シンプルかつ直感的な「スマートデフォルト」の考え方
――シンプルで「直感的に操作ができる」というのは、具体的にはどのようなことなのでしょうか。
北村:「Strap」は、リアルな会議で行われているような、物理的なホワイトボードに描いたり付箋を貼ったりという作業を、デジタル画面上で再現することを目標にしています。
例えば、フロー図を作っていく時、通常のドローツールでは「図形を作成してテキストを入力し、次の図形を描いてコネクターで線をひく」という作業をする必要があります。一方、「Strap」では、図形を作成してテキストを入力したあと、クリック1つで次の図形を作成、コネクターがつながります。スピーディーに作業ができるため、議論や思考を妨げず、思いついたことをすぐに表現できるというわけです。
西山:さらに直感的な操作性で美しく図を作成できるのも大きな特徴です。私たちはこれを「スマートデフォルト」というコンセプトで捉え、簡単に作っても見た目が美しく仕上がるようにしています。例えば、あえて色やフォントの数を絞り、どのように選択してもバランスが取れるようになっているのもその一つ。できるだけ手順を減らしながらも、デザイン的にも美しくわかりやすく作成できることを追求しました。
また、実際に使用したユーザーから好評を得ているのが、画面上のカーソルに名前が出る機能でしょうか。リモート会議でもメンバー全員のカーソルがホワイトボードに表示されるので、誰がどこを指しているのか、変更を加えたのかなどがその場でわかります。議論と他の部分を意識していることや、ボーッとしていることも、わかってしまうかもしれませんね(笑)。そのようにリモートながら「同じ場にいる息遣い」を表現できればと思います。
また技術的には、オンラインの画面上で複数名が同時に作業できるよう、難しい課題をいろいろとクリアしてきたので、その使い勝手をぜひ体験していただきたいと思います。
スクラムとデザインプロセスを融合し、ユーザーのフィードバックも反映
――グッドパッチのプロダクト開発におけるチーム、およびメンバーの役割などについてお聞かせください。
北村:プロダクトDivという部門で、西山を筆頭にエンジニアが6人、カスタマーサクセスが2人、デザイナーが1人、そして事業責任者として私を加えて10人のチームです。「Strap」以外にも、プロトタイピングツールの「Prott」も担当しています。
デザインカンパニーであるグッドパッチには実はエンジニアも多く在籍しており、プロダクトDivチームは特にエンジニアが多いチームとなっています。開発手法としては「スクラム」の開発プロセスに、デザインプロセスを融合し、具体的なタスクは「カンバン」で管理しながら2週間を1単位とするスプリントで回していきました。
西山:「Prott」の開発では、物理的なオフィスで議論しながら、物理的なホワイトボードに付箋を貼るなどして「カンバン」も管理していました。それが徐々にオンライン化が進み、情報の一元管理やデジタルホワイトボードなどの構想も生まれる中で、「デジタルワークスペース」を実践しながら、自分たちの知見や思想をプロダクトに落とし込むようになりました。
さらに自分たちがユーザーであることに加えて、社内にクライアントワークのチームがあり、チーム内にカスタマーサクセスのメンバーがいるのも特徴です。ユーザーの実感をリアルタイムに開発チームへ共有してくれるといった点で本当に重要だと感じます。
北村:アイディエーションの時点からお客さまにもさまざまな意見をもらいましたからね。最も影響を受けたと感じているのが「シンプルさ」についての考え方です。私たちはビジュアライズや図案化のツールなどを使い慣れており、積極的に機能を盛り込む考えでした。しかし、お客さまは機能が多すぎたり細かすぎたりすると「使いにくさ」を感じてしまう。シンプルに機能をそぎ落とすことが「使いやすさ」につながることに改めて気づかされました。
西山:こういったデジタルツールに慣れていない方にも、広く使っていただくことをツールの未来像として考えていたので、何より「使いやすさ」は最も重要な要件でした。とはいえ、「使いやすさ」を担保するために「シンプルにする」といっても、言うはやすく行うは難しで、必要なものに絞り込んでいくという作業はなかなか難しいものでしたけれどね。
北村:よく「自分たちが作りたいもの」と「ユーザーが欲しいもの」が異なる場合、どう落とし所を見つけるのかと聞かれるのですが、そこはもう“行ったり来たり”しながらです。
まず「自分たちが必要と思うもの」が起点になり、アイディエーションでさまざまな人から意見をもらってプロトタイプを作成し、フィードバックをもらって共有し、議論し、プライオリティを決めて実装し、共有し、議論し……のサイクルを高回転させる感じです。とはいえ、自分たちもユーザーであり、リテラシーに幅はあっても、そう違いはないように思います。
(後編に続く)
