こんな状態は要注意! 「不健全な組織」にならないための育成方法とは?
続いて、組織作りのもうひとつのカギである「組織への育成」へと話題が移った。ZOE氏は「不健全な組織」になる一因として、成長と成果のバランスが取れていない状態を挙げる。
「たとえば納期が厳しい際には、メンバーの成長機会よりも成果が優先されることがある。このような状態が長いあいだ続けば『木こりのジレンマ(目先のタスクに追われ、全体の効率化を考えられない状況)』が発生し、いずれ成果すら得られなくなるだろう。かといって個々の成長ばかりを優先すると、成果が出ずに会社自体が成り立たなくなる」(ZOE氏)
成長と成果は両輪であり、バランスを保つことが欠かせない。
組織が求める人材像を明文化することも重要なポイントだ。具体的な手法についてZOE氏は、「社内で評価されるエンジニアの要素を洗い出し、それをレベルごとに分けて評価基準とする」と実例を示す。
また、こうして個人が高めたスキルを組織に転換することで、属人化を防げる。転換手法としては「社内でのLT会」や「技術研修」「プロジェクトの積極的導入」や、「技術ブログを通じた社外への発信」、またSlackチャンネルなどで詳細にアウトプットしてもらう「分報」も有効な手法だという。
組織育成にはチームビルディングも欠かせない。チームビルディングの5フェーズについて、ZOE氏はタックマンモデルを引用して説明した。生産性が高いチームは「機能期」で成果を出せる状態だが、この段階に至るまでにはチームメンバーがぶつかり合う「混乱期」と共通の規範を形成する「統一期」をどう過ごすかが重要だ。
チームビルディングにおいて、「ワークショップが有効だ」とするZOE氏。世の中にワークショップコンテンツは数多あるが、「フェーズによって有効なコンテンツは異なる」といい、「形成期には、インセプションデッキ(メンバーが意見を持ち寄って共通認識をつくり出す対話の場)やムービングモチベーターズ(カードを使ってメンバーのやる気やモチベーションを見える化するゲーム)が効果的。一方で混乱期・統一期には、NASAゲームやマシュマロチャレンジがおすすめだ」と具体例を挙げた。
最後にZOE氏は、「時系列KPT」に沿ったチーム単位での振り返りを紹介した。時系列KPTとは、プロジェクトの内外で起こった出来事やそのときのフェーズ、印象的なエピソードを時間軸に沿って洗い出したシートをもとに、「あのときどうだったか」を思い出しながらKPTを実施する方法だ。
このとき、とくに重要なのがプロブレムの中から優先的に解決したい課題を決め、それについて全員で話すことだ。こうすることで特に重要な課題に対して、チーム一丸となって改善に取り組める。
「KPTを行うと、出てきた課題をすべて解決したくなる。それでは時間が足りなくなるので、優先順位を決めるべき」(ZOE氏)
「個人への育成」「組織への育成」という両輪から、多数の取り組みが紹介された本セッション。締めくくりとしてZOE氏は、「今まで話した組織育成は、どれが欠けてもうまくいかない。順番にやっていくことが重要だ」と、冒頭で触れた組織育成に不可欠な8要素のサイクルを再提示する。健全な組織の育成は一朝一夕では達成できない。ZOE氏の挙げた取り組みを1つずつ実践することで、改善のサイクルはゆっくりと、しかし着実に回り始めるだろう。