ガートナージャパンは、日本の企業を対象にしたリモートワークの実施状況に関する調査の結果を7月31日に発表した。
同社が4月に実施した調査では、日本の企業はリモートワークを継続しているものの、その対象者は絞られる傾向にあることが明らかになっている。
新型コロナ禍(2020年4月〜2022年)では「リモートワークをまったく実施していない」と「リモートワークの実施予定はない」を合わせた割合は12.6%、「全社員の50〜80%程度がリモートワークを実施している」は49.3%に達したものの、2025年4月の時点では「リモートワークをまったく実施していない」と「リモートワークの実施予定はない」を合わせた割合が22.6%に増加し、「全社員の50〜80%程度がリモートワークを実施している」は32.3%に減少した。

ガートナーは、他社に倣って完全な出社に向かうことに疑問を呈しており、同社のディレクター アナリストである針生恵理氏は、「リモートワークを完全に廃止することは、従業員のワークライフバランスの損失と優秀な人材獲得機会の喪失、そして働き方の多様性を求める社会の潮流からの逆行となる可能性もあるため、十分に留意しながら施策を進める必要があります」と指摘する。たとえば、同社が4月に実施した別の調査では、従業員が会社に勤務する上で重要と思うものとして、「報酬」「仕事の充実」に続いて、「ワークライフバランス」を挙げる回答が多かった。
同社はリモートワークについて、通勤負担の削減、ワークライフバランスの向上、個々の生活スタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にすることから、従業員満足度の向上、それにともなう離職率の低下、通勤負担の軽減による生産性の維持や向上につながると述べるとともに、リモートワークがオフィススペースの最適化によるコスト削減や、国や地域を問わない優秀な人材の採用といった、戦略的なメリットをもたらすとも指摘する。
以上を踏まえて、同社は企業がリモートワークを検討する際に考慮すべき点として、
- 全社一律ではなく、チームや個人の適性に応じた柔軟な制度設計を行う:柔軟な制度設計は従業員の自律性を尊重して、それぞれの働きやすい環境を主体的に選べる組織文化を醸成することにもつながることから、会社全体のガバナンスや平等を貫くために、全社一律で出社日を決めることはあまり意味がない
- 従業員のパフォーマンスとエンゲージメントへの影響を考慮し、最適なバランスを追求する:従業員の声を継続的に集めて、働き方が業務成果やモチベーションに与える影響を可視化し、バランスの取れた制度設計を行うことが重要であり、デジタル部門はテクノロジツールの活用や使い方を提案することでよりよいコミュニケーションをサポートして、従業員が孤立せず会社とのつながりを感じつつ最大限の能力を発揮できるIT環境を目指す必要がある
- 特定の事情を持つ従業員だけでなく、より広範な従業員が選択できる制度とする:企業には出社やリモートワークの選択肢を提供することが、従業員のウェルビーイング向上と持続的な企業成長に寄与するという視点が必要であり、従業員が自身のライフステージや働き方に合わせて最適な選択が可能になるような環境を提供することが重要となる
の3点を挙げている。
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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
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