マネージャーとして「うまくやるため」のポイント
マネージャーを選ばないキャリアがあってもいいと言いながらも、それでも「マネージャー」は重要であり、求められるポジションだけに、うまくやっていけるのならばそれに越したことはない。「うまくやるために」として吉羽氏は次のポイントをあげた。
期待値を確認する
「マネージャー」が意味することは組織や人によって大きく違うため、どんな責任を持つのかを明らかにし、上司と共有することが必須。そうしないと、上司からの評価がギャンブルになる可能性がある。
自分のキャパシティをうまく使う
マネージャーはそもそも忙しく、その上突発的な仕事が割り込んでくる。しかしながら、チームから目を離していると問題が大きくなるため、「常に忙しい」ことは望ましくない。また、自分が考えたり作業したりする時間も必要であり、キャパシティに余裕をもたせる必要がある。つまりは余計な業務を減らす必要がある。
自分自身を整理整頓する
あらゆるところからあらゆる情報が殺到してくるため、必要なときに簡単に情報を探したり、見返したりできるようにしておくべき。記憶に頼る情報は減らし、カレンダーやToDoリスト、メールボックス、情報記録ツールなどを活用し、自分にあったシステムを作る。なお、吉羽氏の場合は、Google CalendarやMicrosoft ToDo、Gmail、Obsidianなどを活用するといい、「自分自身を整理整頓できる人に、より大きなチームを効果的に扱えるはずがない」と語った。
自分のエネルギーをマネジメントする
吉羽氏は「いつも機嫌よく安定していること」が理想だという。 とはいえ感情的になったり、フラストレーションも溜まったりするのが人間。表情や姿勢などから伝わるため、自分のことを検知してコントロールすることが重要だ。難しいこととは言え心がけたい。
仕事を移譲する
マネージャーとしてのアウトプットを最大化するには、すべてを自分で行なわず、移譲することが大切。プロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーの仕事は手放そう。ただし、移譲できるのは実行責任までで、説明責任を移譲すると単なる丸投げになる。なお、移譲には人ごと・タスクごとで段階があり、教育、コーチング、メンタリング、確認が必要になる。移譲の選択はマネージャーの責任であり、時間とともに移譲できることが増えれば、チームのアウトプットと有効性が上がる。
吉羽氏は「優秀なエンジニアだった人ほど、締め切り直前や問題が発生したときなど、自分でやった方が早いし、品質も間違いないと考えがち。しかし、すべてのことをコントロールすることはできない。ある意味諦める必要がある」と語り、下記のようなコントロールの三分法を紹介した。
- コントロールできるもの:自分たちの願望やゴール>結果について心配する
- まったくコントロールできないもの:天候など>結果について心配しない
- ある程度コントロールできるもの:勝ちたいという願望など>内部ゴールを設定してベストを尽くす
さらに、吉羽氏は、「スタッフが欲求を満たせるように多くの機会を作るのは、マネージャーの責任」と語る。しかし、コツコツと安定的に成し遂げたい人と、新しいことやカオスを好む人とではモチベーションが異なるように、メンバー一人ひとりを見定めながら、仕事の割り当て方や移譲の仕方などを考えていく必要がある。各自の自己実現を支援するために、成長につながる仕事と支援を与えることが大切だ。
そして、最も重要なこととして「マネージャーとしてのスキル開発に投資すること」をあげ、「コーチング、ファシリテーション、目標設定、1on1、評価などエンジニアリング以外のスキルを継 続的に鍛える必要がある」と語り、メンバーに信頼されるために一定の技術力は維持しながら、学習の時間を確保していく重要性を強調した。
最後に吉羽氏は、「組織によって『マネージャー』への期待値も違うので確認しながら、自分自身を整理整頓しながら限られたキャパシティをうまく使って仕事を移譲し、すべてを自分でやろうとしないことが大切。採用、目標設定、評価に時間をかけ、そうしたスキルを身につけることが大事」とまとめ、「マネージャーは選択肢の1つに過ぎない。月曜日が楽しくなるキャリアを選んで」と語ってセッションを終えた。