世界的に導入が進むコンテナ、そのメリットとは?
コンテナ技術への注目が高まる現在、世界各国では同技術を活用する動きが加速している。Rancher Labsの程 建強氏は、調査会社451 Researchによる調査結果を紹介。それによると、今後3年以内に76%の企業が、Linuxコンテナ運用管理プラットフォーム「Kubernetes」を標準基盤として利用すると回答している。
コンテナは、一度コンテナイメージを作成すればどの環境でも同じ動作を実行できる移植性の高さ、一度プッシュすればデプロイや再展開が容易という設置性、アプリケーション動作環境のバージョン管理など、維持管理が容易でDevOpsに最適といった開発容易性のメリットが挙げられ、これらの恩恵をうまく吸収して提供するKubernetesはグローバルで採用が進んでいるという。
だが日本での進みは鈍く、現状のスピードでは同等の数字を達成するまでかなりの時間がかかるだろうと程氏は指摘する。実際、「Rancher」はKubernetesの管理プラットフォームとして世界的に広く採用されており、エージェントのダウンロード数は約1億、OSSユーザー含めてアクティブユーザーは約2万7000、企業ユーザー(有料)は約350社に上るが、日本の企業ユーザーは5%もいかないと明かす。
では、実際どのような導入事例があるのか。程氏は例として、ディズニーとPlayStationを挙げた。ディズニーは、アマゾン ウェブ サービスやGoogle Cloud Platform、自社VMのマルチクラウド環境を運用しており、ベンダーやソリューションに依存せず、セルフサービス型でコンテナを利用できる環境の構築を目指し、管理プラットフォームにRancherを採用した。最終的には60以上の本番アプリケーションを、標準化されたKubernetesディストリビューションとしてRancher経由で提供。Kubernetesクラスタを可視化、一元管理できるようになり、コスト削減にもつながった。
また、PlayStationでは「PlayStation Network」の開発周りの生産性向上と、重要なサービスのアプリケーションカタログ提供を目指しRancherを導入。PlayStationグループ全体で使用している開発ツールやテストツールすべてを、Rancherのカタログ機能を通してセルフサービスで提供できるようになったほか、プロジェクトやチームごとに最適化されたプライベートカタログで開発環境の最適化を図った。
「Rancherカタログ機能は、マーケットプレイスのようにカタログ画面から必要なCI/CDツールなどを簡単にデプロイできるのが特長。社内開発アプリケーションもパブリッシュして共有できる」と説明する程氏は、たとえばパイプラインのステージの作成、編集、Slackやメールなどへの自動通知をサポートする「Rancher Pipeline」と組み合わせれば、CI/CDステージ全体の総合管理が実現すると述べた。
「今後は、MicroPaaSの『Rio』を統合し、KubernetesやIstioなどの複雑性を隠しながら開発しやすさを強化していく予定なので、期待してほしい」(程氏)