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なぜ「喜び」がチームにとって重要なのか? 楽しみながら結果を出し、ビジネスを長続きさせる文化を作ろう

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目次

喜びあふれる文化は共有される

 喜びあふれる文化は人を呼ぶ。顧客もそうだし、地元のコミュニティやマスコミもそうだ。やり方やアイデアを人に伝えられるという点が、メンローの成功の土台の一つだ。

 僕たちは2012年だけで241団体、2193人の訪問者を迎え入れた。訪問者は世界中からやってきて、アナーバーの商業地区の立体駐車場にある地下スペースを訪れる。米国のなかでも、西海岸でも東海岸でもない、決して最先端とは言えない地域だ。

 ツアーはほとんど口コミで広まった。僕たちのウェブサイトで話題に出す以外は特に宣伝していない。お金を払った人もいるが、多くの人は無料だ。

 ツアーでは僕がたいてい直接案内する。参加者が求めているのは、僕が何年もかけて探してきたものであり、いまあなたが求めているものと同じだ。

 僕の案内は、まずこのセリフから始まる。「メンローへようこそ。ここが喜びのビジネス価値にフォーカスした文化が作り出された場所です」

 訪問者はメンローをこんなふうに紹介され、びっくりする。彼らは、僕らが興味深いソフトウェア会社に過ぎないと思っていて、自分のところの技術チームでも役立つお土産を見つけるつもりでいる。しかしいったんここに来れば、喜びに直面せざるをえない。喜びはそこかしこにあふれ出ていて、避けようがない。ビジネスにおける喜び、その僕たちの実例は、業界に関係なくどんな会社でも意味を持つ。

 なぜ喜びをあえて取り上げる必要があるんだろう? 「では」と僕は訪問者たちに聞く。「どう思います? メンローチームのうち半分が喜びを持っていて、残りは持っていないとしたら。あなたの理想のプロジェクトにはどちらの人を入れたいと思いますか?」

 もちろん、誰でも喜びにあふれるチームを選ぶ。「でもなぜ喜びの半分のほうがいいんですか?」と聞く。「何が違うんでしょう?」

 答えが次々に出てくる。「生産性が高そう」「きっと積極的」「一緒に働きやすそう」「いい仕事をしそう」「結果のことをちゃんと考えてる」

 誰でもすぐ当たり前だと気づくように、喜びに満ちたチームのほうがよい成果を出す。それに僕たちの喜びは内部だけに閉じない。僕たちのねらいはここでの仕事が世界に出て行き、広く普及し、期待どおりの人びとが喜んで使ってくれるところにある。喜びに満ちた会社が大事に考えるのは、自分たちがいかに世界を変えるかだ。外部にそうした喜びをもたらし続けられるのは、内部にも喜びがあってこそだ。

 本書ではあなたにメンローのドアのなかを覗き見てもらう。そうすればあなた自身の喜びを見て取れるようになる。チームの全員がペアを組んで、活発に会話する様を聞いてほしい。部屋の壁に紙や毛糸、ピンや色とりどりのシールが貼ってある様子を見てほしい。僕たちがJoy, Inc.をどうやって作ってきたか、すべてを学んでほしい。僕たちと一緒に回答を探してほしい。質問はこうだ。

  • 喜びにあふれる意図を持った文化とは何か?
  • どうすれば壊れた文化を作り替え、喜びにたどり着けるか?
  • そうした試みをしながらも利益を出せるのか?

喜びがあればあなたとチームは空を飛べる

 人間の組織を導く原則は、飛行機を離陸させる原則と似ている。現代の空飛ぶ機械と、古代の人びとが飛ぼうとして失敗し続けた様とを比べてみてほしい。僕のキャリアの始め、マネージャーとして働いていたときはちょうどそんな感じだった。イカロスのように羽根をくっつけた翼を身に着け、全力で羽ばたき、決して空に浮きはしない。僕は全力で努力し、何も成し遂げられず、疲れ果ててしまった。

 ライト兄弟がブレイクスルーを起こし、人類で初めて有人動力飛行をしたのは誰でも知っている。それまで誰も成功しなかったのに、なぜ彼らは成功したのだろうか? 当時はライト兄弟も激しい競争のなかにいた。とりわけサミュエル・ラングレーは資金があり、高度な教育を受けた科学者チームを擁し、最初の有人動力飛行を目指していた。だが彼のチームは当時まったく無名だったライト兄弟に敗北し、飛行機の研究からただちに手を引いてしまった。

