SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2025 KANSAI セッションレポート(AD)

Claude Codeでレビュー負荷軽減──KINTOテクノロジーズが実践する「説明補助ツール」としての生成AI活用術

【A-8】生成AI時代の落とし穴?実装は速くてもレビューが詰まる ― 私たちの解決アプローチ

レビュー負荷軽減へ、生成AIを「説明補助ツール」として活用

 「コードの意図・背景への理解不足」を原因としたレビューの課題に対し、小林氏のチームが採用したのは「AIの説明能力を活用することでレビューしやすいプルリクエストを目指す」アプローチだ。

 小林氏はレビュー時の課題を「AIでコードは書けても、何を理解したのかは伝えてくれません。だからこそ、人間側がレビュアーに意図を伝える仕組みをうまく作る必要があります」と分析する。

 そこで同チームは、生成AIを「他者と協力するための説明補助ツール」として活用するために、ターミナル内で動作するエージェント型コーディングツール「Claude Code」と、GitHub Actionsワークフロー内でClaude Codeを実行可能にする「Claude Code Action」を導入した。

 Claude Code Actionには以下の観点でチェック作業を指示している。「潜在的なバグがないか」「冗長な構造や不必要な分岐がないか」「コーディングガイドラインに違反していないか」。特にプロジェクト固有のガイドラインがある場合、それに基づいた違反箇所の洗い出しも可能だという。

 重要なのは、AIがレビューを「代行する」のではなく「補助する」という考え方だ。小林氏は「レビューの経験が浅くても、AIの指摘をきっかけにコードの疑問点を絞り込むことができます。ガイドライン違反を機械的に洗い出すことで、レビューの観点漏れを防ぐことができます」と効果を説明する。

 運用の流れは、まずClaude Code Actionがコードの内容を要約する。レビュアーはこの要約を読むことで、AIが生成した複雑なコードでも構造と意図の大枠を素早く把握することができる。一方、実装者は要約を確認し、「自分の意図とずれていないか」をチェックする。ずれがあれば補足コメントをプルリクエストに添える。

 この運用により、レビュアーは「このページを参考にしましたか」「この機能は、別の場所に似た実装がありますよ」など、より具体的で建設的なフィードバックに時間を使えるようになった。

 先に挙げたボトムシートの不具合修正の事例にあてはめてみよう。Claude Code Actionに実装を要約してもらい、レビュアーはその要約を見て実装の目的を把握する。それに対して実装者が「この仕様・機能を実現するために、この実装を行いました。私はこのような理解をしています」と補足することで、レビュアーは実装者の理解度を測ることができる。これにより、正解のコードに到達するまでの長いやり取りを削減し、コミュニケーションコストの削減につなげることができるのだ。

レビュー担当者とのやりとりが簡潔になる
レビュー担当者とのやりとりが簡潔になる

 また、GitHub Actionsにより自動化ワークフローにAIレビュー機能を組み込み、コードの変更に対して自動的かつ継続的にレビューを実行する仕組みも構築している。これにより、新しいコミットが追加された際も差分のみを効率的に再評価することで、開発フローを阻害せずにレビューを支援できる。

 レビュー観点は「コード品質とベストプラクティス」「アーキテクチャ準拠性」「セキュリティとパフォーマンス」「レビュー出力形式」の4項目に大別される。これらの観点から「ガイドライン違反を機械的に洗い出すことで、レビューの観点漏れを防ぐことができます」と、小林氏は自動化ワークフローへの導入効果を説明する。

 一方、小林氏がレビュー負荷増加の要因として挙げた「知識以上のコードの出現」は、要約機能で対応している。AIが生成する複雑な構造のコードを要約して可視化することで、チーム全体のレビュー能力の底上げを図っている。

 出力は具体的で実行可能なフィードバックとコードの改善提案を含み、かつ日本語版と英語版の詳細レビューを両方提供する形式で統一している。my routeの開発は多国籍チームのため、英語版も出力しているのだ。

実際に活用しているプロンプト
実際に活用しているプロンプト

 小林氏は「この取り組みを始めたばかりで、発展途上」としながらも、既に手応えを感じているという。「レビューの負荷を減らして工数を削減することも、生産性向上につながると考えています」とその意義を改めて強調した。

 同時に、根本的な解決策として「よほど特殊な作業環境でない場合は、どの現場でも実施されている取り組みだと思いますし、率直に申し上げて、レビュー負荷を下げるには、そもそも実装で最善を尽くすことに帰結すると思います」と話し、講演を締めくくった。

この記事は参考になりましたか?

Developers Summit 2025 KANSAI セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

タナカタイゾー(タナカ タイゾー)

 フリーカメラマン。日本写真映像専門学校卒業後、写真スタジオを経て独立。関西を拠点に広告、カタログ、雑誌の分野で活動。最近は子どもも成長し、休日は愛犬と一緒に1人と一匹でキャンプを楽しむ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:KINTOテクノロジーズ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/22314 2025/11/12 12:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング