難しい組織のスケール、カギはエンジニアのキャリア再考
こうして課題を克服してきたものの、森本氏には業界ごとのソリューションを開発する体制構築については後悔が残るという。幅広い業界に顧客が広がったため、森本氏は「業界ごとの課題解決策を開発するために、業界ごとに開発組織を編成しよう」と考えた。この時、実際には複数の組織を回せるほどの人員はいなかったものの、「後で採用頑張ればいいや」と楽観的に推し進めてしまい、結果的にエンジニアが疲弊して組織崩壊が起きてしまったという。「本当に甘かった。とても後悔しています」と森本氏は言う。組織体制はいったん元に戻した。
ここでいったんSafieのシステムに目を向けてみよう。アプリケーションではフロントエンドとバックエンドで分かれているものの、バックエンドが巨大なモノリシックになっている。全体の把握が困難、責任範囲が不明確となり、開発効率や保守運用にも悪影響を及ぼしていた。そこで現在はシステム構造と組織構造を一致させるように模索しているところだ。
同時にエンジニアのキャリアパスについても定義や整備を進めている。Safieのプラットフォームにはカメラ・顔認証デバイス・AI等による画像解析・動画など幅広い技術が盛り込まれていることから分かるように、それだけエンジニアも幅広く存在している。同社のエンジニアを職種で分けてみると、カメラの独自端末を開発するデバイスエンジニア、AIや画像処理エンジニア、プラットフォームを支えるサーバーサイドやインフラ・SREエンジニア、モバイル開発のiOS/Androidエンジニアやフロントエンドエンジニア、そして品質を担保するQAエンジニアや業務システムのエンジニアまでいる。
これをエンジニアの立場で考えると、同社にいれば1つの領域に留まることなく、幅広い領域またはレイヤーに挑戦するチャンスがあるということだ。1つの領域を極めていくのもありだし、他の領域にチャレンジするもあり、マネジメントを目指していくのもありだ。同社ではエンジニアの多彩なキャリアパスを定義し、用意しようとしている。
加えてエンジニアの成長支援として、エンジニアの職能ごとにオンボーディングコンテンツを整備したり、社内勉強会を開催することで他職能やフルスタックへのチャレンジを後押ししている。
こうしたエンジニア向けの施策になると森本氏の声にも熱が入る。事業の成長に伴い、システムの機能追加や組織の再編成は必要になるものの「機能追加はやればなんとかできてしまうものです。しかし根本的なシステム、組織の改善、再構築を先読みして進めなければ、後々で痛い目を見てしまいます。これは身にしみています。しかしこうした課題を乗り越えた先に、真の成功があると信じています」と森本氏は力強く語った。