はじめに
本連載では、PHP上で動作するアプリケーションフレームワークであるZend Frameworkについて紹介していきます。前回まで、Zend FrameworkのMVCの中核となるZend_Controllerについて解説してきました。第6回目となる今回は、PHPとリレーショナルデータベースの基本を知っている方向けに、Zend_Dbコンポーネントを用いたデータベースアクセス、その基本的な使い方を取り上げます。
対象読者
PHPの基本構文は一通り理解しているが、フレームワークを利用したことはないという方を対象としています。
これまでの記事
- Zend Framework入門(1):フレームワークの全体像とインストール
- Zend Framework入門(2):Hello World!アプリケーションの作成
- Zend Framework入門(3):PHPでMVCアプリケーションを構築しよう - Zend_Controller(前編) -
- Zend Framework入門(4):PHPでMVCアプリケーションを構築しよう - Zend_Controller(中編) -
- Zend Framework入門(5):PHPでMVCアプリケーションを構築しよう - Zend_Controller(後編) -
必要な環境
Zend Frameworkは、PHP 5.1.4以降とWebサーバがインストールされている環境で利用可能です。本稿ではWebサーバとしてApache 2.2を、データベースにMySQLを、OSにWindows XPを採用し、アプリケーションを作成していきます。以下に今回のアプリケーション作成/動作確認に用いた環境を示します(インストールにあたっては、その時どきにおける最新安定版の使用を推奨します)。各項目の詳細なインストール手順は、「サーバサイド技術の学び舎 - WINGS」より「サーバサイド環境構築設定手順」を参照ください。
- Windows XP SP2
- PHP 5.2.5
- Apache 2.2.6
- MySQL 5.0.51a Community Edition
LinuxやFreeBSDなどUNIX系OSを使用している方もコマンドはほぼ一緒ですので、パスなどは適宜読み替えてください。
データベース抽象化レイヤとは
データベース抽象化レイヤは図のようにアプリケーションとDBMSの間に入り、DBMSによる違いを意識せずにアプリケーションを作成できるようにするものです。今回取り上げるZend_Dbもデータベース抽象化レイヤの一種です。
Zend_Dbのほかにもさまざまなデータベース抽象化レイヤがあります。代表的なものをあげておきます。
名称 | 特徴 |
PDO | PHP 5.1以降にバンドルされており、動作が高速 |
PEAR::DB | 使用例が多く、書籍などのサンプルが豊富 |
PEAR::MDB2 | PEAR::DBの後継版 |
AdoDB | MicrosoftのADOに使い方が似ており、動作が高速 |
Zend_Dbについて
Zend_Dbはデータベースにアクセスするために便利なクラス群で構成されています。主要なクラスを表にまとめます。
クラス | 概要 |
Zend_Db_Adapter_Abstract | データベースにアクセスし、各種操作を行うアダプタの抽象クラス |
Zend_Db_Statement | SQL文を保持しておくためのクラス |
Zend_Db_Profiler | SQL実行の所要時間を調べるクラス |
Zend_Db_Select | SELECT文を、FROM句やWHERE句などを追加しながら組み立てるクラス |
Zend_Db_Table | テーブルに対応するクラスを作るための抽象クラス |
Zend_Db_Row | テーブルの行に相当するクラス |
Zend_Db_Rowset | 行の集合に相当するクラス |
今回は以下のクラスを使います。
- Zend_Db_Adapter_Pdo_Mysql(Zend_Db_Adapter_Abstractのサブクラス)
- Zend_Db_Statement
- Zend_Db_Select
- Zend_Db_Profiler
この中でも、MySQL用アダプタクラスZend_Db_Adapter_Pdo_Mysqlが中心となります。アダプタはZend_Dbによるデータベース抽象化の中心的な役割を果たすもので、DBMSの違いを吸収してデータベースへの接続や検索、更新といった操作を行います。
Zend_DbにはMySQL用の他にも何種類ものDBMS用のアダプタが用意されているので、表にまとめます。
DBMS | モジュール | アダプタクラス |
MySQL | Zend/Db/Adapter/Pdo/Mysql.php | Zend_Db_Adapter_Pdo_Mysql |
DB2 | Zend/Db/Adapter/Pdo/Ibm.php | Zend_Db_Adapter_Pdo_Ibm |
SQL Server | Zend/Db/Adapter/Pdo/Mssql.php | Zend_Db_Adapter_Pdo_Mssql |
Oracle | Zend/Db/Adapter/Pdo/Oci.php | Zend_Db_Adapter_Pdo_Oci |
PostgreSQL | Zend/Db/Adapter/Pdo/Pgsql.php | Zend_Db_Adapter_Pdo_Pgsql |
SQLite | Zend/Db/Adapter/Pdo/Sqlite.php | Zend_Db_Adapter_Pdo_Sqlite |
これらのアダプタを利用するためには、DBMS用のPDOドライバを利用できるようにしておく必要があります。MySQL用アダプタを利用する場合は、php.iniの中の以下2行を有効にします。
extension=php_pdo.dll extension=php_pdo_mysql.dll
なお今回示すサンプルソースはすべて、index.phpをフロントコントローラとするための.htaccessの設定を使用しません。