単なる趣味を一大プロジェクトに変えてくれた、会社のサポート
「学生の頃は自分がエンジニアになるなんて思っていませんでした。パソコンやゲームは好きだったけど数学が苦手だったし、大学も最初は文系の学部に通っていました」と自分の経歴について語る岩尾氏。
大学入学後に、大学の教員に勧められて理転。指導教員の一人が円周率計算の記録保持者だったことから、円周率は身近な存在だったと言います。
「元々、円周率計算はパソコンやクラウドの性能を測る1つの基準となっています。これまでの人類の進歩と円周率の計算結果はリンクしていると言えるのではないでしょうか」(岩尾氏)
卒業後は、日本のIT企業数社に勤めましたが「ずっと海外で働きたい気持ちがあった」ことから米Googleの入社試験を受けたそう。4度の不合格を乗り越え、5回目で合格し渡米。米Googleに入社してからは、同僚に円周率計算世界記録を更新者がいるなど、周りから刺激を受けることが多い環境でプログラミングに従事している、と語りました。
また、今回の世界記録の達成には勤務先である米Googleの協力が欠かせなかったといいます。巨大サーバーの供与といった環境面はもちろん、同僚やPMがアイデアを出してくれたり、メインの仕事との裁量についての相談に乗ってくれたことが大きかったとのこと。
さらに、広報とマーケティング部門の社員のおかげで「自分の趣味」だった円周率計算が会社の一大プロジェクトに発展したことを紹介。「学生の頃は、自分がプログラミングで稼げるようになること、海外で働くエンジニアになること、世界記録を樹立すること、どれも想像していませんでした。自分の能力やモチベーションを引き上げて背中を押してくれたのは会社です」(岩尾氏)
今回の円周率計算にクラウドを用いたことについては「『クラウドを4か月間モニタリングしただけじゃないか』という声もあります。ただ、始めるまではどのような結果になるのか誰も予想できなかった。円周率計算におけるクラウドの可能性を示せたのは今回のプロジェクトの成果の一つです。クラウドはスパコンなどと比べて余計な作業に手間がとられないので、本業と並行するのにも役に立った」とメリットを説明。
本イベントが行われた福岡という街の印象については、「質の高い教育機関があり、優秀なエンジニアが育つ素地がある」と、米Googleのあるシアトルとの共通点を挙げました。
最後は、先進的なIT分野ですらアジア人や女性は昇進しづらい状況にあることを、統計をもとに紹介。「人種や経歴で無意識な差別が行われない、すべての人が平等に能力を発揮できる社会になってほしい」と締めくくりました。
海外で働くエンジニアとして感じることや、エンジニアと会社との関係について、実直に言葉を紡ぐ岩尾さんの姿が印象的な講演となりました。
イベント2日目は、AIカークラブの発足式にはじまり、福岡を拠点に活動する企業や地方コミュニティの代表者たちによるトークセッションが行われました。2020年の福岡で「エンジニアフレンドリーシティ」はどのような形を見せるのか、取り組みの中心的存在といえるコミュニティや企業にとってのベンチマークはどのようなものなのか、現役エンジニアや経営者たちが熱い言葉で語りました。
小学生でもできる、楽しいイノベーション
いまIT業界で注目されているものの一つがAIカー。コンピュータを搭載し、AI(機械学習)で走行するラジコンカーです。機械学習によりルートや運転ノウハウをラジコンに覚えさせ、そのテクニックや速さを競うレースが国内外で行われているほか、アメリカではAIカーで試したノウハウが自動走行に応用されていて、Waymoというロボタクシーが1日に約1500人を乗せて走行しています。
そんなAIカーについて楽しく学ぶエンジニアカフェ発のサークル「iCar Lab.」の発足式が行われました。株式会社FaBo、株式会社GClue 代表取締役の佐々木陽氏がAIカーについて説明。「AIカーは、IT初心者でも最新のAI技術に触れられるツール。一見おもちゃのようですが、これまでもおもちゃのようなものからイノベーションが生まれてきました。初心者向けにはコードを書かずに機械学習の構築ができるものもあるので、プログラミング未経験の人でも楽しめるはずです」とAIカーの可能性について話しました。
また、「iCar Lab.」の活動について、九州大学の学生である樋田さんが紹介。小学生の子どもたちが生き生きと参加していることや、AIカーの走行の様子を動画を交えながら紹介しました。
エンジニアカフェがAIカークラブの拠点になることについては「今後は、ドローンやロボットも提供して、実際に触りながら学んでいく環境を作っていく予定です。ぜひ、新しい技術を体感しに来てください」と締めくくりました。
エンジニアカフェは、さまざまなコミュニティがミーティングや制作の場として利用しています。今後、コミュニティ団体とAIカー、ドローンなど新たな技術が出会うことでイノベーションが生まれる可能性がありそうです。
