5分で使えるLoggingフレームワーク - POCO::Foundation -
オープンソースC++用クラスライブラリPOCO活用講座(2)
SplitterChannel
複数のChannelオブジェクトに、同時に同じメッセージを出力したい場合に使います。使い方はカンタンで、addChannel関数を用いて出力したいChannelオブジェクトを追加します。サンプルコードは次のとおりです。
Poco::SplitterChannel* pSChannel = new Poco::SplitterChannel(); pSChannel->addChannel( new Poco::FileChannel("test.log") ); pSChannel->addChannel( new Poco::ConsoleChannel ); Poco::Logger& SplitterLogger = Poco::Logger::create( "SplitterLogger", pSChannel, Poco::Message::PRIO_INFORMATION ); SplitterLogger.error( "エラーが発生しました" );
コンストラクタ
コンストラクタは、引数のないものだけです。
SplitterChannelクラスでは、addChannel関数で追加されたChannelオブジェクトのポインタを、std::vectorの変数で保持しています。FormattingChannelクラスのように、リンク構造にはなっていません。また、removeChannel関数を使うと、Channelオブジェクトを取り除くこともできます。
EventLogChannel
Windowsのイベントログサービスに出力するChannelクラスです。イベントログに出力するには、メッセージ用のDLLを用意したり、前もってレジストリに値を書き込んだりの手続きが必要で、けっこう面倒です。当然、そういう面倒な処理は、このクラスに隠蔽されていますので、深く考えなくても出力することができます。
Poco::EventLogChannel* pEvChannel = new Poco::EventLogChannel(); Poco::Logger& EventLogger = Poco::Logger::create( "EventLogger", pEvChannel, Poco::Message::PRIO_INFORMATION ); std::string utf8str; //UTF8コードに変換 Poco::UnicodeConverter::toUTF8( L"エラーが発生しました", utf8str ); EventLogger.error( utf8str );
コンストラクタ
何も引数を指定しない場合は、イベントログの「ソース」には実行ファイル名が、「コンピュータ」にはホスト名が設定されます。次のように、「ソース」と「コンピュータ」を指定することもできます。
Poco::EventLogChannel( "ソース名" ); Poco::EventLogChannel( "ソース名", "コンピュータ名" );
優先度マッピング
イベントログでは、メッセージの優先レベルが3種類(エラー、警告、情報)しかありませんので、クラス内部で次のように変換しています。
| POCOでの優先度 | イベントログの種類 |
| PRIO_TRACE、PRIO_DEBUG、PRIO_INFORMATION | 情報 |
| PRIO_NOTICE、PRIO_WARNING | 警告 |
| その他 | エラー |
日本語メッセージ出力
POCOは、Windows環境でのUnicodeに対応しています。デフォルトで、「POCO_WIN32_UTF8」というシンボルがdefine定義されており、Unicode対応版のコードがコンパイルされます。「POCO_WIN32_UTF8」が定義されていると、文字列はUTF-8コードで書かれているものと見なして、Unicode版のWin32APIを呼び出す際に、POCOライブラリ内でUTF-16にコード変換しています。
イベントログに日本語文字を出力するには、Unicodeに変換する必要がありますので、前準備としてUTF-8に変換しておきます。
なお、実は、EventLogChannelクラスにはバグがあり、レジストリが正しく更新されません。
「EventLogChannel.cpp」ファイルのsetUpRegistry関数を、次のように修正してください。レジストリに書き込む長さを、2倍(正確にはsizeof(wchar_t)倍)にします。
RegSetValueExW(hKey, L"CategoryMessageFile", 0, REG_SZ, (const BYTE*)path.c_str(), (DWORD)path.size() + 1); RegSetValueExW(hKey, L"EventMessageFile", 0, REG_SZ, (const BYTE*)path.c_str(), (DWORD)path.size() + 1);
RegSetValueExW(hKey, L"CategoryMessageFile", 0, REG_SZ, (const BYTE*)path.c_str(), (DWORD)path.size()*sizeof(wchar_t) + 1); RegSetValueExW(hKey, L"EventMessageFile", 0, REG_SZ, (const BYTE*)path.c_str(), (DWORD)path.size()*sizeof(wchar_t) + 1);
オリジナルのソースでは、レジストリに半分の長さの文字列しか登録されません。ここはpathの文字長ではなく、バイト長を設定しないとダメです。
NullChannel
何もしないChannelクラスです。Loggerオブジェクトに設定するChannelオブジェクトをNullChannelに変更することで、一時的にログの出力を止めることができます。
最後に
紹介した以外のChannelクラスも実践的なものが多く、すぐに使えるものばかりだと思います。ログ出力と言うと、普通はアプリケーションのメイン処理ではないでしょうから、なるべく手間はかけたくないですよね。今回のLoggingフレームワークを、さくっと使ってみてはいかがでしょうか。
POCO::Foundationライブラリのパッケージは、なかなかの粒ぞろいです。今回はフレームワークとして、ある意味完成したパッケージの解説でしたが、次回は他の少し低レイヤーなパッケージも紹介したいと思います。
参考資料
- POCO C++ Libraries Reference
- 『詳説C++ 第2版』 大城正典 著、ソフトバンククリエイティブ、2005年5月
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山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)
静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるLaravel実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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WINGSプロジェクト 高江 賢(タカエ ケン)
<WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛)。主にWeb開発分野の書籍/記事執筆、翻訳、講演等を幅広く手がける。 2026年時点での登録メンバは約50名で、現在も執筆メンバを募集中。興味のある方は、どしどし応募頂きたい。著書、記事多数。 RSS X: @WingsPro_info(公式)、@WingsPro_info/wings(メンバーリスト) Facebook
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