Keynote:Monday Night Live

AWS Global Infrastructure and Customer SupportのVPであるPeter DeSantis氏によるMonday Night Liveでは、AWSのインフラに関する取り組みについて発表がありました。AWSは、パブリッククラウドベンダーの先駆者であり、IaaSについては50%近い市場シェアを持っています。先行者利益は得ているものの昨今では、性能面で比較されることが多く、他社クラウドベンダーはAWSよりも性能が良いことをアピールする傾向があります。こうした状況を踏まえて、Global Infrastructureの責任者であるPeterは、本セッションでAWSのインフラ改善の状況、特にHPC(High Performance Computing)向けの取り組みについて述べています。

2013年から比べて、2019年ではネットワークが10Gbから100Gbになり、CPU性能も約3倍向上しています。こうした性能向上を実現する上でNitro Systemと呼ばれるAWSの独自アーキテクチャによりシステム全体を刷新しています。Nitro Systemの詳細はCTOのDr. Werner Vogels氏によるKeynoteの紹介で解説します。


この新しいNitro Systemにより、6年でネットワーク性能を20倍向上しています。
AWSはネットワークスループットを高めるためにTCPを使わない独自の通信プロトコルを採用しています。AWSは、EFA(Elastic Fabric Adapter)と呼ばれる独自のネットワークアダプタとSRD(Scalable Reliable Datagram)と呼ばれる新しいプロトコルを採用することで、TCPよりも高いスループットかつ低いレイテンシーを実現しています。


HPCの事例として、F1(Formula 1)のRod Smedley氏が登壇し、F1における空気抵抗などのシミュレーションにHPCを用いて分析していることを発表しました。
続いて、Peter氏からは機械学習への取り組みについて発表がありました。機械学習では、推論(Inference:入力データに対して、機械学習のモデルを用いて出力を行う作業のこと)に多くの計算パワーが必要とされます。NVIDIAのGPUを活用することで推論に必要な時間を大幅に削減できることを説明しました。GPUを採用したG4dnインスタンスと一般的なCPUであるC5インスタンスとの推論計算比較を実施しており、モデルによって11倍〜90倍のスループット、4倍から37倍の処理時間向上を実現しています。

さらなる機械学習強化の取り組みとして、AWSが独自に設計した推論用のチップであるAWS Inferentiaを採用した新しいインスタンスタイプInf1の提供開始を発表しました。Inf1のリリース自体は、Andy氏のKeynoteでアナウンスされており、従来のG4インスタンスと比べて、低いレイテンシー、3倍のスループット、最大40%のコスト削減効果があると述べていました。現在は、EC2のみでの提供となりますが、今後ECSやEKS、SageMaker上でも利用できるようになる見込みとなっています。

機械学習の事例として、新薬の開発に機械学習を活用するInsitro社のCEO Daphne Koller氏が登壇しました。Daphen氏によると、新薬開発時に発生する大量の失敗実験を機械学習によって減らすことにより大幅なコスト削減を実現しているとのことでした。
最後に、Peter氏からグローバルインフラに関する進捗状況のアップデートがありました。22のリージョンに加えて、イタリア、南アフリカ、インドネシア、スペインの4リージョンの追加が発表されました。また、パリ協定よりも10年早い2040年にNet Zero Carbon(CO2排出ゼロ)を目指す「Climate Pledge」にAmazon CEOのJeff Bezos氏が署名したことを受けて、再生利用可能エネルギーの積極的な利用を発表しました。

Peter氏のKeynoteでは、Nitro Systemによるアーキテクチャ改善と機械学習向けの取り組み強化が発表されており、この2テーマは今回のre:Inventにおいて非常に重要な位置づけとなっています。さらには、昨今のSDGsの取り組みを受けたCSRの取り組みもアピールしており、社会貢献にも積極的な企業イメージの定着を図っているように見受けられました。
