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イベントレポート(AD)

マイクロソフトが新たに提唱する「CAF」成功に基づくフレームワークとは

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 企業・組織においてDXの推進が加速している中で、従来よりも柔軟かつスピードのあるクラウドを基盤としたビジネス戦略の策定やサービスの展開が求められるようになっている。その中で、マイクロソフトが提唱しているのが「CAF(Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure)」という新たなフレームワークだ。今回は、マイクロソフト主催のイベントに参加し、このCAFとはどのようなものなのか優位性はどこにあるのかを探っていく。

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コロナ禍でさらに高まるクラウド需要

 クラウドの時代となり企業においてはその環境整備が急務となっている。政府により提唱された「Society5.0」や働き方改革の実現に向け、いわゆるDXが推進され始めたこともあり、企業は従来のITインフラはもちろん自社のIT戦略自体を大きく見直さなければならない岐路に立たされている。

 実際に、2020年10月14日に開かれた日本マイクロソフトによる「Microsoft Azure」製品戦略の記者説明会では、IDC Japanが公表している「国内パブリッククラウドサービス市場予測」を引き合いに、SaaS・PaaSの2019年から2024年にかけての売上額は約20%の伸びが予想されると発表されている。

 その中でも、「Microsoft Azure」は約80%以上の年次成長率での市場拡大をみせている。特に、新型コロナウイルス感染症の影響もありDXが加速していくことが予想される状況下では従来よりもその需要は高まっていくことが予想される。

 一方で、企業にとって導入のプロセスや環境構築という技術的なハードルはもちろん、どのように管理・運用を行うことでビジネス戦略に寄与するのかなど、クラウドによって得ることのできる効果を測ることの難しさも1つの壁となっているだろう。

 そこで、各クラウドベンダーはクラウド導入のベストプラクティスとして、独自のフレームワークを提供している。前述したマイクロソフトもAzure導入のフレームワークとして「Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure」、通称「CAF」というものを用意している。

 とはいえ、このCAFについて詳しく知らなかったり、どのような役割を果たすものなのかイマイチ理解できていなかったりする人も多いのではないだろうか。そうした背景も踏まえて、今回は日本マイクロソフト主催の「CAF Partner Day 2020」に参加し、CAFの概要から目的までをお伝えしたい。

抽象度の高いCAFの概要をつかむ

日本マイクロソフト 第一アーキテクト本部 クラウドソリューションアーキテクト 久保智成氏
日本マイクロソフト 第一アーキテクト本部
クラウドソリューションアーキテクト 久保智成氏

 今回参加した「CAF Partner Day 2020」は、抽象度の高いCAFというものを理解するための一歩となるイベントであり、希望者にはハンズオンによるワークショップも実施された。実際に参加者も上流設計やクラウド移行を担っているパートナー企業の担当者が多く、質疑応答も活発に行われるなど、その関心の高さが伺える。ちなみに、登壇者は”We are CAF Ready” Tシャツを着用しており、積極的な発言などを行った参加者に同じシャツがプレゼントされるなど和気あいあいとした雰囲気が醸成されていた。

 最初に、CAFとはどのようなものなのか。日本マイクロソフト 第一アーキテクト本部 クラウドソリューションアーキテクト 久保智成氏は「顧客の成功事例に基づいた、ビジネス戦略とテクノロジー戦略の作成と実装を支援することを目的とした、実証済みのガイダンス」と説明する。つまり、技術的な部分だけではなくビジネス戦略までを包含することで、クラウドネイティブな開発・運用管理が行えるようにするための枠組みであるという。

 実際に、CAFでは「戦略定義→計画→導入準備→採用」というステージと、統制管理・運用定義といった内容で構成されており、従来マイクロソフトが行ってきたAzureへの施策を集約させたものになっているという。

CAFは6つのプロセスによって構成されている
CAFは6つのステージによって構成されている
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 では、具体的にどのような効果をもたらしてくれるのか。久保氏は「端的にいえば、デジタルトランスフォーメーションやクラウドトランスフォーメーションが重要なキーワードになってきます」と述べる。人工知能や機械学習、IoTなどといった時代のキーテクノロジーを活用することは、DX推進において重要課題となってくる。現にUberやSnapchatといった企業は時価10億ドル以上の評価を2年~4年ほどで得ており、前述したキーテクノロジーを迅速に事業へ反映させるために、クラウドを利用することで「フェイル・ファスト(Fail-Fast)」、いわゆる「早く失敗する」という考え方を用い、サービスの改善を矢継早に繰り返したことが急成長の要因といえる。

 つまり、企業はCAFを利用することで達成すべきビジネス目標に対して、どのようにクラウドを用いればよいのか、具体的な技術と方法論をセットで手に入れることができるのだ。たとえば、「既存のワークロードを移行」「新しい製品とサービスを展開」「環境設計と阻害要素の除去」など、目的によってどのようなプロセスを踏むべきかがパターン化されており、マイクロソフトのウェブサイト上でドキュメントとして公開されている

