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データサイエンス基礎を高校数学から復習

積分は「変化の蓄積」。現実の積分データからトレンドを可視化する

データサイエンス基礎を高校数学から復習しよう 第6回

 データサイエンスという分野は、データ収集や可視化などが身近になったことで、より重要になってきています。システムを使ってデータ分析する際、利用者は最終的な結果のみを求めますが、私たちエンジニアはその途中経過についても正しく評価する必要があります。そのためには、中学や高校で学んだ数学の知識が欠かせません。そこで本連載は、高校までに学ぶ基本的な数学知識を使って、データ分析やデータ表現の基礎的な考え方を紹介します。また、既に学んだ数学的基礎からデータの特徴を見つけるためにデータ表現する方法について紹介したいと思います。

はじめに

 前回はデータの「今」の変化を捉える「微分」について掘り下げました。今回はその反対とも言える「変化を積み上げること(積分)」について掘り下げ、データサイエンスにおいてどういった意味を持つのか解説します。

 数学の授業で習う積分は記号や公式が複雑で難しく感じられますが、データサイエンスにおける積分は、もっと素朴でありながらも強力な「予測の武器」として活用できます。

日常の中に潜む「積算」の論理

 積分が、普段の私たちの判断にどのように役立っているのでしょうか。最も身近な例は「積算温度」です。特別な専門用語に聞こえるかもしれませんが、実は私たちはこの「積分のロジック」を驚くほど無意識のうちに使いこなしています。

無意識での「積分」の利用

 例えば、春の訪れを感じる時、私たちは単純にカレンダーの日付だけを見ているわけではありません。「最近、暖かい日が続いているから、そろそろ桜が咲きそうだ」という誰もが経験する感覚。これこそが、脳内で行われている高度な「積分処理」の要約なのです。

 「今日が暖かい」という一過性の情報ではなく、「暖かい日が続いている」という過去からの変化の「蓄積」に、私たちの体感は反応しています。

なぜ「知識」と「実感」が結びつかないのか

 温度やエネルギーのような連続的な変化は、リンゴの数を数えるように目に見える形では積み上がりません。

  • 微分的な視点:「今日、急に25度になった」という一瞬の数値
  • 積分的な視点:「ここ数週間で、これだけの熱量が溜まった」という目には見えない蓄積

 私たちは、この「見えない積み重なった量」を、これまでの経験から「そろそろ」という直感として読み取っています。この「直感」というブラックボックスをデータサイエンスの言葉で解き明かすと、それが「積分」という名になる、ただそれだけのことなのです。

 筆者も「積算温度」という言葉を知識として知ったのは家庭菜園を始めてからでした。しかし、正確な計算をしなくとも、「去年と比べてどうか」という体感だけで、収穫の時期は大まかに分かります。私たちはこうした豊かな「体感としての積分」をすでに持っているがゆえに、その背後にある数理的な意味には意識を向ける必要がなかったのかもしれません。

データ分析における「積分」とは

 数学における積分は、関数を限りなく細かく刻んでその面積を求める精緻な概念です。しかし、実際のデータ(気温、売上、センサー値など)は連続的ではなく、飛び飛びの数値(離散値)として存在します。そのため、データにおける積分の実体は、極めてシンプルな「単なる足し算」として表現できます。

図1:数値積分の基本式
図1:数値積分の基本式

 これをもっと簡単にすると、リスト1のようになります。

[リスト1]プログラムが実行している積分計算
let S = 0;
for(let x = 0; x < n; x++){
    S += f(x) * dt;
}

 今の値と、その前までの合計値を足す。この素朴な蓄積こそが、データサイエンスにおける積分の実体です。あまりに単純なため、私たちはそれを「積分」と呼ぶことすら忘れ、単なる「合計」として片付けてしまいがちです。

 しかし、この「ただの足し算」を意識的に積分の本質部分と見ることができれば、微分(変化)だけでは捉えきれなかった「確定した事実」が見えてきます。

次のページ
積分(累積和)によるトレンドの可視化

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この記事の著者

WINGSプロジェクト 小林 昌弘(コバヤシ マサヒロ)

WINGSプロジェクトについて>有限会社 WINGSプロジェクトが運営する、テクニカル執筆コミュニティ(代表 山田祥寛...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山田 祥寛(ヤマダ ヨシヒロ)

静岡県榛原町生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わるが、2003年4月に念願かなってフリーライターに転身。Microsoft MVP for Visual Studio and Development Technologies。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」代表。主な著書に「独習シリーズ(Java・C#・Python・PHP・Ruby・JSP&サーブレットなど)」「速習シリーズ(ASP.NET Core・Vue.js・React・TypeScript・ECMAScript、Laravelなど)」「改訂3版JavaScript本格入門」「これからはじめるReact実践入門」「はじめてのAndroidアプリ開発 Kotlin編 」他、著書多数

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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