仕事をしていく中で"デジタルサービスデザイナー"という呼称が生まれた
――まずは自己紹介としてこれまでの経歴を教えてください。
大学を卒業後、流通系企業のシステム子会社に入社し、7年間でシステム開発や保守などを一通り経験しました。その後、フリーランスになってからは、人材、金融、通信などの企業でサービスデザインやオペレーションデザインを経て、2019年からは三越伊勢丹のDX案件に携わっています。
――エンジニアになろうとしたきっかけは?
大学は文系の学部でした。学生時代に接客のアルバイトをしていたのですが、そこで使っていたシステムに使いづらさを感じたのがきっかけで「システムをつくる」という仕事があることに気づきました。いま考えると、そのころから「システムが業務にあっていない」ことに疑問をもっていたのだと思います。
――実際にエンジニアを経験してみて、どうでしたか?
システムを設計したり、コーディングしたりするのも楽しくなかったわけではないのですが、どうしても「いま作ろうとしているシステムは、本当にビジネスの役に立つのか? もっとビジネスを知ることでよいものが作れるのでは」という疑問が消えませんでした。そこで、よりビジネスに近いところでシステム開発に携わりたいと思って退職しました。
ユーザー企業の社員になることも考えたのですが、社員になると自分がやりたいことができないかもしれない、と思いフリーランスでやってみることにしました。幸いフリーランスになってからは、さまざまな企業のサービスの立ち上げやサービス設計に携わることができました。
――デジタルサービスデザイナーという肩書は、珍しいですね。
簡単にいうと「ビジネスとシステム開発をつなぐ仕事」だと思っています。この肩書にしたのは、ある仕事がきっかけでした。
フリーランスになってから大手人材採用サービス企業で、あるサービスの「運用支援」という仕事をすることになりました。そのサービスは立ち上げたばかりで、これから一気に顧客を増やそうとしている状況でした。一方でシステムも発展途上、業務や運用もルール化されていません。顧客には大手企業も含まれていたので、サービスにはさまざまな要望が寄せられていましたが、当然すべてを開発するわけにもいかず、業務で対応したり、顧客調整で先送りしたり、という状態です。
当初の私のミッションは、業務オペレーションを円滑に進めるというものだったのですが、そもそもサービス全体として効率的な業務はなにか、システムへの機能追加を最小にするにはどうするか、というところまで踏み込んでいるうちに、ビジネスを考える立場の人と話し合いながら、システムの追加機能の要件整理や業務設計をやるようになりました。限られた時間や予算の中で、ビジネスの要望とすり合わせながら、効率的なシステム機能や業務プロセスを考えることにやりがいを感じていました。
あるとき、「あなたのような役割の人を増やしたいんだけど、なんという名前で募集したらいい?」と聞かれて困ってしまいました。プロダクトオーナーやプロダクトマネージャーとは違って、ビジネスやサービスの方向性を決定するわけではありません。彼ら・彼女らと一緒に動きながら、サービスのシステム機能や業務のデザインをおこなう役割です。いろいろなサイトや書籍を見たのですが「サービスデザイナー」という言葉が一番近いと感じました。オンラインのデジタルサービスを中心にするので「デジタルサービスデザイナー」と名付けることにしました。