ブランディングの経験を積むために医療系広告代理店へ転職したワケ
―――なぜ本質的なブランディングを学ぶために、医療系の広告代理店を選ばれたのですか?
専門的なブランディングの知見を得て、デザイナーとしてのアウトプットができるようになっても、クリエイターの市場ニーズを考えた時時、差別化にはつながりづらいと思ったからです。自身の主戦場をブランディング業界に移し、ホワイトスペースを探すべくさまざまな業界を見渡したときに、転職エージェントの方から提案してもらった業界のひとつが医療業界、ヘルスケア・エージェンシーとしてのブランディングでした。業界を調べていくとクリエイターが手掛けた成功事例が希少な領域だとわかった。価値を広げることができれば、自身のポジションを確立できるのではないかと思い、ほぼ直感で決意しました(笑)。
実際、ヘルスケア領域の広告やコンサルテーション、ブランディングに携わってみると、僕が想像する以上にマーケティングリテラシーがとても高い領域でした。医学の専門的な知見をプランニングする優秀なメディカルプランナーをはじめ、専門スタッフの多くが医学とマーケティング知識を用いて、定常業務に向き合う業界だった。デフォルトでマーケットインの戦略的思考をもってサービス支援をしていたんです。医療の製品広告を制作するうえで求められる知見がとても専門性が高く、モノづくりに関わる制作者に必要とされるであるということもあいまって、ハードルは高かったですね。
当初イメージしていた自身のキャリアロードマップからは進めることが難しい部分もありました。ですが、当時所属していた会社には独自のブランディングメソッドがあったこともあり、医薬品メーカーのプロモーションの一環として、価値観を体系的に整理するシステムや医薬品メーカーのブランド戦略に紐づいたマーケティングの仕組みづくりができたことは印象深いです。ある案件では、プロジェクトの名称からプロモーションの企画提案、アウトラインのデザインなど、ブランディングだけでなくマーケティング戦略にも携わらせてもらいました。
ヘルスケア領域でブランディングを学び、活かすという転職当初の目標が達成できたかというと、ブランディングの基礎知識とマーケティング戦略の考えかたに関する気づきを多く得ることはできたのですが、ブランディングの知見をすべて活かしきることはできなかった。やはり上流から現場まで一気通貫で行うブランディングに携わりたいという思いを捨てきれず、36歳で転職をしました。
――次はどのような基準で転職先を決めたのですか?
この時の基準は明確で、本質的な価値観を作り続けたいと考えたときに、やはりサービス提供側で働きたいと考えました。そこで入社したのがミクシィです。SNSを提供している会社が、ゲームAPPを提供している背景には「心地よいつながり」を大事にしたコミュニケーションのひとつとしてゲーム事業があった。その思考に惹かれ、入社を決意しました。ミクシィで行ったのは、アプリゲーム「モンスターストライク」のブランディングや、エンタメ事業ブランド「XFLAG(エックスフラッグ)」の立ち上げやポートフォリオマネジメントなどです。
僕がミクシィに入社したときの肩書は「ブランディングディレクター」。僕を採用していただいたマーケティング部門マネージャーの方は、今後モンストを多くのユーザーから長期的に楽しんでもらえる国民的なゲームにしていくために、ブランディングの土台を作りたいと考えられていました。当時のミクシィには、ブランディングの考えかたが定着していなかったため、その理解からインストールできるよう、関連部門と連携しながら実行していきました。その結果、概念整理やデザインシステムの導入、ブランドツールの整理など、ブランディングの価値観浸透を通してサービスの拡大に貢献できたのではないかと思っています。
XFLAGの立ち上げ後には、事業戦略室で新規事業 の0→1のサポートやデザイン組織のHRブランディングにも携わらせてもらったので、サービス提供側で価値を作りたいという目標は叶えることができました。サポートしていただいた多くの関係者には、感謝しかありません。
――その次の転職先として、現職のLAPRASを選ばれた理由を教えてください。
ミクシィではさまざまな案件に関わることができたのですが、ひとつのプロダクトに長く携わることはなかなか難しかった。ですが、改めて自身の強みとはなにかを考えてみると、ゼロから1を生むというよりは、プロダクトが持っている魅力を引き出し、かつ高めながら成長させるといった、1を10にすることではないかと思ったんです。そう考えたときに、出会ったのが現職のLAPRASでした。「AI技術を活用して世の中のミスマッチをなくす」というミッションに共感し2020年の3月にLAPRASへの入社を決めました。