対象読者
- テストプロセス改善をこれから挑戦しようとしているエンジニア読者
- テストプロセス改善の流れを知りたい読者
テストプロセス改善のためのプロセス
テストプロセス改善をするときに、きちんとプロセスに沿って実施していくのが重要です。プロセスが重要と言っておきながら、自らがプロセスを守らないようでは笑い話にもなりません。
テストプロセス改善のためのプロセスとして、「International Software Qualification Board Expert Level Syllabus Improving the Testing Process(Implementing Improvement and Change)2011」で、デミングサイクル (The Deming Cycle:PDCAサイクルとも呼ぶ)と、IDEAL改善フレームワーク (The IDEAL improvement framework)の2つが紹介されています。
PDCAサイクルはご存じの方が多いと思いますが、IDEAL改善フレームはあまりなじみないかもしれません。しかし、IDEAL改善フレームは、テストプロセス改善モデル (Test Process Improvement Models)のTMMiでも紹介されているので、理解しておくことがオススメです(CMMiでも紹介されています)。
そのため本記事では、IDEAL改善フレームワークに沿って説明することにします。ただし、読者が実際にテストプロセス改善するときは、PDCAサイクルでも良いですし、別のプロセス、例えばシックスシグマのDMAICでも良いですし、会社指定のプロセスでも構いません。
IDEAL改善フレーム
「IDEAL改善フレーム」は、「Test Maturity Model integration(TMMi) Guidelines for Test Process Improvement Release 1.2 (以降、TMMi Framework)」のAnnex Bに解説が載っています(英語です)。さらに詳しく知りたい方は、こちらも英語になりますが、カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(Software Engineering Institute:SEI)が提供しているユーザーガイドに詳しく記載されているので、参照するとよいでしょう(ちなみに、IDEALはSEIのサービスマークです)。
ただし、この情報は、1996年発行と少し古く、最後の「L」を「Learnig」ではなく「Leveraging」にしているなど、現行のIDEAL version1.1と違いが多くあります(筆者の知る限り、version1.1は概要説明だけで、ユーザーガイドはありません)。
さて、ここでは「TMMi Framework」の解説に沿って、「IDEAL改善フレーム」の概要を紹介します。「IDEAL改善フレーム」は、表1のように5つの工程があります。各工程は、IDEALの頭文字からなり、「開始(I)」「診断(D)」「確立(E)」「行動(A)」「学習(L)」で構成されています。「PDCAサイクル」と比較すると、計画を立てる「確立(E)工程」の前に、「開始(I)工程」と「診断(D)工程」があるのが特徴です。
「開始(I)工程」は、プロセス改善をするための体制や基盤を構築します。「診断(D)工程」は、現状を診断し、あるべき姿と比較します。「PDCAサイクル」ではそれらの作業が「P」の中に含みますが、独立した工程にすることで、より強調されます。筆者はそれらが特に重要になってくると思っているので、プロセス改善をする際は「IDEAL改善フレーム」をよく使います。
頭文字 | 工程 | ゴール |
---|---|---|
I |
開始(Initiating)
|
プロセス改善の成功にむけて、初期の改善体制を構築する |
D |
診断(Diagnosing)
|
あるべき姿に対して、組織の現状を確認する |
E |
確立(Establishing)
|
計画を立て、どのように改善していくか特定する |
A |
行動(Acting)
|
計画を実行する |
L |
学習(Learning)
|
経験から学び、改善の能力を向上させる |
5つの工程にはさらに、2~4の改善プログラムからなります(図1)。段取り八分という言葉がありますが、テストプロセス改善にも当てはまります。IDEALでは、最初の3工程が段取りにあたるので、特にここをしっかり理解しましょう。ただし、これはプロセス全般に言えることですが、プロセスに固執しすぎないように注意しましょう。プロセスが実情に合わないと判断したら、躊躇せずに実際の状況に合わせて、プロセスを追加・変更・削除をするようにしてください(これをテーラリングと言います)。