OpenStackを用いてvRANを含むすべての仮想化モバイルネットワークを実現した事例の紹介
第1回の連載でも簡単に触れましたが、OpenStackを用いてアンテナ以外のすべてのリソースを仮想化してモバイルネットワークを実現した例として、楽天の「World's First All Virtualized Mobile Network on OpenStack Including vRAN」セッションについて紹介します。
楽天は2019年10月からキャリア事業に進出しサービスを開始しました。その楽天が挑むのは「完全仮想化」によるモバイルネットワークの実現です。
従来のモバイル事業社では多くの場合、専用のネットワーク機器を使用しモバイルネットワークを実現していました(一部の機器は仮想化している例もあります)。しかし、楽天は専用の機器を使用するのではなく汎用のサーバを使用し、全てのネットワーク機器を仮想的に使用するNFVの技術を積極的に活用し、ネットワークを実現します。楽天はモバイル事業へは新規参入であり、これまでに物理的な資産を持っていなかったからこそチャレンジしやすいという背景もありますが、世界初の試みでありとても挑戦的なことと言えます。
このNFVのアーキテクチャはETSI(欧州電気通信標準化機構)標準に準拠した独自開発の機能を使用したとのことでした。実はOpenStack自体にもNFVを実現するTackerコンポーネントは存在しますが、現状はETSIに準拠していません。現在、ETSIに準拠したバージョンのTackerが開発されている途中であり、NTTドコモのセッション内でその紹介がありました(セッション名:NTT DOCOMO's operational challenges of commercial multi-vendor NFV system)。
では、具体的にどこが世界初なのかというと、図17②のvRANを仮想化した点です。ここまで仮想化することにより、各基地局に配置が必要な物理的なリソースが電源とアンテナのみと非常にシンプルになりました。「BBU」「Cabinet」「Cable&Jumper」といった機器を配置する必要がなくなったことがわかります(図18)。
これはつまり、基地局の構築が簡単化され構築のためのコストを節約できるということです。楽天は、重量のある機器を運搬する必要がなくなったことで「1人」で作業が可能で、かつ「1日」かかっていた基地局の構築作業をたった「15分」で完了できるようになったと報告しています。
また、基地局ごとに配置するリソースが減ったことで、基地局自体の機器が障害点となることが減り、障害発生により基地局に直接出向く必要が減少するため、障害時の復旧も容易になるとのことです。
セッション内では、構築自体はそれほど苦労することなくできたとのことでしたが、これからの運用には課題があるかもしれないとのことでした。OpenStackを使用している筆者の目線から見ると、頻繁にアップデートされ続けているOpenStackの最新バージョンに追従しようとした場合に、提供している機能を止めずにどうシステム全体をアップデートしていくのか気になるところです。
