に、会社に戦略的な価値を与える製品やサービスを作る存在と定義した上で、「私なりの言い方をすると、強い製品を作るためにどんなことでもするのがPMであり、それだけの責任感と覚悟が必要だと考えている」と語る。

 自身の経験をもとに、PMに必要な3つの能力について、それが生かされる場面とともに解説した。

紹介されたPMに必要な3つの能力
紹介されたPMに必要な3つの能力

 楽天トラベルでは、つい先日、基幹の業務システムを全面的にリニューアルした。この背景には、グローバル市場での存在感を高め、同時に日本市場に参入しつつある海外のオンライン旅行エージェントとの競合に打ち勝つ戦略があったと熊谷氏は明かす。

 「今回のシステム刷新は、自社の市場競争力というコンピテンシーを守る上で重要な取り組みであり、こうした重要なプロジェクトを完遂できて私自身、PMになって良かったと大きな達成感を抱いている」

 こうしたグローバル化への対応を実現する際、熊谷氏はPMに求められる能力の筆頭に“Requirement”を挙げる。せっかく日本国内で市場獲得しているプロダクトでも、海外市場展開に向けた通貨・言語対応や翻訳などの“Generalize”ができていなかったために、グローバル展開のチャンスを逃している例は多いという。楽天トラベルでは、もしそのプロダクトで海外に進出しようと考えた場合、出先の国の為替レートと現地語の翻訳を登録しさえすれば、すぐに展開可能な“World Readiness”と呼ばれる体制をすでに整えている。

 2つ目の重要な能力が“Communication”だ。楽天トラベルでは今回の新しい業務システムの開発時に、事業担当者との間で旧システムの機能を継承するかどうか議論を重ねた。そうした際、顧客からの問い合わせ対応時にクレジットカード番号で予約を検索する旧システムの機能を新システムでは廃したことに、現場からは困るとの苦情が挙がったという。

 「この時も、いきなり『できない』で突っぱねず、その機能が必要なシチュエーションや実行したい処理を丹念に聞き取っていった。その結果、別の機能で代替できることや改善すべき点が次々に判明して、お互いに納得のいく決着ができた」

 熊谷氏は、問題は必ず解けるというポジティブさと熱意を持っていれば、良いアイデアはどんどん出てくるし、そういう姿勢の人にはおのずと周囲もついてくると強調。ユーザーがなぜ困っているのか、その結果どうなるかを深く掘り下げて、具体的なソリューションを提案していくことがPMには大切だと語る。

 最後は“Decision Making”を挙げた。同社では、バグ修正の優先度を管理するため、発生頻度と深刻度を用いた基準を設けているという(下図)。例えば、頻度も深刻度もHighのバグは“Urgent”、つまり緊急で修正しなければならない。

 この中で、機能の削除やWont't fix(修正しない)は、リスクを把握しているプロダクトマネージャーにしか判断できないという。

 「どんな機能を盛り込むのか、反対に要求があっても実装しないのか。それは社内のいろいろな情報を、リスクも含めて把握しているPMだけが判断できることだ。この責任を常に意識しながら、プロダクトのRequirementを決定してバグトリアージをしていかなくてはならない」

 以上の3点が、熊谷氏が語ったプロダクトマネージャーに求められる能力だ。楽天トラベルではこれらの要素を存分に盛り込んだ、新しいシステムをリリースしたばかり。熊谷氏は「(無事リリースした)今がプロダクトマネージャーとして満足できている瞬間」と話した。

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短期のROIを追わずクリーンなプロダクト像を訴求してNo.1の地位を獲得

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この記事の著者

工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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