どうすれば良いチームになれるのか チームが内包するふたつの"宿命”
どんなチームでも、必ず直面する宿命がふたつあります。
ひとつは、「好調は永遠には続かない」という宿命です。ビジネスであれば景気の影響を受けるし、スポーツも数年間一度も負けないチームはほぼあり得ないでしょう。どんなチームにも、必ず「良い時」と「悪い時」があります。それは個人も同じで、ずっと絶好調な人もいなければ、ずっと絶不調な人もいません。どんな人にもどんなチームにも、必ず波があります。それぞれの「山」と「谷」があり、「喜び」と「悲しみ」も交互に訪れます。
もうひとつは、「メンバー同士、完全にはわかり合えない」という宿命です。どんなに意気投合しても、どんなに価値観が似ていても、もとを辿れば他人同士です。何を大切に思い、どんな風に感情が動くのか。他人である以上、そこが完全に一致することは絶対にあり得ません。どこまでいっても、「絶対にわかり合えない一線がある」というのも揺るぎない現実です。
これらの"宿命”を理解したうえで、私たちはチームと向き合っていかなければなりません。
"信じる”ことから、チームの未来が拓いていく
では、どうすれば良いチームを作ることができるのでしょうか。大切にすべき考え方や効果的なアクションについては、さまざまな定義や解釈があると思います。しかしあえて、ただひとつに絞るのであれば、それは「信じること」だと私は考えています。
ずっと順調なチームなどありません。だからこそ、どんなに不調でどん底な時でも、「より良い未来」を信じることがチームの原動力になります。より良い未来を信じ、一致団結してその目標を目指すとき、そこにひとりひとりの「役割」が生まれます。
100%わかり合えるチームなどありません。だからこそ、互いに違っていることを前提に、「それでもわかり合えることがあるはずだ」と信じることが、チームの絆を深めます。不確実性を乗り越え、互いを信じ合うことができたとき、そこにかけがえのない「居場所」が生まれます。
ふたつの宿命に直面していても、私たちは「より良い未来を信じる」ことができるし、「仲間と通じ合える瞬間を信じる」ことができます。たとえ何のファクトもエビデンスもなかったとしても、信じることこそがすべての始まりだと思うのです。
人はひとりでは信じられない
「信じる」とここまで繰り返してきましたが、一方、信じるというのはとても難しいことだと思います。確証も保証もないから不安にもなります。誰も信じていないものを自分だけ信じていては、バカにされてしまうかもしれません。未来も他者も不確実性が高いからこそ、信じることにはエネルギーが必要です。
ですが、ひとりでは難しかったとしても、仲間がいればどうでしょう。ともに信じてくれる仲間がいれば、そんな恐怖や不安を払拭できるのではないでしょうか。チームの未来を信じ、より良い未来を実現するためにこそ、チームが存在するのだと思います。
どんなに苦しい逆境の最中でも、絶望の淵に追いやられていたとしても、どこかに仲間がいるはずです。あなたとともにチームを作り、一緒にチームを信じてくれる仲間が、必ずあなたを待っています。ともに信じられる仲間を見つける第一歩を、踏み出してみてください。
最終回、チームづくりにおけるテクニックやノウハウというよりは、私個人の「願い」のような内容になってしまいました。しかし、最後の最後、チームの壁を乗り越えるためにもっとも大切なことは「信じる力」であると私は確信しています。
どこかの誰かを、少しでも勇気づけることができていたら嬉しい限りです。本連載にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。