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女性の学びを支援する団体や技術コミュニティの世界

女性のエンジニアが抱える悩みを解消したい――性差のないエンジニア社会を目指す「Code Polaris」とは?

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 IT業界における男女比に偏りがあるという実情に、エンジニアの皆さんはお気づきだろうか。マイノリティであるエンジニアの女性が現場での働きづらさを覚えている人も決して少なくない。そんな中、サーバーサイド開発やクラウドにおける自動化を軸としたフリーランスエンジニアの大平かづみさん、Front-End Foxes JapanのChapter Leaderで株式会社kulala CTOの後川菜穂子さん、MicrosoftでCloud Developer AdvocateとしてDevRel(Developer Relations)の仕事をしている千代田まどか(ちょまど)さんの3名が、女性向けの技術コミュニティ「Code Polaris」を立ち上げた。今回は女性のエンジニアの抱える悩みを解消したいと願う、大平さんと千代田さんのリアルな想いに迫った。

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なぜ女性限定のコミュニティが必要なのか?

――まずはCode Polarisを立ち上げるに至った経緯を教えていただけますか。

大平かづみ(以下、大平):2年ほど前に、私と後川菜穂子さんで「女性のエンジニアあるある」を話していたら、2人とも「女性のエンジニアの困難を解決したい」と思っていることがわかって、女性限定の技術コミュニティをつくろうという話になりました。

 しかし、当時は2人ともフリーランスだったこともあり、本業が忙しくてなかなか前に進まなかったんです。そんなところに登場したのが、ちょまどさん(千代田さん)。何かの機会で顔を合わせたときに、「女性のエンジニアをエンパワーメントしたいんだ」と聞いて、「それなら一緒にやる?」ということに。ちょまどさんが入ってくれたことで勢いがついて、「1回目のミートアップをやろう!」と本格的に始動しました。

(左)MicrosoftのCloud Developer Advocateである千代田まどかさん、(右)フリーランスエンジニアでMicrosoft MVP for Azureの大平かづみさん
(左)MicrosoftのCloud Developer Advocateである千代田まどかさん、(右)フリーランスエンジニアでMicrosoft MVP for Azureの大平かづみさん

千代田まどか(以下、千代田):女性のエンジニアコミュニティをつくりたいと思ったときに、まず頭に浮かんだのが大平さんでした。それで去年の夏ごろに声をかけたら、「実はもう構想は固まっていて、コミュニティの名前も決まっている」とおっしゃっていたんです。すでに素晴らしいインターフェイスまではあったので、私は本番環境へのデプロイに携わりました。

――「女性のエンジニアの悩み」とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

大平:以前は私、いわゆる名誉男性状態だったんです。同性以外のエンジニア社会で生きていくためには、女性性を捨ててしまった方が楽だったんですね。でも、あるとき自分の中にある矛盾に気がつきました。「容姿や服装の趣味なんてエンジニアリングには関係ない」と思って生きてきたはずなのに、女性である私が他の女性のエンジニアに対して色眼鏡で見てしまっていました。そんな自分自身に失望したことから、「これからは逆に振り切って、女性の支援に重きを置いていこう」と思うようになりました。

千代田:この男性比率の大きく偏った環境で、圧倒的なマイノリティー側である女性のエンジニアが、安全な処世術としていわゆる”名誉男性”を演じてしまう話、気持ちはとてもわかります。例えば数年前、私はイベントで登壇するようになったときに、複数人から次のような “アドバイス” をいただきました。「スカートを履くと、エンジニアとして正しく評価されないよ」「周りと同じように、ジーパンにTシャツがいいよ」「お化粧とかスカートとか、そういう女性らしい格好で登壇したらナメられるよ」など。その方が善意でアドバイスしてくれていることはわかっていたのですが、私としては登壇するからオシャレをしていたわけではなく、いつも通りに自分の好きな服を着ていただけなんですよね。そうした本質じゃないところで言われてしまう、生きづらさはあるかもしれません。

大平:同性が少ない、いわゆる男性社会の荒波に揉まれていると、本来であれば必要ないはずの力がついてしまうんです。処世術と言われればそうかもしれないけど、それは本来必要のない力だと思うんですよね。また、女性のエンジニアがスキルアップするために、異性の同僚や先輩のエンジニアに教えを乞うと、恋愛感情と誤解されてトラブルになる、といったこともあるかもしれません。もちろん全ての男性がそうなるとは思いません。ただ、もし周りを頼れないとなるとスキルアップが難しくなりますよね。

 さらに、女性のエンジニアが技術コミュニティに参加するには、最初に心理的なハードルを乗り越える必要があります。技術コミュニティの多くは女性から見て同性が少ないので、慣れるまでは少し不安な思いをするかと思います。それもまた女性のエンジニアがスキルアップする機会を失ってしまう一因かもしれませんね。