 なぜライト兄弟が勝利しラングレーが敗北したかについては、たくさんの理論がある。僕の答えはシンプルだ。ラングレーは飛行機を作ろうとしていた。ライト兄弟は空を飛びたかった。

 ラングレーが追求していたのは歴史に名を残し、名声を得、儲けることだった。ライト兄弟が追求していたのは喜びだ。鳥のように空を飛んで、世界を見下ろしたかったんだ。(僕がパイロットの免許を取ったのは十九歳のときで、空を飛ぶ喜びはとにかく格別だ。)兄弟の喜びの追求、強固な理想が、勝敗を決した。僕がマネージャーの仕事に満足できなかった理由の一つもそこにある。一生懸命になって、上司の真似をしてばたばたと羽ばたいていた。目的が何だったのかは、よくわからない。

 いまでは僕がビジネスに何を求めるのかわかっている。喜びだ。ビジネスで喜びを追求するのは、名声や利益の追求とは異なる。人間とはより高みを目指すものだ。チームは自分たちを超えるゴールを目指して働きたいと願う。世界に対して、価値があって長く残る仕事をしたい。自分たちのしるしを残したいと思うが、栄光のためではない。喜びをもたらしたり、苦痛を終わらせたりしたいためだ。ライト兄弟と同じように、メンローの人びとは空を飛びたいんだ。この道を進んでいくと、利益、名声、栄光といったものがあとから付いてくるともわかってきた。

喜びと幸せは同じではない

 喜びを探索し続けてきたなかで、幸せの領域には踏み込まないよう気を付けてきた。幸せには何も問題ないし、幸せを求めるのも結構なことだ。ただ、喜びはより深く、意義があり、目的を持っている。幸せとはある時点における状態の話だ。幸せな状態が連続していなくても、喜びに満ちていられる。

 メンローで僕たちは楽しみ、たくさん笑い、いつだってエネルギーが感じられる。だがいつも幸せというわけではない。僕たちは信条を共有している。僕たちは集中し、突き動かされる。ときには皮肉を言うことも、カンカンに頭にくることだってある。皮肉や怒りのエネルギーは仕事に向け、人類の苦痛を終わらせるという理想の実現に役立てる。僕たちがねらっている苦痛は、地球上で一番壊れている業界、IT業界が引き起こしているものだ。

 あなたと同じように、僕たちは困難かつ重要なことをしている。たとえば僕たちのチームは、世界最先端のガンとAIDSの研究装置を共同開発した。包括的な臓器移植情報システムの構築にも関わった。こうしたプロジェクトにおいて、僕たちの会社は重要で有意義な仕事に何年も携わった。何年間もずっと幸せであり続けるのは難しい。むしろ、幸せが成功に必須なのであれば、仕事が難しくなったとき、すぐ手を引いていただろう。目に見える、喜びあふれる成果を目指したからこそ、仕事を続けられたし、いまでも続けているのだ。

 喜びとはマラソンを目指して練習を積み重ね、そして完走したときに得られる、深い満足感だ。

 喜びとは自分の子供が理想の相手と結婚し、子育てのすべての労苦がたった一言の「誓います」に結実する様を目にすることだ。

 訓練と準備を重ねてきた戦闘機パイロットが、強風と戦いながら嵐の海に浮かぶ空母に視界の悪いなかF–18戦闘機を無事着艦させたときに感じるのが、喜びだ。エンジンが停止し、車輪が固定され、機体も空母も、甲板のチームも自分自身もみんな安全だと確認する。するとパイロットはすぐに、もう一回やりたくなって、いても立ってもいられなくなる。

 働いているときも、休んでいるときも、子供の学校にも、教会のコミュニティにも、家族のあいだに、国家に、誰もが喜びを求めている。人間は自身を超えるものを目指し、お互いにつながろうとするように、生まれついている。だからこそ僕たちはチームに参加し、会社に属し、必死に努力を重ねて困難なゴールを共有し、立ち向かう。

 根本的で本能に根ざした追求心は喜びに向かう。あなたが本書を読むのはそれが理由だ。

 Joy, Inc.へようこそ。来てくれてありがとう。

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役職も部署もない全員主役のマネジメント

著者:リチャード・シェリダン
翻訳者:原田 騎郎、安井 力、吉羽 龍太郎、永瀬 美穂、川口 恭伸
定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

 



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