TKTKセキュリティ勉強会:「おやつを分け合う」交流がつなぐ全国規模の学び
TKTKセキュリティ勉強会の宮田明良氏は、高槻を拠点に展開する地域密着型のセキュリティ勉強会について語った。
TKTKセキュリティ勉強会は、大阪府高槻市を拠点に年2~3回開催される。最大の特徴は、オフラインでの交流を重視している点だ。宮田氏は「業界の第一線で活躍する講師を招き、講義や実践的なトレーニングを通じて、質の高い学びを提供している」と自信をのぞかせた。
参加者同士のつながりを重視した運営も魅力の一つだ。例えば、参加者が持ち寄ったおやつを分け合うというユニークな取り組みが、会場全体に和やかな雰囲気をもたらしている。また、イベント後にはアンケートを必ず回収し、講師に即時共有することで、参加者と講師の双方にとって満足度の高い運営を実現している。
他の多くのコミュニティイベントと異なり、TKTKセキュリティ勉強会では1,000~2,000円の参加費を徴収している。この参加費は講師の旅費や宿泊費に充てられ、質の高いイベント運営を支える仕組みだ。宮田氏は「有料化により、参加者のモチベーションも高まる」と指摘する。
スポンサーに依存しない運営も特徴的だ。講師が自由にテーマを設定できる柔軟な体制を維持しており、一方で他のコミュニティとコラボレーションする際にはスポンサーの協力を得て、豪華賞品付きのクイズ大会なども開催している。
TKTKセキュリティ勉強会の魅力は、関西を超えて全国から参加者を集めている点にある。北海道から奄美大島まで幅広い地域からの参加があり、年齢層も10代の学生から60代まで多岐にわたる。「沖縄からの参加者はまだいないが、ぜひ来てほしい」と宮田氏は笑顔をのぞかせた。
過去には、Webアプリケーションのセキュリティ開発をテーマにした1日トレーニングなど、専門性の高い内容のイベントも開催されている。こうした充実したプログラムが、参加者のリピート率を高めているのだろう。
「TKTK」という名称には、高槻(Takatsuki)で活動していること、そして「一歩ずつ(テクテク)学びを深めていこう」という思いが込められているという。また、地元のゆるキャラ「テケテケはにたん」にちなんだ遊び心も垣間見える。
さらに、地元高槻市だけでなく、官公庁や大学、大手企業とも連携し、専門性の高い学びの場として評価を得ている。神戸や鹿児島など他地域での出張講座も展開し、その活動範囲を広げている点も見逃せない。
地域に根ざしつつ、全国規模での広がりを見せるTKTKセキュリティ勉強会。今後もセキュリティ分野の学びを通じて、エンジニアコミュニティを盛り上げていくに違いない。次回開催は、デブサミ関西の基調講演を行った登大遊氏によるセキュリティをメインとした3時間の講演を予定している。
HACK.BAR:エンジニアの「サードプレイス」を目指して
続いて、HACK.BARの代表である井手翔陽氏が、「エンジニアにとってのサードプレイス」というビジョンを掲げた同コミュニティの活動について語った。
HACK.BARは2022年5月、神戸に誕生したエンジニア向けのスペースである。井手氏は「エンジニアにとってのサードプレイス、すなわち職場でも家庭でもない第三の居場所を提供したい」と述べる。HACK.BARには、Wi-Fiやコンセントはもちろん、オシロスコープや3Dプリンターといった電子機器が揃い、エンジニアがプロジェクトを進めたり情報交換したりするための環境が整っている。また、HHKB(Happy Hacking Keyboard)タッチ&トライスポットに認定されており、訪れる人は人気キーボードの打鍵感を自由に体験できる。
最近では、大阪梅田駅の北側、通称「うめきた」にある「グラングリーン大阪」で週3日の営業を開始し、関西エリアでの存在感をさらに強めている。
HACK.BARのもう一つの魅力は、エンジニア文化を深めるユニークなコンテンツだ。その代表例が「プログラミングカクテル」。井手氏は、「プログラミング言語の歴史や開発者の背景をヒントに、独自のカクテルを作成し提供している」と語る。この取り組みは、エンジニア同士の自然な交流を促進し、会話のきっかけを提供する重要な要素となっている。
また、HACK.BARは国内外からも注目を集めている。開業から3年目で世界15か国、83名の海外訪問者を迎え、昨年にはスイスで出張イベントを開催した。ヨーロッパ各地から約200名のエンジニアが集まるなど、国際的な展開も加速している。
順調に見えるHACK.BARだが、開業当初は苦難の連続だった。1日の来店者数は数名にとどまり、赤字に苦しむ日々が続いたという。これを打破するため、メニューや営業日数の見直しを行い、収益構造を改善。また、店舗の壁を広告枠として企業スポンサーを募り、参加者の負担を増やさずに経営の安定化を図った。
井手氏は、「店舗だけにとどまらず、各地でイベント開催や出張営業を積極的に行い、HACK.BARの価値を広げてきた」と説明する。昨年だけで18回のイベントを実施し、延べ500名が参加したという成果は、その取り組みの成果を裏付けていると言えるだろう。
2023年以降、HACK.BARは営業日数を増やし、新スタッフを迎え入れることでさらに多様なコンテンツを提供している。さらに、東京のガジェットメーカーと提携し、関西エリアでも先端技術に触れられる仕組みを構築中だ。「東京に行かずとも、HACK.BARでガジェットを購入できる環境を作りたい」と井手氏は意欲を語る。
エンジニアが交流し、学び、楽しむ場として進化を続けるHACK.BAR。国内外のエンジニアを巻き込み、地域に根ざしながら国際的な広がりを見せるその姿は、エンジニアコミュニティの未来像を鮮やかに示しているといえるだろう。