「キャリアの棚卸し」でなりたい自分とのギャップを修正
成長サイクルを回すことが重要とした新多氏だが、「なりたいエンジニア像があったとして、それと今求められている役割との間にギャップがあったときは結構やりづらい」と、エンジニアとしての軸を決める際の悩みにも触れた。
エンジニアはスキルの幅も深さも広いだけに、自分が苦手なことや嫌いなことに向き合わなければならない時期がある。さらに、エンジニア自身も周りから影響を受けて日々変化していくため、ある日仕事が楽しく感じなくなってしまうこともありうる。新多氏はこうした状況について、「気づくのが遅れば遅れるほど選択肢が狭まる。早めにそのギャップに気づいて、細かく軌道修正をかけられれば、取るべきアクションやそのタイミングを見極められる」と説く。
この気づきと軌道修正を、新多氏は「キャリアの棚卸し」と呼ぶ。このプロセスは現状の整理から始まり、「自分の目指したい方向性と周囲が自分に求める役割を、それぞれ自分の言葉でちゃんと説明する」(新多氏)ことからスタートするという。
「この言語化は慣れても難しい」と説明する新多氏。「特に『周りから自分がどうなってほしいと思われているか』については、必ず自己理解とのズレが生じる」と苦労を語る。このズレを埋め、正しい認識へと導くものが目標設定や評価だが、その擦り合わせは「難しいがゆえにやりづらく、やりづらいがゆえにうまくいかない」と実感を述べた。
成長への最短ルートは「変化を楽しむ」ことにあり
難しいながらも、ズレを可視化したあとはどうすればよいのか。新多氏は、「ズレが見えたら、それを埋めるためのアクションを周りと相談しながら決め、実践していくことが次のステップ」だと示す。目標や環境の変化が伴うこともあるが、それらは何によって変化するのかを理解したうえで、できることからアクションをとっていくという繰り返しによって「どんどん差分がとれるようになっていく」(新多氏)のだ。
「周囲からのインプットやフィードバックによって、自分のポジティブな変化を楽しめるようになることが、成長への一番の近道」と語る新多氏。
セッション終了間際には、参加者からは「そもそも自分のなりたい姿が見えない人は、どこから手をつけるとよいか」という質問が飛んだ。新多氏自身も「霧の中にいる自覚はある」としながらも、「キャリアの棚卸しを行うなかであぶり出されると思うので、まずは棚卸しを行うことが、なりたい姿の輪郭を明らかにするアクションになると信じている」と答えてセッションを締めた。