既存のワークロードを移行するためのパターンフロー
既存のワークロードを移行するためのパターンフロー
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 また、CAFで推奨される水準と現状のギャップを把握するための「Cloud Journey Tracker」「Governance Benchmark」といったアセスメントツールも用意されており、こういったものを参考にMVP(最小構成)を作り進化させていくこともできる。他にも、Azureアーキテクチャにおける設計原則や考慮すべきポイントがまとめられている「Well-Architected Framework」について、その柱となっている5つのポイントに基づいた評価を行う「Well-Architected Assessment Review」というツールを必要に応じて利用することもできるという。

CAFと併せて利用できる「Well-Architected Framework」5本の柱

CAFと併せて利用できる「Well-Architected Framework」5本の柱
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 CAFは顧客をクラウド導入の成功に導くガイダンスということであったが、上述したツールのほかにも各ステージに向けた各種テンプレート類が多数準備されている点も、ワークショップ形式で一部具体的に紹介されていた。

 ワークロードをクラウド上にホストする環境(ランディングゾーン)や事前設計されたベーステンプレートにも複数利用可能であり、これらを用いてクラウド環境をビジネス要件とワークロードの要求事項に合わせて反復的な進化をさせることができるのだという。久保氏いわく「小さく始めて大きく育てるアプローチや、最初から大規模向けとなるリッチな構成のアプローチにも活用することが可能」という。

 そしてCAFの統制管理のステージでまとめられているガバナンスモデルにも注目したい。コスト管理、セキュリティベースライン、リソースの整合性、IDベースライン、デプロイ高速化の分野が体系化されている。まさに、ここの活用如何により、ビジネスに目線を合わせたクラウドの利用を、これまで蓄積されてきたベストプラクティスを取り入れながら短期間で行っていくことができるのだ。

CCoEを前提としてDX実現を目指す

 マイクロソフトの提唱するCAFは最適なクラウド導入と運用を支えるためのフレームワークであるが、CCoE(Cloud Center of Excellence)の設置が前提として考えられている。CCoEとは、クラウドを利用したビジネス変革実現に向けて、クラウド戦略やガバナンスの管理を行うための組織横断的なチームのことである。

 では、なぜこのCCoEが前提条件として必要なのか。デプロイ王子ことマイクロソフト プロダクトマーケティングマネージャー 廣瀬一海氏は「MITの調査では、デジタルトランスフォーメーションに成功している非IT企業の大半は、CCoEを設置していたという結果があり注目を集めている。マイクロソフトでも、CCoEの設置によってCAFの展開も進むと考えている」と説明する。

 実際にCCoEの活動としては、クラウド共通基盤の整備やデジタル成熟度の高い人材の育成、組織のデジタル・リテラシー向上のための啓蒙活動、事業部門との協同によるビジネスモデルの実現など多岐にわたる。この一例として、ローコードやRPAによる社内業務効向上やクラウドに合わせたセキュリティ、運用、SLA(サービス品質保証)ルールの再定義などを行っているケースがあるという。

CCoEは、各専門分野を担う人材が集まって構成される
CCoEは、各専門分野を担う人材が集まって構成される
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 このCCoEの設置を考えたとき、「全社DXリーダー」「全社IT基盤責任者」「エンジニア・高度専門保有人材」「事業・部門ビジネスリーダー」といった大きく4つにカテゴライズされる人材登用が必要になってくると廣瀬氏は述べる。とはいえ、自社にすべての人材がそろっていて、CCoEの設置と運用も問題なく行えるという企業は少ないだろう。そこで、現実的にはパートナー企業などに支援をしてもらいながら、CCoEの設置を進めることでCAFに沿ったAzure導入・運用が可能になり、自社におけるDXを加速させていくことになるだろう。

クラウドとビジネス戦略の基盤となるCAF

 デジタルトランスフォーメーションを推進するために、オンプレミス環境からクラウドへ移行しようとして失敗してしまう企業は少なくない。当初想定していたコストや運用の負荷が大きくなってしまったり、そもそも社内で導入する目的や意義に対して合意形成が得られていなかったりと準備の段階からつまずいてしまっているケースだ。また、単純にリフト&シフトを行っただけではデジタルトランスフォーメーションにつながらないこともある。

 マイクロソフトの掲げるCAFは、前述したようにCCoEの設置が前提条件として考えられているなど、失敗の要因となりやすい部分をカバーするように構成されている。そのため、自社に必要なビジネス戦略とは何かを策定し、そこに必要なクラウド活用の在り方を方法論と具体的な技術によって指針を示してくれる心強いものとなるだろう。

 ただし、CAFそのものの抽象度は高いためリファレンスを読み解いたり、「Cloud Journey Tracker」などのアセスメントツールを用いたりして自社に必要なものを徐々に把握していくことが大切になってくる。また、CAFを利用したAzure導入などを支援してくれるパートナー企業を活用することも成功への重要な要素となる。

CAFの理解を助けるためのモジュールも用意されている
CAFの理解を助けるため、自習型トレーニング「Microsoft Learn」にCAFのトレーニングコースも用意されている
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 本イベントでパートナー企業代表として講演をしたオルターブース 小島淳氏は「インテグレーションの領域であってもCAFは有効に使えると思います。このCAFというツールは、社会インフラのような広い領域や中・大規模な企業へサービスを提供しているようなお客様が活用の中心になると思っていますが、Webサービスを展開するお客様にもフィットするように展開していきたいと考えています」と述べているように、今後もCAFが活用される場面はさらに広がっていくことだろう。

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