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「Open Infrastructure Summit Shanghai」レポート

OpenStack関連の技術・ビジネス・事例の最新動向

「Open Infrastructure Summit Shanghai」レポート 第3回

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From VMware to Charmed OpenStack

 Canonical社とCloudBase Solution社のセッション「From VMware to Charmed OpenStack」について紹介します。このセッションでは、まず、Canonical社のTytus Kurek氏が、VMwareとCanonical社のOpenStackディストリビューションであるCharmed OpenStackの差異について述べていました。OSSをベースとした製品であるCharmed OpenStackの優位性として、ベンダロックインを回避できることやコストを抑えられることが挙げられていました。また、Charmed OpenStackとその他の商用OpenStackディストリビューションについても比較を行い、Charmed OpenStackのメリットとしてデプロイや運用の容易さ、コストの低さについて説明していました。

 また、あるシナリオを用いてVMwareとCharmed OpenStackのコストの差についてシミュレーションを行っていました。VM数が2500、物理サーバが50台、1サーバあたりのCPU数が4、サービス開始後、VMは増加しないとの想定でシミュレーションを行った場合、イニシャルコストとしてはVMwareが約208万ドルのところ、Charmed OpenStackではその1割程度である17万~25万ドルとのことです。また、その後の運用維持にかかるコストに関しても、VMwareと比較して非常に低いとの説明を行っていました(図12)。

図12 VMwareとChamed OpenStackの運用維持コストの比較
図12 VMwareとChamed OpenStackの運用維持コストの比較

 実際の事例においても、OpenStackはVMwareと比較し、コストが抑えられるケースはあると考えられます。Canonical社の公式サイトでは、OpenStackの利用によるコストの削減について大々的にアピールしており、Canonical社によるフルマネージド版であっても、コストはVMwareの半分になるとの試算もあります。一方で、実際に仮想化技術を導入する際にはコストだけではなく、安定性や信頼性、サポート、性能等、様々な側面から比較を行い、最適なツールを見極める必要があります。仮想化に関する様々なツールが展開されている昨今、最適なツールを見極めるスキルは、仮想化に関わる技術者に求められるものの1つと言えます。

 次に、VMware上のVMをCharmed OpenStack上にマイグレーションさせる方法として、CloudBase Solution社のAlessandro Pilotti氏がCoriolisを紹介していました。CoriolisはCloudBase Solution社が開発した製品で、様々なクラウドサービス、仮想化基盤間でストレージやネットワーク構成とともにVMをマイグレーションさせることが可能です。VMwareやOpenStackだけでなく、AWSやAzure、Hyper-V、Oracle Cloud Infrastructureなどにも対応しています。

 当セッションでは、VMware上のVMを、Coriolisを用いてCharmed OpenStack上にマイグレーションさせるデモを行っていました(図13)。

図13 VMwareからOpenStackへのVMのマイグレーション画面
図13 VMwareからOpenStackへのVMのマイグレーション画面

 Coriolisは、Webブラウザ上からGUIベースでの操作が可能です。移動元、移動先のクラウドサービスに関する認証情報などをCoriolisに登録することで、Coriolis上で操作をするだけでVMのマイグレーションが可能となります。VMをマイグレーションさせる際は、マイグレーションさせるVMを選択し、移動先でのフレーバーやネットワークなどを指定します。その後、あるタイミングにおいてVMのレプリカを作成し、そのレプリカをマイグレーションさせます。VMのレプリカ自体は無停止で作成できるとのことでしたが、データの更新を防ぐために、VMを停止して実施することを勧めていました。デモでは、実際にその場でマイグレーションを行い、Charmed OpenStack上のコンソール画面からマイグレーションしたVMにアクセスできることを確認していました。

 Coriolisを用いることにより、当セッションにおいて紹介されていたVMwareからCharmed OpenStackへの移行だけでなく、各クラウドサービスを柔軟に使い分けることも期待できます。

 一度環境を構築してしまうと、特に規模が大きくなってしまった場合、移行が困難なイメージがありますが、Coriolisなどのマイグレーションサービスの利用により、最適な環境に低コスト、低リスクで移行することができるかもしれません。

 マイグレーションサービスに関しては、2019年にCloudEndure社がAWS社に買収され、CloudEndureの無料提供が開始されました。また、VMware Cloud on AWSなど、オンプレミスなVMware環境をクラウド上のVMware環境に移行させるサービスなども活発に利用されています。環境移行に関する各クラウドサービスのこの先の動向が気になるところです。

次のページ
OpenStackを用いてvRANを含むすべての仮想化モバイルネットワークを実現した事例の紹介

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この記事の著者

清藤 直也(NTTデータ)(キヨフジ ナオヤ)

NTTデータ システム技術本部。社内のプロジェクトへ開発環境を提供する、OpenStackを用いたプライベートクラウドサービスの開発、運用に従事。現在は、社内プライベートクラウドサービスで用いられているOpenStack基盤のリソース有効活用方法について検討している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

保立 純志(NTTデータ)(ホタテ ジュンシ)

NTTデータ システム技術本部。OpenStackコミュニティでのNFV関連機能(Tacker)の開発活動に従事する。また社内のプライベートクラウド「統合開発クラウド」へのOpenStackの導入やアップデート対応等の運用を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/11869 2020/01/09 11:00

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