安心・安全な運用のために“仕組み”を整える
幸いなことに、同事例では問い合わせ対応などのやり取りをすべてメールで行っており、サーバー側に個人情報を保管していなかったことで個人情報漏洩という最悪の事態は免れることができた。だが、ユーザーの属性や行動履歴などのデータを適切に利活用することが、Webサービスにおける付加価値のひとつとなっている現在、そのような構造は今の時代に合わないと述べる。
とはいえ、セキュリティ対策の強化はエンジニア側からすれば実装や運用の手間が増える“面倒くささ”がある。そんな悩みに対して、安全性と利便性のバランスがとれたWebサイト運用を実現する方法として、三谷氏は同社のローコード開発プラットフォーム「SPIRAL®」を紹介する。SPIRAL®は、Webフォームをローコードで開発できるクラウドサービスで、データベースを中心にWebフォームやメール配信機能、PHP/JavaScriptによるカスタマイズ、API連携などの機能を備えている。官公庁や金融機関、自治体などでの導入実績もある。

事例として、三谷氏はスパイラル福岡支店の10周年記念キャンペーンサイトを紹介。同サイトでは、ログインして閲覧できる会員限定コンテンツのほか、投票機能や抽選機能といったユーザー参加型のコンテンツを備えており、セキュリティ面でも一定の強度が求められる構成だった。このWebサイトを、三谷氏と当時の制作リーダーの2名で構築したのだが、着手から初回リリースまで、わずか5日で完成させたと明かす。
主に使用したのは、WordPressと有料テーマのSwell、そしてSPIRAL®。WordPressをフロントエンドに据えてSPIRAL®を連携させることで、UIの自由度とデータ管理の堅牢性を両立させながら短期間での構築を成功させた。
スピードと品質の両立は、生成AIなどを活用した近年の開発スタイルとも通じるものがある。ただ、AIだけでは担保できない領域も存在する。特に個人情報を扱う場合、運用者や利用者が安心できる仕組みがあるかどうかは大きな分岐点になる。人の手が入ることでAI丸投げの不安感が払拭され、加えて機能面でセキュリティが担保できることは、AI時代においても価値があると三谷氏は強調する。