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【デブサミ2021夏】セッションレポート(AD)

Insight Edgeの事例で学ぶ、現場に寄り添うデータ分析&活用の進め方【デブサミ2021夏】

【B-5】Insight Edge的 現場とともに進める住友商事DX

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 金属や建機、インフラ、メディア、不動産、資源など幅広い分野で事業を手がけ、81か国に1,000社近くの連結対象会社を展開する総合商社の住友商事。そんな同社のビジネス課題をアジャイル開発やデータ分析などを通じて解決し、DXの推進や価値創造を支援するのが、内製エンジニア集団のInsight Edgeだ。幅広い分野でさまざまな案件を手がけてきた同社が目指すのは、信頼できるパートナーとして現場に寄り添いながら、現場自らがデータ分析できるソリューションを提供すること。同社が実際に手がけた不動産価格予測モデル開発と与信リスク推定分析の実例を見ながら、DXにつながるデータ分析ソリューションを開発するヒントを探る。

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左から:株式会社Insight Edge Lead Data Scientist 梶原悠氏、株式会社Insight Edge Lead Data Scientist 新見佳祐氏
左から:株式会社Insight Edge Lead Data Scientist 梶原悠氏、株式会社Insight Edge Lead Data Scientist 新見佳祐氏

現場自らがデータ分析してビジネス課題の解決ができるよう支援

 ビジネス課題を最も理解しているのは、現場担当者。同じく、デジタル技術やデータ分析を一番理解しているのは、データサイエンティストなどのエンジニアたち。DXは、そんな異なる領域のプロがタッグを組み、互いの強みを掛け合わせることで実現する。Insight Edgeのリードデータサイエンティスト、新見佳祐氏はそう述べる。

 Insight Edgeは、親会社である住友商事のDX案件を技術面から支援するエンジニア部隊。これまでも商社ならではの幅広い領域でビジネス課題の解決に貢献してきた。

 DX案件は、「現状分析」「課題設定」「PoC検証」「運用」の4段階に分けて進められる。最初の段階では、現場がInsight Edgeと課題を共有して互いに理解を深める。続く段階で、課題感やボトルネックを洗い出してから、Insight Edgeが技術的な実現可能性を検証、過去の事例などを調査して現場にフィードバックし、課題解決した場合の期待効果を見積もる。期待効果が十分大きいと判断された場合は、PoC検証の段階に進む。ここではInsight Edgeによる分析とそれに対する現場のフィードバックを繰り返す形で商用化の可能性を探る。そして、晴れて商用化にGoサインが出たら、運用段階に移行。現場はInsight Edgeから提供されたツールを使って分析を実施し、要望などをフィードバック。Insight Edgeはそれを受けて調整を加えながら、分析レベルのアップデートや進化に取り組む。

 具体的にどのように進めているのだろうか。2つの実例で見てみよう。

 1つめは、不動産価格予測の分析事例だ。近年アメリカでは、仲介業に変わって不動産会社が中古不動産を売り手から直接購入、販売する買取再販事業が急成長している。ポイントは、物件価格の査定にAIモデルを採用していることだ。これまで物件の査定や売り手・買い手探しを人が行っていたところをAIモデルで支援することにより、売却プロセスを大幅に短縮することが可能という。マンションブランドを展開する住友商事の不動産事業部は、こうした価格査定の高速化や、国内におけるAIベースの買取再販ビジネスの可能性を検証したいと考え、Insight Edgeに相談を持ちかけた。

 正解に近い価格を予測できるのか。価格を決める地域の特徴はあるのか。予測モデルの精度と収益の関係を導くことはできるのか。これら課題の解決を前提に、都内の高価格帯のマンションが集積する地域を分析対象に設定。約5年分のデータを用いて、対象区別に予測モデルを構築した。予測モデルには、CatBoostを使用。GridSearchCVでハイパーパラメータを最適化してから、再度訓練データ全体でモデルを学習させて、評価データに対する予測値を算出した。

 新見氏たちはまず、2020年のデータでモデル評価を行った。結果、成約価格予測に対する平均絶対誤差率(MAPE)において、良い結果の区と悪い結果の区に分かれた。

 「この結果について、事業部から精度の悪い物件を除くことで精度は上がるのかという相談があり、特徴量ごとに精度を見比べながら理由を探ったが、うまく見つけられなかった。そこで、CatBoostのモデルから計算される不確実性に基づき、ワースト10%と20%の物件を検証対象から除外し、精度評価を行った。結果、MAPEは改善したことが分かった。ただ、対象となる物件数が減るため、やりすぎには注意する必要がある」(新見氏)

 もうひとつ、事業部からフィードバックがあった。それは、予測精度と収益の関係性が結びつかず、収益の計算ができないという相談だった。早速、新見氏たちは予測モデルの結果を活用し、買取再販事業の収益シミュレーションを作ることにした。

 収益シミュレーションは、予測価格が正解の価格に近い場合(転売がうまくいってマージンが確保できる)、低すぎる場合(誰も物件を売ろうとしないので買取もできない)、高すぎる場合(転売先が見つからず、最終的には適切な成約価格まで値下げして販売する)の3つのシナリオで利益を概算した上で作成した。ツールは、現場が最も使い慣れているエクセルで作成。担当者が自分たちでパラメーターを調整しながら利益の概算を見積もれるようにした。このツールにより、どの程度のマージンを設定すれば利益が確保できるか等のビジネスモデルの検証が可能になった。

不動産価格予測事例の収益シミュレーション
不動産価格予測事例の収益シミュレーション

 新見氏たちが心がけたのは、途中経過を週単位で報告するなど、現場への迅速なフィードバックだ。これにより、現場は都度説明を受けることで、分析内容を深く理解できるようになり、満足感が上昇。データサイエンティスト側も、細かく現場の意見を取り込めることで分析の方向性にずれが生じにくくなり、不要な手戻りが減って効率が上がったという。

 また、現場の関心に寄り添うことも大切と新見氏は言う。

 「データサイエンティストは概ね、精度を重視する。その結果、どれくらい精度を上げられるかに夢中になってしまいがちだ。しかし、現場は精度そのものにはそれほど関心がない。彼らが関心のあるのは、導入した分析モデルがビジネスに対してどれほど貢献できるかだ。本件では、分析のKPIである精度をビジネスのKPIである収益に翻訳するツールを提供し、現場の担当者が予測結果を基にビジネスモデルの検証をすることが可能になった」(新見氏)

次のページ
現場の知見を分析精度の向上に活かす

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この記事の著者

谷崎 朋子(タニザキ トモコ)

 エンタープライズIT向け雑誌の編集を経てフリーランスに。IT系ニュースサイトを中心に記事を執筆。セキュリティ、DevOpsあたりが最近は多めですが、基本は雑食。テクノロジーを楽しいエクスペリエンスに変えるような話が好きです。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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