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オリエンテーションの質を変えるふたつの要とは D2C dotのプロデューサーチーム「組(くむ)」が解説

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ポイント1) 「聞き出す」ではなく「引き出す」

 オリエンで多くを知ることが有利になるというのは、イメージしやすいかと思います。ここでおさえておきたいのは、「情報を仕入れる際の心構え」です。

 「聞き出す」と「引き出す」という言葉は、ともに「結果として情報が得られる」ことを表しているため、差がないように見えるかもしれません。ですが言葉の意味を調べてみると、次のように書かれています。

  • 聞き出す:自分の知りたいことなどを、聞いてさぐり出す
  • 引き出す:働きかけて、隠れているものを表に出す

出典:デジタル大辞泉

 それぞれ太字に注目すると、「聞き出す」の最後に書かれている「さぐり出す」の主語は“聞き手”であるのに対し、「引き出す」の「表に出す」は“話し手”が主体です。つまり「引き出す」の方が相手主体と言えるでしょう。オリエンは相手を理解する場。そう考えると、大切なのは「引き出す」意識なのです。

  今回のように「ウェブメディアをつくる」ことがゴールと決まっていると、つい「聞き出す」姿勢になりがちです。完成までに必要なものやことについて、フレームワークがあるかのごとく質問し、ひたすら埋めていく――。

 それだけでもウェブメディアは完成するかもしれませんし、メディアをつくればプロジェクトは実現できた、と言えるかもしれません。ですが本当にそうでしょうか。

 そもそもなぜメディアをつくったのか。もし、プロジェクトの目的・目標が達成できなかったとしたら、実現できたと言っていいのか。場合によっては、イチからやり直す可能性もあるでしょう。

 だからこそ情報をできる限り引き出し、どうしたらやり直すことなく、「プロジェクトが実現した」と言えるのかを、ひたすら考え抜くことが大切なのです。

 このプロジェクトで私は、相手の目線に立ち、「引き出す」ことをまずは意識しました。すでに運営されているアプリ以外にも、これまでのプロモーションや、ほか商材でのキャンペーンなどについて、相手の目となり調べていきます。すると、アプリはリリースして半年も経っておらず、ほとんど宣伝活動も行われていないことがわかりました。もしかしたら、デジタルを上手く活用できていないのかもしれない――。こういった想定が事前にできていると、オリエンの質もグッと上がります。

ポイント2)どれだけ魅力的な「メリット」が打ち出せるか

 このポイントをもう少しかみ砕くと、次のように説明できます。

  1. 困っていることはなにか、なにを期待されているのか、を理解し
  2. 何を相手に提示することが、相手にとっていちばんのメリットなのか
  3. 「あなたたちに相談したい」と思ってもらうポイントはなにか、を考える

 今回の例に1~3を当てはめてみましょう。

  1. 相手はウェブメディアをつくりたいと考えていて、私たちがウェブメディアをつくるのが得意そうに見えている。
  2. 「ウェブメディアの制作や運用の豊富な経験」を提示することで、相手は「自分たちへ依頼するメリット」を感じる。しかし、先ほどの「引き出し」より、相手はデジタルのことはあまり知らないのではないかと想像することができる。
  3. 2の考察により、「ウェブメディアの制作や運用の経験が豊富」以外にも、「ウェブプロモーションに強い」、「SNSの戦略や立案ができる」といった、ほかの自分たちへ相談するメリットを提示することもできる。

 このように考えていくことで、「ウェブメディア制作を任せられる」以外にも、相手はメリットを感じてくれるわけですから、「この人たちに相談しよう」と思ってもらえる確率はより高くなります。経験上、相手の期待をいかに上回ったメリットが提示できるかで、お互いの距離が縮まるか、本音で話してもらえるかが決まるように思います。

 ただ、ここで注意しなければならないのは、メリットに感じてもらえるかはもちろん相手次第ということです。そのため常にお決まりのパターンではなく、ときには切り口を変えることも必要です。今回は「何でもお任せください」というスタンスが相手にもメリットを感じてもらえましたが、それがかえって悪い印象につながるときもあります。

 また、提示する切り口というのは事業面だけではありません。

  • 難しい状況を整理することが得意
  • 人と人をつなぐのが好き
  • 相手の悩みや不満を聞いてあげる

といったパーソナルな部分や感情面でも問題はなく、「相手がもっともメリットに感じてくれること」をしっかり提示することが大切なのです。

 相談が集まるプロデューサーは、このポイントを考えることにとても長けています。相手との状況をふまえてすぐにベストな方法を見定めたり、相手との距離を縮めるのが上手い。クリエイティブを考えることが得意、まわりを動かすことができる、相手よりも相手の商品を好きでいられるなど、手法に正解はありません。それだけ多様なやりかたがあることも、プロデューサーの解釈がたくさんある理由のひとつだと思います。

オリエンを重ねると、自分の強みも見えてくる

 「これらふたつのポイントをおさえることができれば自然と情報は集まってくるので、提案の精度は確実に上がります」。そう言い切れるくらい、オリエンがその後の命運を左右します。

 あとは、オリエンの経験を積むこと。回数を重ねることで、自分ができることの中でメリットに感じてもらいやすいポイント、いわば「プロデューサーとしての自分の強み」が見えてきます。その強みをひたすらに磨くことはもちろん、自分の弱い部分は別のメンバーをアサインしてカバーするといったチームを自由に編成できるのも、プロデューサーという職種だからこそではないでしょうか。

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

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https://codezine.jp/article/detail/13920 2021/04/09 08:00

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