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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

ProductZine Dayの第2回開催です。

ProductZine Day 2024 Winter

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Chatworkのプロダクトマネジメントに学ぼう

複数のPMでも「健康的な意思決定」をするためのチームビルディングとは?

Chatworkのプロダクトマネジメントに学ぼう 第2回


 ChatworkのプロダクトマネジメントおよびPM(プロダクトマネージャー)育成のノウハウを、リレー形式で紹介する本連載。今回は、プロダクトマネージャーの北口より「チームビルディング」についてお伝えいたします。ここ2年程で、当初1名だったプロダクトマネージャーが7名になりました。そして全てのプロダクトマネージャーがChatworkという1プロダクトの顧客満足度を上げつつ、利益を最大化するため施策の企画・運用を行っています。このように、1プロダクトに対して複数のプロダクトマネージャーが同時に関わる場合に発生しやすい問題がいくつかあり、それらの問題解決にプロダクトマネージャー同士のチームビルディングが重要だと考えています。

「発信する情報の一貫性」をどう担保するか?

 プロダクトマネージャーは日常的に、プロダクトに関する将来の展望やさまざまな意思決定を、社内に発信します。その際に、それぞれのプロダクトマネージャーが異なる将来を描き、社内に発信していた場合、聞いた人たちは「プロダクトが一体どこを目指しているのか」がわからず、混乱してしまいます。

 上記はひとつの例ですが、プロダクトマネージャーが発信する情報に一貫性がないことで、

  • プロダクトの将来性を感じられなくなることによる、プロダクト開発へのモチベーション低下
  • 開発中の機能が将来的にもユーザーにとって必要なのか不明確などの理由による、プロダクトマネージャーへの信頼低下

 など、関わるメンバーの不安が募ってしまいかねません。

 Chatworkではプロダクトマネージャーが発信する情報に一貫性を持たせるため、プロダクトマネージャー全員が集まり「PRD共有会」を実施しています。

PRD(Product Requirements Document)とは

ユーザー課題をベースに「何が課題なのか(What)」と「なぜ課題なのか(Why)」を提示し、それに対して「どのように解決したいのか(How)」をまとめたドキュメントのことです。

 それぞれのプロダクトマネージャーが作成したPRDを持ち寄り、参加者が内容に対して意見を出します。あくまでも意思決定をするのは担当のプロダクトマネージャーですが、参加者のプロダクトに関する考えを出し合うことで、新しい視点を取り入れたり、新たな課題が見つかったりするなどそれぞれの考えについて認識を合わせることができます。新しい課題が浮き彫りになった際は課題解決の具体的なアクションを決めるなどの動きにもつながります。

 この共有会で大切にしているのは、「PRDを持ち込んだ人への指摘などのフィードバックの場」にするというよりも「プロダクトに関する考え方や方向性の意識合わせの場」にすることです。

 持ち込まれたPRDの内容に参加者全員が指摘することを目的にしてしまうと、気軽にPRDを持ち込めなかったり、より意見の強い人の声が大きくなってしまったりといった懸念があります。経験値問わず、その機能、しいてはプロダクトの将来についてどう考えているのかの意見を建設的に出し合える場作りを意識しています。

 この会を実施するようになり、以前よりさまざまな施策に対して建設的に意見を交わす頻度が増えました。もちろん考え方の違いや、真逆の意見が出ることも多くありますが、考えの違いから新しいアイデアがうまれることも多く、頻繁に認識合わせを行うことでプロダクトマネージャーの「発信する情報の一貫性」は担保できているのではないかと思います。

建設的に意見を出し合える場作りの工夫

 また、建設的に意見を出し合える場作りのために、ダイアローグという対話方式の一部をエッセンスとして取り入れています。ダイアローグとは「対話」という意味で、相手の意見を尊重しつつ自分の意見との違いを受け入れ、相互理解を深めるコミュニケーションのことを指します。

 PMチームでは、「Chatworkにおけるプロダクトマネージャーとは?」「プロダクトを通して届けたいユーザー価値とは?」など、人によって考え方が微妙に異なるもののプロダクトマネージャーにとって非常に重要なお題で、ダイアローグのワークショップを体験しました。

 「より優れたアイデアを選出するディスカッション」とは異なり、「相互理解を深める目的で行うダイアローグ」のワークショップでこういったお題を扱えたことで、抽象度の高いものについても相互理解を深めることができました。

 また、ワークショップでは発言する人は1本のペンを持って話し始めます。次に発言したい人はそのペンを手にとるまで話し始めることができません。それにより、発言者の会話を他の参加者が奪うことができません。

 意識しないと気づかないことではありますが、一般的なミーティングなどのディスカッションの場では誰かが話している最中に、話を遮り自分の意見を述べてしまう人も少なくありません。それ自体は悪いことではありませんが、最後まで意見を述べられない人がいるというのはよくあることです。

 普段のミーティングは限られた時間で行うため、人数が増えるほどに発言量が多い人と少ない人が出てきてしまいます。頭で考えたことを言葉にするスピードは人によって差があり、

  • 「考えている間に発言できずにミーティングが終了してしまった」
  • 「自分が発言している時間がもったいないと思い、発言を躊躇してしまった」

 といった声を聞くことがあります。

 ワークショップを実施し、「自分の考えに固執しない」「相手の考えの背景を探求する」などの一部のエッセンスを普段のコミュニケーションに取り入れてみました。その後、発言数が少なくなってしまいがちなメンバーから

  • 「意見がまとまってなくても発言しても良いし、聞いてくれているという安心感があった」
  • 「通常のミーティングで時間が足りなければ、その後チャットでも良いので自分の意見はしっかり発信しようと思えた」

 などの感想が挙げられました。ダイアローグのワークショップについて、気になる方は調べてぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

次のページ
「得意領域に影響を受ける意思決定」にどうバランスを持たせるか?

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この記事の著者

北口 ひとみ(Chatwork株式会社)(キタグチ ヒトミ)

 Chatwork株式会社 プロダクト本部 プロダクトマネジメント部。大学卒業後、Web制作会社でディレクター経験を積んだ後、うつ病からの職場復帰を支援する就労移行支援事業所で支援員として従事するかたわら、自社プロダクト開発やWebサイトリニューアルのディレクターを兼任。「働く環境をよくしていけるサ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://productzine.jp/article/detail/163 2022/03/31 13:57

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