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「働く」を楽しくするエンジンのつくりかた――コンセントの実験的施策を3つの視点から紹介

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[リアル×オンライン]社内読書コミュニティ「ぶらぶらBOOKS」

 今回のリノベーションを機に、オープンスペースの小上がり部分に「ぶらぶらBOOKS」と題したセレクト型の本棚を設置しました。

 リノベーション前のオフィスでも本棚はいくつか設置してあり、大量の本が資料として置いてありました。昔に比べると本を見る機会は格段に減っており、デザイン資料であればPinterestなどウェブ上で完結してしまうことも多いです。そこに加えてリモートワークが当たり前になったことで、物理的に本を手に取る機会も減りました。オフィスの本棚の意味とはーー。そしてそもそも、本の役割とは何でしょうか。

 コンセントは、創業から本や雑誌をデザインしてきたという歴史があったり、現在でも出版機能をもっているなど、本に馴染みのあるデザイン会社でもあります。

 私自身も、社会人になってから本を読む機会が増え、仕事にまつわる本を中心に月に5冊ぐらいは読んでいます(ちなみに今読んでいる本は『知ってるつもり 無知の科学』です)。本の良いところは、知識を得たことが生態系のように広がってつながっていくところだと思っています。それをほかの人と共有してコミュニケーションをとることができ、そこからまた新しい気づきが生まれていきます。

 こうした会社の文化や個人的な思いも多分にあるのですが、働くを刺激する「エンジン」のひとつとして、ぶらぶらBOOKSは本がもつ可能性を次の3つの役割に分け、その施策全体をデザインしていきました。 

役割1)リアルならではの新しい本との出会い

ぶらぶらBOOKSで用意した読書カード(左)。本棚はオープンスペースに設置しふらっと読めるようにしている。
ぶらぶらBOOKSで用意した読書カード(左)。本棚はオープンスペースに設置しふらっと読めるようにしている。

 ぶらぶらBOOKSのコンセプトは「宙ぶらりんの冒険」です。今の世の中は固定化された枠の中で、どこか窮屈にバランスをとっていることがまだまだ多い気がします。たまにはその枠からはみ出して、心が動く方へ一歩バランスを崩してみる。中途半端で宙ぶらりんな状態で、あっちへ、こっちへ、ぶらぶらと。自分との距離の短い本もあれば長い本もあって、さらに距離すらわからない本だってある。そんな曖昧な本との関係性をつくっていくことがこの活動の目的です。

 オフィス内のオープンスペースのぶらぶらBOOKS本棚では、好きな本を借りて読むことができます。ボックスを6個のジャンルに分けて、選書した本をひとつのボックスに6冊ずつディスプレイしています。本の背表紙には、昔小学校の図書館にあったような読書カードが貼ってあって、借りる際は記入しなければなりません。ちょっと面倒くさいところはありますが、子供の頃の体験を思い出してもらえたら嬉しいという思いでつくったルールです。

 本のジャンルはすぐに役立つようなビジネス書やデザイン書から、思考を広げてくれるカルチャー誌や文芸誌、ちょっとした息抜きになる漫画や児童書など、気分に合わせてセレクトできるように設定。新しい出会いを演出できるようにしています。

 また6個のジャンルとは別に、社員が1人ずつオススメ本をリレー形式で選書していくものも企画しました。初回はある社員が「スランプになったときに読む本」というテーマで本をセレクト。セレクトの理由を知るだけでも、その人の内面をのぞく感じがしてワクワクします。

 日本人の読書量が減っているという話はよく聞きますが、そもそも「本」と関わる機会が減っているのではないかと思います。だからこそ、リアルな本棚があることは、必ずしも本を読むことだけではなく、その空間に変化をつけてくれることになります。本の装丁として視覚的な「存在感」もあれば、本のタイトルが私たちに「問い」を投げかけてくれたり。今後も本と戯れる空間をつくっていきたいです。