千代田:私は高校も大学も女子校で、周りに同性しかいない環境でずっと育ってきました。そこから新卒でエンジニアになったので、男女比が0:10から急に9:1くらいになりました。新卒が20~30人いた中で、女性は私ともう1人だけでしたね。同期や上司に同性がいない場合、「今日は生理で体調が悪いんだよね……」と気軽に話せないじゃないですか。女子校では当たり前だった会話ができなくなり、もう会話のプロトコルがわからなさすぎる。共感し合える仲間が少ないことが、少し寂しかったですね。

お世話になったコミュニティに恩返し・恩送りがしたい

――そもそもお2人はなぜエンジニアになろうと思われたのですか?どのように技術を磨いてこられたのか、教えてください。

大平:私は父親が趣味でPCを使っていたので、なじみがあったんですよね。子どもの頃からPCでじゃんけんゲームをしたり、うさぎちゃんが落ちないように線路をつなげるパズルゲームをしたりして遊んでいました。そこから中学生~高校生くらいになると、ちょうど「お絵描きBBS」が流行っていた頃で、「私も自分の絵をどこかに置きたい!」と、ジオシティーズでWebサイトをつくるようになりました。大学では情報技術科に入学してプログラミングを学んだのでプログラミングを学んだので、そのままエンジニアの道に進むことにしました。

 卒業後は新卒でSIerに入社し、組み込みエンジニアをしていました。守秘義務が強いプロジェクトが多く、自宅で勉強することができず、スキルアップを図れない焦りとジレンマがありました。そんな中、27歳の頃に出会ったのが技術コミュニティでした。Webサービスのつくり方を全く知らない状態でしたが、コミュニティに参加したことで自分の世界が開けたんです。

 当時は、ちょうどAWSが活発になってきていた時期で、「これからの時代はクラウドだろう。どうせ転職するなら20代の間にしておかないと!」と、次も決まってないのに、いきなり会社を辞めました(笑)。若気の至りでしたが、それがいいきっかけになりましたね。

 そこからの転職はすべてコミュニティで関わる人からのお声がけで決まっています。今はフリーランスなので、孤独を感じずにいられるのも、モチベーションを維持できるのも、コミュニティがあるからこそだと思っています。だからこそCode Polarisで「コミュニティに恩返し・恩送りがしたい」という気持ちが強くあります。

千代田:実は私がエンジニアになったきっかけも、大平さんとよく似ています。私は今も副業で漫画家をしているくらい、昔から絵を描くのが好きなので、皆に自分の絵を見てもらいたくて、スタティックなWebサイトを作ることにしたんです。そのうち動的なものに目覚めて掲示板を作るなど、徐々にプログラミングの世界に入っていきました。と言っても、最初はソースコードを探してきて貼り付けるだけの“コピペエンジニア”だったんですけどね。

 昔、マウスカーソルに“推しのアイコン”がついてくるのがありましたよね。あれをやりたくて調べてみたら、JavaScriptでできることがわかったんです。それでコードの配布サイトをいろいろ探しているときに、とてもオシャレなWebサイトに出会ったんです。

 そこで配布されているものは、他とは全然違っていて、無駄なスペースがいっぱいあるし、何よりもコードが短かった。コードって、長ければ長いほど、すごそうだと当時は思っていたので(笑)。今なら「インデントがしっかりしていて、無駄がなくきれいなコードだ」とわかるのですが、知識がなかった当時の私には、そのコードの何がいいのか、なぜもてはやされているのか、全然わからなかったんです。その理由が知りたくて、プログラミング言語そのものに興味を持つようになりました。

 ただ、学生の頃は女子大の英文科だったので、周りにプログラミングの話をできる人はいませんでした。Twitterでコミュニティの方々から教えてもらえなかったら、恐らく私はIT業界にいなかったと思います。今はMicrosoftで開発者コミュニティを育てる仕事をしていることもあり、コミュニティは会社にとっての宝ですし、私個人にとっても、育ててもらった恩のある、とても大切な存在です。だから私も大平さんと同じく「コミュニティに恩返し・恩送りがしたい」という想いが強いんです。

コミュニティにお世話になったからこそ、今度は「Code Polaris」として恩返しをする(参照元はこちらhttps://www.slideshare.net/dzeyelid/code-polaris-meetup-1)
コミュニティにお世話になったからこそ、今度は「Code Polaris」として恩返しをする(参照元はこちら

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この記事の著者

野本 纏花(ノモト マドカ)

 フリーライター。IT系企業のマーケティング担当を経て2010年8月からMarkeZine(翔泳社)にてライター業を開始。2011年1月からWriting&Marketing Company 518Lab(コトバラボ)として独立。共著に『ひとつ上のFacebookマネジメント術~情報収集・人脈づくり...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

鍋島 英莉(編集部)(ナベシマ エリ)

2019年に翔泳社へ中途入社し、CodeZine編集部に配属。同志社大学文学部文化史学科卒。

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https://codezine.jp/article/detail/14381 2021/07/08 11:00

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