ネットワーク構築ソリューションでもありIoTデータ取得プラットフォームの側面も
「ワークシンプル」をコンセプトにしたシスコのソリューション「Meraki」。テレワークやGIGAスクール向けソリューションのイメージが強いものの、実はアプリケーション開発者から見るとかなり可能性があるプラットフォームだ。
まずは概要から。Merakiプラットフォームを構成する製品群は主にハードウェアが無線LANアクセスポイント、スイッチ、UTM/VPNルーター、セルラーゲートウェイ、スマートカメラ(監視カメラ)、IoTセンサーなどのネットワーク機器があり、加えてこれらを管理するソフトウェアがモニタリングするアプリケーションとモバイルデバイス管理(MDM)がある。
家庭でテレワーク、学校でオンライン授業、あるいは中小企業でセキュアなネットワークインフラを構築するための機器とソフトウェアが一通りセットになっている。ネットワークエンジニアなど専門家がいなくても、今どきのスマートフォンのように箱から出して配線したら使える手軽さが特徴だ。設定はクラウドで集約管理できるため、事前に設定していれば、ネットワークにつなげると設定が反映される。以降の設定変更やファームアップも自動だ。
意外かもしれない。家庭向けならともなく、企業向けのネットワーク機器だとコマンドラインベースの操作が必要となる。ネットワークエンジニアが呪文のような難しいコマンドかスクリプトを流して、ようやく使えるものというイメージがある。ところがMerakiにはそのような難しさがない。管理画面はブラウザからGUIのダッシュボードで操作すればいい。
ゆえにテレワークやGIGAスクールのような、専門家がいない、拠点が多い、しかしセキュリティも重要となるケースで効果を発揮する。実際、多数の店舗を全国展開している企業のネットワーク環境構築にも使われている。拠点数が多ければ、設定をクラウドで集約管理できることが強みとなる。
こうした使い方がベースにあるものの、実はそれだけではない。シスコシステムズ クラウドネットワーキンググループ コンサルティングシステムズエンジニア 脇中亮氏は「MerakiはAPIファーストのアプローチで開発しており、GUIではない機能も含め、どの機能もAPIからアクセスできますし、ほとんどのAPIが公開されています」と話す。
また「プラットフォーム」という側面があるのも特徴だ。単にセキュアなネットワーク環境構築のためのソリューションではない。各機器がセンサーとなり、さまざまなデータを提供できるようにするプラットフォームを目指したものとなっている。同 クラウドネットワーキンググループ コンサルティングシステムズエンジニア 片山智氏は「機能を作ることを目的とせず、課題を解決することにフォーカスしています」と話す。
脇中氏は「これまでアプリケーション開発者にとってネットワーク機器の中身はブラックボックスのようなイメージだったのではないでしょうか。しかしMerakiはAPIからデータを収集できるため、パケットロスや遅延からネットワークが揺らいでいることが分かります」と話す。
例えばMerakiで全国に多数ある店舗にネットワーク環境刷新したところ、通信の可視化である現象が発見されたケースがある。朝になると、各店舗から特定のクラウドプロバイダーに向けて業務アプリで使う通信が一斉に起きていた。そのアプリケーションが始業前にデータを全て更新していたことが分かり、差分データだけ更新するようにアプリケーションを改善することにつながったという。
もし通信を可視化していなかったら「なんか朝はネットワークが重いね?」程度にしか思わなかったかもしれない。この現象が深刻だったなら、ネットワークの専門家を呼び出して大がかりな調査を挙行する羽目になっていたかもしれない。しかしMerakiでアプリケーション開発者が簡単に通信を可視化できれば、こうした現象をアプリケーション開発者だけで素早く解決できそうだ。