はじめに
本連載では、PHP上で動作するアプリケーションフレームワークであるZend Frameworkについて紹介しています。今回はZend FrameworkのMVCアプリケーションのための単体テストを作成するためのコンポーネント、Zend_Testについて紹介します。
単体テストはシステムのテストの方式の1つで、アプリケーションが提供する機能をテスト可能な最小単位(通常はメソッド)に分離し、その最小単位ごとにテストを行います。細かい単位でテストを記述するため、テストの漏れが発生しにくいといったメリットがある一方で、細かい単位での入出力を記述する必要があるため、テストを記述する手間が増える傾向があります。
例えばZend FrameworkのMVC環境で、1つのアクション単位でテストを行うとします。このときはアクションの入力はリクエストオブジェクトで出力はレスポンスオブジェクトとなります。このリクエストやレスポンスはMVC環境が自動的に処理するものなので、テストを記述するために手動で作成や検査を行うのには向いていません。
Zend_Testコンポーネントは、このようなMVC環境を利用したアプリケーションのテスト記述を支援します。リクエストも通常のHTTPのリクエストのように記述でき、レスポンスも出力されるHTMLファイルに対する条件として記述します。
今回は紹介する内容は大きく2つに分かれます。まず最初にZend_Testを利用するための準備について説明します。次に、テスト駆動的にアプリケーションを記述していく例にして、実際にZend_Testを利用する方法について説明します。
対象読者
PHPの基本構文やZend FrameworkのMVC環境の簡単な利用方法は一通り理解しているが、フレームワークを利用したことはないという方を対象としています。
必要な環境
Zend FrameworkはPHP 5.2.4以降とWebサーバがインストールされている環境で利用可能です。本稿ではWebサーバとしてApache 2.2を、OSにWindows XPを採用し、アプリケーションを作成していきます。
以下に、今回アプリケーション作成/動作確認に用いた環境を示します(インストールにあたっては最新安定版の使用を推奨します)。各項目の詳細なインストール手順は、「サーバサイド技術の学び舎 - WINGS」より「サーバサイド環境構築設定手順」を参照ください。
- Windows XP SP3
- PHP 5.3.5
- Apache 2.2.17
LinuxやFreeBSDなどUNIX系OSをお使いの方もコマンドはほぼ一緒なので、パスなどは適宜読み替えてください。
Zend_Testについて
Zend_TestコンポーネントはPHPUnitと呼ばれる単体テストフレームワークの上に構築されています。例えば、テストを具体的に記述するためのクラスであるZend_Test_PHPUnit_ControllerTestCaseは、PHPUnitのクラスであるPHPUnit_Framework_TestCaseを継承したものになっています。
このPHPUnit自体は強力な単体テストフレームワークである上に、Zend Frameworkとの親和性も十分高いのですが、Zend_Testコンポーネントを利用すれば、更に簡単にMVC環境を利用したアプリケーションのための単体テストが記述できるようになります。
なお、今回の記事では単純なアプリケーションを対象に、テスト駆動的な方法で開発する手順について解説します。解説の流れは次のようになります。
- PHPUnitのインストール
- Zend Framework MVC環境の設定
- テストを実行するための準備
- テストの記述と実行
PEARを利用してPHPUnitのインストールを行います
テストを実行する対象であるMVC環境の構築と設定を行います
PHPUnitの起動方法などについての設定を行います
実際にテストを記述し、PHPUnitを利用して実行します
それでは、次ページから準備を始めましょう。
今回のサンプルでは、アプリケーション本体のコードより先にテストから記述しています。これもある意味テストによって駆動されている開発ですが、テスト駆動開発はもう狭い意味の言葉で、以下の3つのサイクルでアプリケーションを開発する手法を指します。
- 最初にテストを書く。なお、この時点アプリケーションのコードはできていないので、このテストは失敗しなければならない。
- このテストを最低限通るようなコードを記述する。
- できたコードの最適化や整理(リファクタリング)を行う。
テスト駆動開発では、最初にテストを記述しているので、コードの記述の段階もリファクタリングの段階も記述ミスを恐れずに書くことがでます。一方で、テストを記述しにくいアプリケーションの開発には向いていない、といった特徴もあります。