役割2)オンラインで広がる、コミュニケーションの形

ぶらぶらBOOKS本棚を再現したmiroボード。リアル本棚とはまた違う体験が生まれる。
ぶらぶらBOOKS本棚を再現したmiroボード。リアル本棚とはまた違う体験が生まれる。

 このオフィスのぶらぶらBOOKS本棚は、クライアントプロジェクトでも大活躍のオンラインボード「miro」上でも再現しています。本棚と同じようにジャンル分けしたエリアをmiro上につくり、本の書影を配置しています。ただ単に本を並べていくのではなく、「ぶらぶらPARK」というエリアをつくり、人物や遊具やなどモチーフを散りばめながら、ランダムに配置して公園のようにデザインしています。

 本を探す楽しさだったり、本の感想を書いたり、コメントを読んだり、オススメの本を紹介したりと、リアルな本棚とは違った形で新しい本との体験が生まれています。「刺激」が生まれるように、これからもいろいろな形を試していく予定です。

 miroは全社員にオープンになっているので、本好きな人、本が苦手な人、インプットしたい人、若手や中途入社の人など、多様な人が気軽にいつでもどこでも、本を通じてコミュニケーションが可能。オンラインならではの良いところです。

役割3)読書会でインプットとアウトプットの習慣化

「朝読書会」で用意しているインタビューシート。相手の思考がわかることで新たな読書体験につながる。
「朝読書会」で用意しているインタビューシート。相手の思考がわかることで新たな読書体験につながる。

 「ぶらぶらBOOKS読書室」という名称で、毎週水曜日9:00〜10:00でオンラインでの読書会もスタートしました。リモートワークになったことで時間が取りやすくなったメリットもありますが、逆に打ち合わせ続きで隙間時間がなくなってしまったり、移動時間がなくなったことで本を読むタイミングがなくなってしまった、という声も聞くようになりました。読みたい本はあるのに積読してしまうこともよくありますよね。

 そんな課題を持っているメンバーと一緒に、朝読書会というフォーマットをつくり、まずは読むきっかけをつくりながら継続できる仕組みにトライしています。

 今試しているのがペア読書です。自分が好きな本を1冊用意して、最初の30分は1人で読む時間とし、残りの30分はZoomのブレイクアウトルームに2人に分かれて、読んだ本についてお互いにインタビューしながら感想を書いていきます。

 読んだ本をインプットするだけでなく、自分なりに解釈したり言語化することで、次に生かしていくことが必要です。……と言いつつそれが難しいのですが、読書会ではインタビューシートを用意し、相手にインタビューしてもらうことで、自分の思考を振り返りながら言語化できるようにしています。さらに自分だけでなく相手の思考を知ることで、新しい読書体験になっておもしろいです。

 今後も、いろいろな読書会のやりかたを試していこうと思っています。

 ここまで、「リアル」「オンライン」「リアル×オンライン」の3つの観点から施策をご紹介してきました。紹介した施策は特別なものではないので、取り組めるところがあればぜひ、試してみてほしいです。また、紹介した施策に限らず、「働く」を刺激する「エンジンの種」はいたるところにあります。その存在に気づくためにも、自分自身に「余白」を持たせてあげることも大切です。

 今後もますますデジタル化は進行し、働きかたや環境もさらに変わっていくと思います。

 個人の働きかたに対して、どこまで環境や仕組みづくりが必要なのか。どうしたら日本のGDPが向上し、より多くの人が「働く」を通して楽しく豊かに生きていけるのか――。この大きな「問い」はすぐに答えが出せるものではありませんが、その問いに向き合い、「働く」の定義をリデザインしていくことが必要なのではないでしょうか。

 次回は、今回ご紹介したような施策のもととなっている「リモートワーク時代に働く上で大事にしたい3つの価値観」をはじめ、オフィスのリノベーションとともに考えてきた制度づくりや、オフラインとオンラインの融合が当たり前となった今、私たちが考えていかなければならない課題などについて、コンセントのメンバーによる座談会の様子をお届けします。

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

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https://codezine.jp/article/detail/15235 2021/11/26 08:00

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