「新型コロナ対策のための全国調査」のための仕組みを一から開発
LINEでは毎年、最先端の技術や積み重ねられた挑戦・知見を共有するためのイベント「LINE DEVELOPER DAY」を開催している。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、11月25日~27日の3日間、オンラインによる開催となった。
2日目のServer Side Applicationトラックの最初のセッションは、LINE OA Dev1チーム ソフトウェアエンジニアの小川拡氏による「2500万ユーザーから回答を集めた新型コロナ対策のための全国調査を1週間で作った話」。
小川氏は2015年に新卒でLINEに入社。現在はLINE公式アカウントの管理画面などのサーバーサイドのソフトウェア開発に携わっている。「これまでにスマートチャンネル、LINE広告、LINEポイントなどの開発に参加してきた」と語る。
LINEが開発した「新型コロナ対策のための全国調査」はこれまで5回実施されている。回答データは個人が特定されない形で厚生労働省に提供され、感染防止対策に役立てられているという。
「この調査の特徴は3つの数字で表すことができる」と小川氏は言う。第一の数字は「8300万」。これは全国調査への回答をお願いするために送信したメッセージ件数である。「アクティブユーザー全員に送信した」と小川氏。第二の数字は「2500万」。これは回答件数だ。「絶対数としてもユーザーに占める割合にしても驚異的な回答数を集めることができた」(小川氏)
第三の数字は「6」。これはプロジェクトを立ち上げてから調査を実施するまでの日数である。なぜ、このような短期間で大規模な調査を実施することができたのか。
同プロジェクトを立ち上げたのは2020年3月25日。ちょうど日本国内で感染者が急速に増加しており、同日、東京都では土日の不要不急の外出自粛が呼びかけられた。「何らかの形で厚生労働省のクラスター対策班に協力したいと考えていた。我々にできることを検討した結果、多くのユーザーと接点を持っているLINEの強みを生かし、クラスター対策に必要な全国調査を実施することにした」と小川氏は話す。
調査を実施するに当たり、3つの方法が候補に挙がったという。1つはすでに提供しているリサーチプラットフォーム「LINEリサーチ」のシステムを利用する方法である。素早く実施できるという利点はあるが、今回のような全国規模の調査を対象としているものではなく、負荷対策に時間がかかるため候補から排除したという。2つ目はアンケートシステムを提供している他の企業と協力する方法である。だが、他社と連携するにはコミュニケーションに時間がかかることが想定される。「この方法も見送った」と小川氏。第三の方法が新たにシステムを開発する方法である。「当然簡単なことではないが、今回の調査のために特化することができる。結果的に最速で調査を実施できると考え、この方法を選択しました」(小川氏)
6日という時間の中には、仕様や調査内容の策定からリリース前に必要なQAまでのすべての作業が含まれている。そのため「システムを構築するための開発期間は実質3日しかなかった」と小川氏は振り返る。そんな短期間の中でも、「多くのチャレンジがあった」と小川氏は言う。