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フルリモートでもつながりを感じるには?「オンライン✕オフライン」で促進する組織のコミュニケーション

【10-C-3】フルリモート下でのコミュニケーション戦略

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考慮すべき「オンライン&オフライン」コミュニケーションの違い

 コロナ以降の変化の中で、特に意識すべきものとして新田氏があげるのが、「オンライン」と「オフライン」のコミュニケーションだ。「デジタルで使えるコミュニケーションチャネルが限られていることを考えるべき。人は五感プラスαで情報を受け取っているが、デジタルコミュニケーションでは一部が受け取れなくなる」と新田氏は語る。

 人のコミュニケーションは、会話やテキストなど言語的な「バーバルコミュニケーション」と、顔の表情や声の大きさなど非言語的な「ノンバーバルコミュニケーション」の2種類に大別される。「メラビアンの法則」によると、人がコミュニケーションで受け取る情報のうち、「言語情報」はたったの7%に過ぎず、見た目や表情などの「視覚情報」と声のトーンや大きさなどの「聴覚情報」で9割以上を占めるとされる。

メラビアンの法則
メラビアンの法則

 もちろん言語情報が7%だからといって、話す内容が意味を失うわけではないが、視覚や聴覚などのノンバーバルコミュニケーションで得た情報が記憶に残りやすいというわけだ。

 たとえば、ビデオチャットでコミュニケーションする際に、話す・書く・描くに加えてスタンプや表情、身振り手振りといったリアクションが「伝える手法」として用いられるが、カメラをオフにしてしまうとリアクションのほとんどが使えなくなる。

 新田氏は「伝える手段を持っていても、使わなければ伝わることはない。伝わったかどうか、反応がなければ話し手は不安になる。それではコミュケーションが潤滑に行えない」と語る。もちろん、カメラ以外にもスタンプなどもあり、単にカメラのオンオフの選択というより、主催者と参加者の共通認識のすり合わせが重要というわけだ。新田氏は「誰も反応しない会議に意味はない。主体的に参加したいと感じる会議になっているかが重要」と語った。

参加する会議への主体性を高める「最速の改善方法案」

 それでは、主体的に参加したいと感じる会議とはどのようなものか。一般に、会議の目的は「共有」「発散」「集約」とされ、それぞれ期待する価値ごとにアプローチが違う。この目的とアプローチを意識しながら会議を設定・実施することが重要というわけだ。新田氏は「複数の目的をもたせると難易度が上がる。基本的には1つの会議には目的は1つとした方が望ましい」と語る。

会議の目的別に異なるアプローチを意識する
会議の目的別に異なるアプローチを意識する

 こうした目的を意識しながら、会議主催者が価値ある会議にしようとすれば、必然的に準備に時間を費やし、カメラのオンオフについてもルールの合意形成が必要となる。会議参加者側もカメラのオンオフに関わらず「自分の情報」を伝える努力が求められ、参加している自分の価値をどう出すかを考える必要がある。つまり、参加する意味がないと感じる会議なら、参加しなくてもいい。しかし、参加する意味があると感じる会議なら、主体的に臨むことが必要というわけだ。

 そこで、新田氏は「会議の主体性を高める最速の改善法案」として次の3つをあげた。まず1つ目は「前日までに事前のアジェンダを展開すること」であり、提供する情報として前提を揃えることが目的だ。これを見て自分に不要と思う人なら不参加で問題ない。そして、2つ目は、参加者の人数について、主体性をもって、ディスカッションできる人数である5人までにすること。そして3つ目は、ビデオのオンオフなども含め、オンライン会議に関する共通認識を作るために、参加予定の全員に本登壇資料を読んでもらうのがよいという。

 新田氏は、その他オンラインになって失ったものとして、「セレンディピティ(偶発的なコミュニケーション)」など、一方で手に入れたものとして「全員のデジタル環境、非同期コミュニケーション環境」などをあげ、「この環境で高い生産性を得るためには、より深く設計されたコミュニケーション設計が必要。ツールやフレームワークを利用したコミュニケーションのアーキテクチャを検討するなど、エンジニアが得意とすることも多い」と語る。そして、「私たちのチームでは、事業状況変化や組織変化に伴い、従来のコミュニケーションではうまくいかない、情報が共有されないといった問題が生まれた。そこでコミュニケーションについては常に設計し、アップデートが必要」と強調した。

 そして、現在行っているコミュニケーションに関するチームでの取り組みについて、いくつか紹介された。

 まず新しくメンバーが入る時のオンボーディングは、チームの状況や個々人に合わせて設計しているという。基本的には、最初にマインドセットを伝える目的のもと、ミッション・ビジョン・バリューおよび仕事の取り組み方、組織の現状と課題などを伝え、さらにノンバーバルな部分をインプットするためにチーム全員との1on1を実施している。

最初にマインドセットを伝える
最初にマインドセットを伝える

 また新しくチームができる時には、「非同期でできることは非同期で」を意識して、LeSSのデイリースクラムの非同期化を実施したり、ディスカッションをMTG設定して同期したりした。組織拡大の時には、チームオフサイト企画としてオフラインでのコミュニケーションを重視し、リアルなワークショップなどを実施したという。

LeSSのデイリースクラムの非同期化
LeSSのデイリースクラムの非同期化

 新田氏は「カケハシでは、スクラムマスターや開発ディレクターなど、カイゼン組織づくりを専門職として認める社風があり、それによってチーム作りをしてきた。試行錯誤の中で、オンラインの特性を理解し、メリットを最大化、デメリットを最小化するアーキテクチャを設計し、プロセスと文化を実装する。それによって変化を起こしていくことが大切」と語り、まとめの言葉とした。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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