SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2025 セッションレポート

「AIに代替されない」エンジニアになる3つの能力──“日報”で鍛える問題解決力

【14-A-7】目の前の仕事と向き合うことで成長できる - 仕事とスキルを広げる

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

“自己責任時代”を生き抜く3つの基礎能力

 能力を伸ばすプロセスについて語った後、曽根氏は本題である「仕事の中で成長する」というテーマに話を進めた。曽根氏が若手だった頃には、未経験者であっても企業が人材を育てる文化が存在していた。その時代の教育スタイルは、情報のインプットを徹底的に行い、大量の業務を通じて自然と知識や経験を積ませるというものだったと回顧する。

 朝から晩まで膨大な仕事をこなすなかで自然と知識が身につき、蓄積された経験と知識が掛け合わさることで「知恵」が生まれ、結果として能力が形成されていく。そうした成長のサイクルを回すため、「とにかく量をこなしてガンガン働く時代だった」と曽根氏は話す。

 一方、現代のIT業界は「できる人には仕事と給料を与える。学ぶかどうかは自己責任」という“自己責任時代”へと移行している。企業が人材育成を担う時代が終焉を迎えつつある中、ただ仕事をしているだけでは自然に成長するのが難しくなり、主体的にスキルを獲得していく必要性が高まってきたのだ。

 こうした時代において曽根氏は、優先的に身につけるべき基礎能力として「計画実行力」「言語化力」「問題解決能力」の3つを挙げる。一見するとソフトウェアエンジニアリングとは直接関係がないようにも思えるが、これらはまさにエンジニアリングという営みの本質に深く関わるスキルだという。

 この主張を補強するために曽根氏は、庄司嘉織氏の発表資料を引き合いに出し、エンジニアのキャリア階層について言及する。ジュニアエンジニアの主な職務は実装である一方、シニアエンジニアは要件や要求を解釈し、それを実装に落とし込む役割が求められる。ここまではある程度“正解”が見えるが、スタッフやプリンシパルといった上位職になると、ゴールが明確でない問題に対処し、他者には解決できなかった課題に挑むことが期待されるようになる。

「上のポジションに行くほど、これらの能力が求められる」(曽根氏)
上のポジションに行くほど、これらの能力が求められる

 ここで曽根氏は改めて、「顧客の課題を解決し、フィードバックと対価を得る」ことこそが、エンジニアという仕事の本質であると強調する。そして、その課題解決に不可欠な基礎能力が「計画実行力」「言語化力」「問題解決能力」の3つなのだ。

 ファイルの設定や仕様書通りの実装といった“労力”がAIによって代替されつつある現在においても、技術を活用して課題を解決するという“能力”は、人間にしか担えない本質的な価値であり続けるというわけだ。

 曽根氏はさらに、これらの3つの能力を鍛えるための方法として「内省とフィードバックサイクル」を紹介する。内省の手法としては、「コルブの経験学習モデル」を用いるのが効果的だという。このモデルは、以下の4つのステップから構成されている。

  1. 具体的経験:あまり経験のない領域など、自分の能力から少しだけ背伸びしたタスクに取り組む
  2. 内省的観察:具体的経験を多角的に省察し、新たな発見と学びを得る
  3. 抽象的概念化:複数の事例から共通点を見つけ出す抽象化と、その共通点を1つの言葉で括る概念化をセットで行う
  4. 積極的実践:抽象的概念化で導き出した知識・ノウハウを実践する

 曽根氏は、このフィードバックサイクルを実践する手段として「日報や週報」の活用を強く推奨する。日報・週報を書く際に見積もりと実績を照らし合わせれば、計画実行力を鍛えることができる。また、うまくいかなかった要因を自分なりに言語化する過程で、言語化力の向上にもつながるのだという。

「理解」⇒「計画」が問題解決のキホン
「理解」⇒「計画」が問題解決のキホン

 曽根氏は、「ブログ執筆や登壇などは言語化力を高める上で有効だが、恥ずかしさや勇気が必要。一方で、自分しか見ない日報や週報であれば、本音を赤裸々に書きやすい」とその利点を述べる。気軽に取り組める手段として、日報・週報はまさにベストなのだ。

次のページ
適切な問題設定&ブレークダウンプロセスが成長に寄与

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Developers Summit 2025 セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

篠部 雅貴(シノベ マサタカ)

 フリーカメラマン 1975年生まれ。 学生時代、大学を休学しオーストラリアをバイクで放浪。旅の途中で撮影の面白さに惹かれ写真の道へ。 卒業後、都内の商業スタジオにカメラマンとして14年間勤務。2014年に独立し、シノベ写真事務所を設立。雑誌・広告・WEBなど、ポートレートをメインに、料理や商品まで幅広く撮影。旅を愛する出張カメラマンとして奮闘中。 Corporate website Portfolio website

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/21313 2025/06/24 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング