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CodeZine(コードジン) DeveloperZine(デベロッパージン)- エンジニアの意思決定を支える技術情報メディア ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

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このままでいいのかとざわめく心に問いかける 壁にぶつかるエンジニアに届けたいこの思い

 忙しい。やることは多い。学ぶべきことも増え続ける。それなのに、思うように前へ進めている実感が持てない。そんな感覚を抱えながら働いている人は、少なくないのではないでしょうか。そういった感覚は、じわじわと私たちを消耗させ、日々の活力を奪っていきます。そこで重要となってくるのが、「セルフマネジメント(自己管理)」です。セルフマネジメントについて学びたい方におすすめする1冊は『エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術』です。2度目の重版である3刷を記念して第3回目の抜粋記事を準備しました。今回はその中から、「4-1 成長し続ける人の共通点」を抜粋してお届けします。

第1回目の抜粋(2-1 余白の価値)はコチラ!

 

第2回目の抜粋(3-1 ゴキゲンでいること)はコチラ!

 

エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

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エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

著:小田中 育生
発売日:2026年06月24日(水)
定価:2,948円(本体2,680円+税10%)

本書について

エンジニアほど多くのストレスに晒される職種はありません。本書は、そんなエンジニアに向けて、「負担を軽減し、よりよく働くための自己管理術」を解説した書籍です。「モチベーション」「時間管理」といったテーマごとに、自己管理のための自分と向き合い方、課題・問題との付き合い方・解決法を紹介します。

 エンジニアにせよマネージャーにせよ、はじめてその役割に飛び込んだ時には勝手がわからず、様々な失敗を経験します。そして失敗を乗り越え、人は成長していきます。エンジニアとしてキャリアをスタートし、数年経ったタイミングで、1年目に自分自身が書いたコードを読み返してみたことはあるでしょうか。おそらく「未熟なコードで、恥ずかしい」と感じたことでしょう。それはみなさんがキャリアを築く中で、しっかりとスキルを磨き込んでいったというたしかな証拠です。

 キャリアを長く続けていると、時に立ち止まったような感覚をもつ瞬間があります。それは「このままでいいのだろうか」という不安として訪れ、心をざわつかせます。成果は出ているのに満たされない。努力していても心が追いつかない。

 成長とは、右肩上がりの直線ではなく、時に停滞や揺り戻しを繰り返しながら、少しずつ高みに登っていく過程です。成果は出しているのに手応えを感じられない、努力を重ねても以前ほど伸びている実感がない。このような、学習や作業の進歩が一時的に停滞する状態を「プラトー状態(高原状態)」といいます。

成長が停滞するプラトー
成長が停滞するプラトー

 このプラトーは誰にでも訪れるものです。プラトーにはまり込んでしまい、そこで停滞するか、プラトーを乗り越え成長するか。それは自分次第です。山あり谷ありの学びの中で、長期的に成長し続けていくために必要な、「成長に向き合う姿勢」について見ていきましょう。

変化を能動的に捉える

 成長し続ける人は、環境に任せたり上司の指示を待つのではなく、「今自分にできることは何か」「この状況をどう活かせるか」と能動的に変化を起こす意識をもっています。たとえば、プロジェクトの中で新しい技術に触れる機会があれば、それを「自分の仕事範囲ではない」と線を引かず、興味を持って調べてみる。小さな試みが経験の幅を広げ、やがて大きな成長へとつながります。

学習の5段階を知る

 能動的に変化に飛び込んでいくとき、多くの人は「うまくいかない」という感覚を得るでしょう。心理学の一分野である「神経言語プログラミング(NLP:Neuro-Linguistic Programming)」[1]によると、学習には5段階あり、最初は「知らないしできない」からはじまり、そこからステップアップしていくとされています。

 [1]

 https://www.nlpjapan.org/nlp.html

 セラピーやカウンセリングの現場から生まれ、医療の現場やビジネス、教育の場、家庭や育児など様々な分野で活用され続けている

学習の5段階
学習の5段階

 ※

 https://www.nlp.co.jp/000015.php の図をもとに作成

 この「新しいことに取り組んだら、最初はうまくいかない」ということは、誰しも大なり小なり経験しており、腑に落ちるものです。しかし、最初の難しさを越えて順調に進み始めても、ある時期から伸びが頭打ちになり、思うように進まなくなることがあります。「最初はそれなりにうまくいっていたのに、だんだんうまくいかなくなる」現象。まさに、さきほど触れたプラトー現象が発生している状況です。これは、学習により知っている領域が拡大したからこそ起こる現象です。なぜそのような現象が起こるのでしょうか。ここからは、その理由を「学習が進むほど『知らないこと』が見えてくる」という変化から整理していきます。

学習することで「知らないこと」が増える

 私たちは、何かを学び始めるとき、「◯◯を学びたい」と漠然とした期待を抱きます。そして実際に学びを始めると、思いのほか多くのことが理解できるようになり、「自分でもできそうだ」と感じる瞬間があります。学習の初期段階には、たしかに手応えがあります。

 しかし、その先に進もうとしたとき、多くの人が同じ壁にぶつかります。それは「知識としてはわかったのに、実際の場面では再現できない」という壁です。言い換えると、理解を行動に変えるところでつまずくのです。

 この壁がどのようなものか理解するのに役立つのが、さきほど紹介した「学習の5段階」です。たとえば「知っていてもできない」から「考えるとできる」に進むには、知識を増やすだけではなく、その知識への理解を深め、自分の中で整理しなおす必要があります。「考えるとできる」から「考えなくてもできる」へと変化するためには、試行を重ねて身体知化し、考えなくても手が動く状態になることが求められます。

 このように、次のステップへ行くためには1つ上のレベルに求められる能力を獲得しなければいけない、というスキルギャップが立ちはだかります。そして、そのギャップをなかなか埋められないとき、私たちの自信は揺れ動きます。そんな、スキル習熟の旅路で訪れる自信の浮き沈みを示しているのが、「ダニング=クルーガー効果[2]です。

 [2]

 Kruger, J., & Dunning, D. (1999). Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one’s ownincompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121–1134.

自己評価と経験・学習量の関係(概念図)
自己評価と経験・学習量の関係(概念図)

 ダニング=クルーガー効果は、「ある領域で経験や技能が十分でないときほど、自分の理解度や出来栄えを正確に見積もりにくく、結果として過大評価しやすい」という認知バイアスです。不足に気づくためにも、その領域で「良し悪し」を判断する知識・スキルが必要になるためです。

 プログラミングを例にしてみましょう。学び始めは、「プログラミングをするとソフトウェアをつくれる」という、ごく表面的な理解からスタートします。初心者向けのWeb記事や入門書に沿ってコードを書いてみると、短いスクリプトや簡単なアプリが動くようになります。思った通りの画面が表示され、エラーも出ず、目的の動作をする。そのとき、私たちは「なるほど、プログラミングって意外と簡単だ」と感じるものです。この段階は、まだ全体の難しさや落とし穴が見えていないために、手応えが自信につながりやすい局面だといえます。

 ところが、「データを保存したい」「別の画面に遷移したい」「人に使ってもらえるようにしたい」といった、一歩踏み込んだ要件を実装しようとすると、突然エラーが出たり、思い通りに動かなくなったりします。

 原因を調べるうちに、変数のスコープ、非同期処理、例外処理、セキュリティなど、今まで意識していなかった概念が次々と登場します。そして、「自分はまだ何も知らなかった、知っているのはごく一部の領域だった」ということに気がつくのです[3]

 [3]

 ここ最近ではClaude Codeなどで高品質なAIコーディングが行えるため、ある程度踏み込んでもなかなか壁にぶつからず、「知らない領域がある」と気づく機会が減少している傾向があります

 この局面では、学べば学ぶほど「知らないこと」が見えてくるため、自己評価が揺れやすくなります。知識が増えた分だけ、理解できていない領域の広さがわかるようになり、かつては見えていなかった未知の輪郭が、知ることによって浮かび上がってくるのです。ここで多くの人は戸惑います。学んでいるのに自信を失い、「自分には向いていない」と感じることさえあります。

 しかし、これこそが学びが次の段階に入ったサインでもあります。スポーツ選手がフォームを修正すると一時的にスコアが落ちるように、古いパターンを壊す過程ではパフォーマンスが揺らぎます。この不安定さを避けずに受け入れ、試行錯誤とフィードバックを重ねることで、少しずつ「何がわかっていて、何がわかっていないか」を切り分けられるようになります。

 さらに経験を重ね、学びを実務の中で活かすようになると、また新しい「知らないこと」に出会います。仕事としてコードを書くようになると、動くプログラムを書くことよりも、「ほかの人が読めるコードを書くこと」「チームで保守できる仕組みをつくること」「障害を起こさない運用を設計すること」など、全く別の観点が必要になることに気づきます。設計思想、レビュー文化、テスト自動化、ドキュメンテーション、さらにはコミュニケーション能力……。そういったものが大切であるということに気づいていきます。

 こうした経験を通して、自己評価は少しずつ現実に近づきます。「自分の理解はまだ限られている」という前提に立ち、慎重に考え、他者の意見に耳を傾ける。その姿勢が、結果として学びを前に進めていくのです。

知らないことが増えることを恐れない

 変化し続けること、新しいことを学び続けること。これは、常に「知らないこと」が増え続けていくということでもあります。ダニング=クルーガー効果が示すように、「この分野についてはある程度理解したな」と思ったところから先に進むと、「まだまだ知らないこと、できないことがたくさんある」ということに気がついていきます。知らないと知らない、無知の無知の状態から、知らないと知っている、無知の知の状態へと移っていくのです。

ものごとへの理解を深めることで「知らない」と知っている領域が広がる
ものごとへの理解を深めることで「知らない」と知っている領域が広がる

 そして、この現象は新しい分野へ飛び込むたびに発生します。たとえば、エンジニアがはじめてマネージャーという役割を担うことになったとき、そこにはこれまでとは全く異なった景色が広がっています。チームビルディングやタスク管理、チーム外との交通整理。ある程度慣れてきたと思ったら、中長期的な戦略の立案やステークホルダー・マネジメントなどより難易度の高いミッションが待ち受けている。当然、最初からうまくこなせるはずもなく、ある一定の挫折感を味わいながら、それでも前に進んでいくことになります。

 人は、幼少期を経て大人になるまでの間に、数え切れないほど新しいことに飛び込み、そして失敗を経験しています。そのときの失敗した苦い思い出が、知らず知らずのうちに新しいことへチャレンジする足を鈍らせてしまいます。

 しかし、成長し続ける、変化し続ける人は、思わず足がすくんでしまうような場面でも勇気をもって飛び込んでいきます。自分が一番下手な存在でいる場所[4]に常に身を置く人は、意図的に伸びしろしかない状況をつくります。

 [4]

 『情熱プログラマー』(2010年、Chad Fowler(著)、でびあんぐる(翻訳)、オーム社)

 この「知的な謙虚さ」があれば、他者の意見や新しい情報に対してオープンでいられます。「自分はまだ知らないことがある」という前提に立つことで、年齢や役職にかかわらず、あらゆる人やものごとから学ぶ姿勢が生まれるのです。逆に、成長が止まる人は「自分はもう十分に知っている」という慢心や、新しいことを学ぶ過程で生まれる失敗への忌避感から、新しい情報に耳を閉ざしがちです。知的謙虚さを持つ人は、他者の知恵を自分の学びとして取り込む柔軟さを持っています

 チームで働くうえでも、「知らない」といえる勇気が信頼を生みます。わからないことを率直に共有し合えるチームほど、学び合う文化が育ち、全員が成長の速度を上げていきます。これは心理的安全性の土壌そのものでもあります。あなたが学ぼうとする姿勢、そしてそのための謙虚な心持ちは、あなたが所属する場にとっても、よい効果をもたらすものなのです。

知的謙虚さを示す行動の例
場面 行動
コードレビュー 自分と違う意見が出たときに、すぐに反論するのではなくいったん受け止め、「そのアプローチをとることによってどのようなメリットがあるのか知りたいです!」と尋ねる
ペアプログラミング 相手が知らないショートカットキーやコマンドを使用していたら、素直に「それどうやるんですか?」と聞いてみる
ミーティング わからなかった専門用語について、「すみません、その言葉の意味を教えてください」と勇気をもって発言する
エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

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エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

著:小田中 育生
発売日:2026年06月24日(水)
定価:2,948円(本体2,680円+税10%)

本書について

エンジニアほど多くのストレスに晒される職種はありません。本書は、そんなエンジニアに向けて、「負担を軽減し、よりよく働くための自己管理術」を解説した書籍です。「モチベーション」「時間管理」といったテーマごとに、自己管理のための自分と向き合い方、課題・問題との付き合い方・解決法を紹介します。

日常的に学ぶ

学びの場へと足を運ぶ

 学び続ける人の多くは、意識的に学びの場へと足を運んでいます。セミナーや研修のような場、技術コミュニティのように学ぶ意欲が高い人々が集まる場、様々なところに学習の機会があります。特にコミュニティのような場では、体系化された知識だけでなく、生きた情報や熱量が溢れています。こういったイベントは、以前は都心に集中しがちでしたが、ここ最近は地方コミュニティの動きが活発になっていたり、オンラインやハイブリッドで開催されるものが増えていたりと、居住地によらず学びの場に参加しやすい土壌ができつつあります。

 彼らがそうした場に参加するのは、単に情報を受け取るためだけではありません。同じ関心を持つ仲間とつながり、議論を交わすことで、自分の考えを相対化し、新たな視点を得るためでもあります。

インプットから学ぶ

 書籍、Web記事、Podcast、動画など。今の時代、学ぼうと思えばいくらでもコンテンツがあります。体系的にまとめられていたり、「理解してもらうこと」を主眼に置いてつくられたりするコンテンツは学びたい対象への理解を助けてくれます。筆者は本を読むのが好きなのですが、自分が門外漢の分野について学ぶときにはまず入門書にあたり、その入門書が引用している書籍をたどって理解を深める……というアプローチをとることが多いです。

 学ぶ人は、ちょっとしたスキマ時間や休日を活用してコツコツとインプットをしています。

アウトプットを通して学ぶ

 ブログ記事の執筆や技術イベントへの登壇など、アウトプットは優れた学習法です。自分の中に蓄積されているものの、まだ言語化されていない知識や経験(暗黙知)を整理し体系化することで、形式知として他者に伝えられる形になります。この過程で、自分が理解できていることと理解が足りない部分が明確になり、次に学ぶべき方向も見えてきます。深く強固な学びはこうして得られるのです。

日常に学びを溶け込ませる

 学びの機会は日常の中にもあります。モブプログラミング中にほかのメンバーが見せた何気ないショートカットキーの使い方、社内で小耳に挟んだほかのチームの取り組み。このようなちょっとした気づきをその場限りのものにせず、メモに書き留めたり、Slackで小さく発信したりすることで、小さな学びが血肉となっていきます。学びを日常に溶け込ませるコツは、「完璧な学びの時間」を期待しないことです。通勤電車での10分、ミーティング前の5分でもかまいません。小さな積み重ねは、ある日突然自分の中でつながります。それは「点が線になる」、そして「線が面になる瞬間」です。成長とは、積み上げた点が、ある日ふと意味をもって結びつくプロセスなのです。

エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

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エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

著:小田中 育生
発売日:2026年06月24日(水)
定価:2,948円(本体2,680円+税10%)

本書について

エンジニアほど多くのストレスに晒される職種はありません。本書は、そんなエンジニアに向けて、「負担を軽減し、よりよく働くための自己管理術」を解説した書籍です。「モチベーション」「時間管理」といったテーマごとに、自己管理のための自分と向き合い方、課題・問題との付き合い方・解決法を紹介します。

内省で自分を見つめなおす

内省で経験をふりかえる

 ここでの内省(リフレクション)とは、自分の経験をふりかえり、意味づけして次に活かす行為です。単なる反省ではなく、自らの経験を言葉にし、つむいでいく「物語化」といえます。出来事を物語として語り直すことで、単なる失敗談が「どのように学びにつながったか」を俯瞰する枠組みになります。これにより客観視しやすくなり、自分の成長物語として再解釈できるのです。

 物語といっても、何も小説のような本格的な文章でまとめる必要はありません(もちろん、それができるしやりたい! という方は、ぜひトライしてください!)。箇条書きであっても、いや、もっと乱雑なメモ書きであっても、「そのとき何を知ったか?」「何を知らないと知ったか?」「どう感じたか?」といったあなた自身の物語は、あなた自身の学びのストーリーラインを形づくるものとなるでしょう。

習慣的なふりかえり

 「ふりかえり」は学習の中でも最も重要なプロセスの一つです。インプットした知識や経験したことを意味づけし自分の中に落とし込むことで、知識と経験は血肉の通った知恵に昇華されます。

 ふりかえりという言葉には、現実に起きたこととそこからの改善に目を向けた「レトロスペクティブ」、個人の内面にある発見を言葉にしていく「リフレクション」が含まれます。ここで扱うふりかえりは後者、リフレクションです。

 たとえば、以下のような視点でふりかえると、学びを多角的に捉えることができます。

  • 何を新しく学んだか
  • これまでの知識とどうつながるか
  • 何が想定外だったか
  • やりやすかったことは何か
  • やりづらかったことは何か
  • 明日から変えるとしたら、何をするか

 こうした問いを日々、自分自身に問いかけることで、断片的な情報がこれまでの自分の知識・経験と接続していきます。よい問いを立てる力は、日々のふりかえりで意識的に問うことで磨かれます。たとえば、「どのように考えれば別の選択肢が見えるか」「なぜそう感じたのか」といった問いを自分自身や他者に投げかける習慣が役立ちます。

経験学習モデル

 組織行動学者のデヴィッド・コルブが提唱する「経験学習モデル」[5]は経験から学ぶプロセスを理論化したものです。

 [5]

 Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development.

コルブの経験学習モデル
コルブの経験学習モデル

 たとえば、開発しているシステムが本番環境でクラッシュしてしまったとします。こういった場面では、可及的速やかにシステムを復旧させることが最優先ですが、実は絶好の学びの機会でもあります。

  • 経験:本番環境で特定の操作をするとシステムがクラッシュするという報告を受け、調査を開始した。ログを追い、NullPointerExceptionが発生している箇所を特定し、修正した
  • 省察:なぜこのバグが発生したのか、なぜテストで検出できなかったのか、検証環境で発生しなかったのはなぜか。事象をふりかえっていく
  • 概念化:常にオブジェクトが返却される想定だった外部APIが、実際にはNullを返却してくることがあるとわかった。外部APIを使用する場合、その挙動はこちら側で完全にコントロールすることはできないので、必ずNullチェック・型チェックをするべきと判断した
  • 実践:Nullチェックを追加。また、Nullを返却するテストを作成し、正しくエラーハンドリングしバグが再発しないことを確認する。これをバグが発生したところだけでなく、外部APIを利用している箇所すべてに適用する

 上記の例は、本番環境で問題が発生しているのでいってしまえば失敗の経験です。しかし、こういった失敗からも学ぶことができるのです。いや、失敗だからこそ大きな学びが得られるといってよいでしょう。リフレクションを続ける人は、自分の経験を「再利用可能な資産」に変えることができる人です。

思い通りにいかないときのふりかえり

 成長の停滞期には、「前よりもがんばっているのに結果が出ない」と感じることがあります。これは実際は能力が落ちているのではなく、これまでのやり方では乗り越えられない段階に入ったサインです。

 うまくいっていないときのふりかえりは、「自分ができなかったこと」に着目してしまいがちです。そして、停滞期にはうまくいかない状況がある程度続きがちなので、「できなかったこと」と向き合う場面が増え、気持ちが落ち込んだり、「やっぱり自分には無理なのではないか」という諦念を呼び起こしたりしてしまいます。

 しかし、停滞期にこそ大切なのは、「うまくいかなかったこと」そのものを責めるのではなく、なぜそうなったのかを丁寧に観察することです。ふりかえりの目的は、過去を裁くことではなく、次に進むためのヒントを見つけることにあります。

 このとき、自分が抱えている負の感情から目をそらさず、あえて感情を切り離さずに記録してみましょう。「悔しい」「焦っていた」「周囲の期待を気にしていた」。そうした気持ちを、分析的にではなく、そのまま言葉にしてみてください。感情を記録することで、事実と感情を区別できるようになります。それは、次の一歩を冷静に考えるための第一歩です。

 次に、できなかったことではなく、試したことに焦点を当てていきます。停滞期に陥ると、頭の中が「失敗リスト」で埋め尽くされがちです。しかし、視点を変えて「自分はこの期間に何を試したか」を書き出してみましょう。うまくいかなかった挑戦も、貴重な実験結果です。「どんな仮説を立て、どんな条件で試したのか」をふりかえることで、次はどのように行動していくとよいのかが見えてきます。

 また、停滞しているように見えても、そこには必ず変化があります。たとえば、「以前よりも失敗の原因を早く特定できるようになった」「相談できる相手が増えた」などです。小さな変化を見つける力が、再び前を向くエネルギーになります。この「小さな変化を見つける」ことの重要性は、次項で解説していきます。

エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

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著:小田中 育生
発売日:2026年06月24日(水)
定価:2,948円(本体2,680円+税10%)

本書について

エンジニアほど多くのストレスに晒される職種はありません。本書は、そんなエンジニアに向けて、「負担を軽減し、よりよく働くための自己管理術」を解説した書籍です。「モチベーション」「時間管理」といったテーマごとに、自己管理のための自分と向き合い方、課題・問題との付き合い方・解決法を紹介します。

成果ではなく変化に着目する

 ものごとに取り組むうえで、成果は重要です。とはいえ、新しいことにチャレンジしている段階では、なかなか成果が生み出せないこともあります。このとき大切なのが、成果が出ていないことではなく、「昨日の自分と比べて何が変化したのか」に着目することです。

小さな変化を見逃さない

 では、どのように変化を見つけるとよいのでしょうか。実は、私たちの日々の暮らしや仕事の中には、たくさんの「小さな変化」が隠れています。

 これまではほかのメンバーにまかせきりだったリポジトリだが、プルリクエストに対して一言コメントすることができた。一発で思い通りのコードを生成できるプロンプトが書けた。ブログのview数がいつもより多かった。自分自身にとって、「できるようになったこと」はすでに当たり前のものになっているため、昨日できなかったことが今日できるようになったことには意外と気づかないものです。しかし、こうした小さな変化を見逃すことなく、自身の成長として捉えることで、自己効力感が育まれます。ここまでに紹介したふりかえりや日々のちょっとしたメモが、自分の小さな差分に気づくヒントとなってくれます。

変化をモチベーションにつなげる

 変化を見つける力は、いうなればモチベーションを自給自足する力です。他者からの評価ではなく、自分で自分自身を評価することで、ちょっとした変化さえも意味づけして成長の原動力にすることができます。また、さきほど「成果がなかなか生み出せない」と書きましたが、小さい単位でみると小さな成果は出ているものです。

  • プロダクト全体はできあがっていないかもしれないが、少なくともこの小さな機能は動くようになっている
  • テストコードが実装され、これから実装するコードが正しく動作しているか確認できるようになっている
  • メンバーとの定期1on1をセットしたので、成長を後押しする対話を実践する準備ができた

 小さな成果から、次の小さな成果へ。ベイビーステップで一歩一歩進むことで、変化そのものをモチベーションにつなげていくことができます。

変化を記録する

 変化を可視化するもう一つの方法は、過去の自分の記録を残すことです。さきほど「ふりかえりやちょっとしたメモから変化を捉える」と書きましたが、ここではさらに一歩踏み込んで、明確に変化を記録する目的意識をもって文書化していきます。

  • 今日は何をした?
  • 今日新しくやってみたことは?
  • 今日新しくできるようになったことは?
  • どうしてそれができるようになった?

 この小さな記録を、日々コツコツと溜めていきます。半年前のふりかえりを読み返してみると、「あのとき悩んでいたことは、もう当たり前にできている」と気づく瞬間があります。成長とは「変化を認識する力」でもあるのです。

変化を楽しめる者こそが成長する

 成長し続ける人の共通点は、特別な才能でも、恵まれた環境でもありません。それは、「変化を恐れず、自分を見つめ直し、学びを日常化する姿勢」です。

 変化は誰にとっても怖いものですが、小さな一歩から始めることで不安をやわらげられます。いきなり大きな挑戦をするのではなく、まずは身近な学びの機会に参加することから始めてみましょう。

 自らを成長させる学びにゴールはありません。やりきったな、よくまあここまで俺たち来たもんだな、と一息ついて顔を上げると、また新しい道が目の前に広がっているものです。日々の選択と学びの積み重ねによって、今この瞬間にも形づくられています。せっかくなら、変化を楽しんで成長し続けていきたいものです。

 ものごとを学び、熟達するための道のりは、決して平坦なものではありません。春に草花が芽吹いていくように新しい始まりもあれば、プラトーが訪れ、冬ごもりをするように地道に経験を積む時期もあります。

 私たちは、とかく草花が芽吹く春がごとく、ものごとが順調に進むことこそ正解だと捉えがちです。だからこそ、自分自身が停滞しているときには焦りを感じてしまうものです。しかし、どの季節にも意味があることと同様、私たちが学ぶどの時期にも意味があります。

 羅針盤を片手に、自分のペースで歩み続けてください。その一歩一歩が糧となり、あなたのスキルを高みへと誘っていきます。

 3刷を記念して、抜粋記事の第3弾をお届けしました。続きは書籍を確認いただけますと幸いです。ぜひお近くの書店でお手に取ってみてください。

エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術
 

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著:小田中 育生
発売日:2026年06月24日(水)
定価:2,948円(本体2,680円+税10%)

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エンジニアほど多くのストレスに晒される職種はありません。本書は、そんなエンジニアに向けて、「負担を軽減し、よりよく働くための自己管理術」を解説した書籍です。「モチベーション」「時間管理」といったテーマごとに、自己管理のための自分と向き合い方、課題・問題との付き合い方・解決法を紹介します。

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