「技術者の勘」をデータ化。建設DXのリアル
続いて登壇したのは、「地域産業・レガシー産業のアップデート」を掲げ、建設向けソフトウェアの開発を行ってきたスタートアップのクアンド代表・下岡氏。最近では、実際の建設関連会社をグループに迎え入れ、よりリアルな現場課題の解決に挑んでいる。
建設業界の抱える問題は山積みだ。2040年までに最大366万人の人手が不足するという試算があるにもかかわらず、建設投資額は2021年から2035年にかけて9兆円増えると言われている。
水道や道路の陥没といったインフラの老朽化や都市開発はもちろん、近年では国防の観点からデータセンターを国内に設置しようという動きもみられる。建設業は「人は減っていく一方、仕事は増えていくという状態」(下岡氏)なのだ。

それでも、効率化のために品質を犠牲にすることはできない。 そのため「限られた人員で、いかに多数の現場を高品質・短納期で遂行できるか」が重要になってくる。
下岡氏によると、「建設現場を支える現場監督の動きを見ていると、『移動時間』に無駄なコストがかかっている」という。現場の打ち合わせやサポート、緊急対応などに業務リソースの30%を取られ、従業員100人規模の部署におけるコストで見ると年間1.89億円ほどの費用がかかっているというのだ。
こうした課題を基に開発されたのが「SynQ Remote(シンクリモート)」だ。スマートフォン同士で映像をリアルタイムに共有できるだけでなく、事務所のパソコンからも双方向にポインタを表示し、「ここを拡大して見せて」と指示を出すようなこともできる。複数人で同時に映像を見られるため、誰か1人が現場に行けば、あとは遠隔で事足りる仕組みだ。
「ここの水漏れを直しておいて」といった指示を書きこみ、ビジュアルとして残すこともできるほか、機械などの騒音がある環境下においても音声を文字起こしできる。
やり取りした写真や動画はリアルタイムでアップロードされ、通話が終わればすぐに報告書の作成などに取り掛かれる点も大きなメリットだ。

これまでの管理業務は、現場に常駐する作業員が目視で行ってきた。そのため、技術者による「長年のカン」が業務の要となり、「その人が辞めると技術も消える」ことが繰り返されてきた。
しかしSynQ Remoteなら、やり取りした映像・会話の内容がナレッジとして蓄積されていくため、非属人化したシステムを構築する際の土台になる。「今」の人手不足を解消するだけでなく、将来的にも持続可能な現場作りを実現できるわけだ。
「人手不足は、特に地方において深刻です。SynQ Remoteによって属人化を解消し、さらにはそこから新たな産業が生まれる未来をつくりたい」と語る下岡氏。地方発の企業として、地域の課題に自ら取り組む姿勢を強く示した。
