OpenStackを使用したタイ初のパブリッククラウドNipa Cloud
OpenStackの使用事例の中で、タイの会社であるNipa社での使用事例と、Nipa社が開発をしている「NCP(Nipa Cloud Platform)」についてのプレゼンテーション「Build and scale from zero to success the first Thailand OpenStack public cloud」について紹介します。
Nipa社は1996年に設立されたタイの企業で、現在は主に、タイで初のパブリッククラウドサービスであるNipa Cloudを展開しています。Nipa CloudはOpenStackを使用しており、OpenStackのダッシュボードとしてはOpenStack Horizonの代わりに前述のNCPのダッシュボードを使用しています。今回のOpen Infrastructure Summit in Shanghaiでは、セッションだけでなく、展示ブースにおいて、NCPのデモも行っていました。また、Nipa社は今回のサミットのスポンサーであり、公式サイトではサミット参加についての記事や動画が大々的に掲載されていることから、Nipa社にとっても非常に重要なサミットということがわかります。
Nipa社はOpenStackを、クラウド技術の分野で世界一のオープンソースソフトウェアであり、信頼性の高いIaaSサービスを提供することのできるクラウドインフラストラクチャであると位置付けています。近年はOpenStackを軸としたサービスを展開しており、OpenStackに関する人材の育成にも力を入れています。
当セッションでは、Nipa Cloudのサービス開始までの過程、現在の運用方法、NCPについて説明を行っていました。
Nipa Cloudは、2016年に開発が開始され、4回の検証を経て、2017年10月にサービスを開始しました(図19)。
1回目の検証では簡単な構成のOpenStackクラスタを作成し、製品版の設計を検討したり、基本的な運用方法を習得したとのことです。その後、各検証において徐々に機能を変更、追加していき、製品化における課題を洗い出したといいます。特に3回目の検証では、OpenStack-Ansibleを使用し、OpenStack環境のデプロイの自動化を図りました。
Nipa社は、各検証をもとに最終的な構成、設定を確立し、OpenStackを用いたタイ初のパブリッククラウドサービスの提供を開始しました。Nipa Cloudは、OpenStack Ocataを使用しているとのことです。
Nipa Cloudの運用については、運用において特に重要な7つの項目が挙げられていました(図20)。
パブリッククラウドサービスの提供においては、非常に高い信頼性や、サービスのダウンタイムを無くすことなどがサービス要件として求められます。Nipa Cloudの運用は、そのような要件に対してどのように対応を行っているか、実際の構成、設定内容を踏まえ説明を行っていました。前述したOpenStack-AnsibleやCanonical社のMAASなどを用いた自動化、gitを用いたチーム作業の効率化、CloudLinux社のKernelCareを用いたダウンタイムなしのカーネルパッチアップデート、OpenStack Ocataのダウンタイムなしアップデートについてなどの説明を行っていました。上記のような様々なツールを駆使した運用方法により、Nipa社は、高信頼なパブリッククラウドサービスを提供していると話していました。
続いて、Nipa社が開発したNCPの説明がありました。NCPの特徴についての紹介があり、開発までの検証や製品版の構成について説明していました。
NCPはカスタマーポータルとバックエンドポータルに分かれており、それぞれ利用者と管理者が使用するものとなっています。
カスタマーポータルの特徴としては主に以下のものが言及されていました(図21)。
- メールアドレス認証、OTP認証
- ユーザにとって分かりやすいUXデザイン
- セキュア・バイ・デザイン
- 監視やキャパシティプランニング機能等、ユーザが利用したい様々な機能を実装
最後に、Nipa社がこれから提供したいサービスについての説明がありました。今後は、オブジェクトストレージサービスやDNS-as-a-Service(DNSaaS)、LB-as-a-Service(LBaaS)などのサービスを展開していくとのことです。
今回のOpen Infrastructure Summit in Shanghaiは中国の企業のセッションが多かった中で、タイの企業のセッション、展示は目を引くものがありました。
前述したキーノートセッションでは、OpenStackマーケットのAPAC地域における成長について言及されていました。この成長は中国企業の台頭の寄与が大きいと考えられますが、タイなどの東南アジアでもOpenStackマーケットが拡大していることは注目したいポイントの1つです。APAC地域におけるOpenStackマーケットの拡大は、目が離せない状況となっていると言えるでしょう。