コアなセッションが続々登場
ここまではソフトウェア開発者が全般的に興味を持ちそうな総論的なセッションが行われたが、ここからは時間が深くなるにつれて内容もより深く、コアな議論に突入していった。
「LLでアート」のセッションでは、メディアアート・インタラクティブデザイン作品を手がける増田一太郎氏(メタファー)と真鍋大度氏(ライゾマティクス)が、実演やライブコーディングも多数織り交ぜながら、オープンソースのメディアアート製作環境Processingや、Cycling'74社の製品Max/MSP/Jitterを利用した、ライトウェイト言語によるプログラミングを駆使したインタラクティブ作品製作の魅力について語った。
Processingは、JavaをベースとしているためJava言語によるコーディングが可能だが、さらに増田氏の開発するライブコーディング環境「action-codeing」ではJRubyを利用してフロントエンドとしている。ライブコーディングの実演で、Rubyのコードを書くことでリアルタイムで作品が変化していく様子が会場の興味をひいていた。また、真鍋氏によるMaxの解説では、JavaScriptによるライブコーディングも可能だということが示された。
「キミならどう書く?」では、どう書く?orgを舞台に、与えられたお題をどれだけ短くあるいは変態的に実装できるかが競われた。1年に3回くらいしか見かけない機能や、何のためにあるのかわからない特殊変数、デフォルト動作の死角などなど、プログラミング言語それぞれの特徴やバッドノウハウを駆使した解答の数々に会場も大いに盛り上がった。また、こうした笑いを交えたアプローチによって、自分が利用していないプログラミング言語との壁が取り払われていく雰囲気も感じた。
続いての「古い言語、新しい言語」は、同じ「LL」でも「Low Level」の略でもあるという、この日もっとも深きところからのプレゼンとなった。主に「新しい」話題に時間を裂き、Web 2.0環境で「どこでも動く」基盤的な位置づけになりはじめたECMAScript(JavaScript)や、チーフアーキテクトのクリス・ラトナーがAppleに移ったことでiPhoneのコンパイラに採用された「LLVM(下層仮想マシン)」、その中間コードをFlash上で実行させてしまうアドビのFlashCCという技術によって、デバイスの制約から解放された自由なプログラミング開発環境が構築される未来像が紹介された。
日本のライトウェイトプログラマーの底力を見た
ここまででオープニングからすでに約9時間半が経過したが、会場の熱気は収まることなく、最後のプログラムであるライトニング・トークに突入。未来を感じさせる「アンダー30」の発表者のみによる新鮮なネタが、1時間にわたって矢継ぎ早に繰り出された。ここでもPerlやRubyといったおなじみのものから、Brainf*ckのようなジョーク的なものまで、非常に多様性に富んだプログラミング言語が登場し、またそういったマニアックな言語や実装が大きな笑いを取っていたのも印象的だった。
そのようなところに、発表者も参加者も共に、ひとつのプログラミング言語をただマスターするといった考えではなく、できるだけいろいろな言語や実装を話題を知りたいという知識への吸収欲がたいへん高いイベントだいうことがうかがえた。業務と密接に関連した実用的なセミナーではなく、趣味性の高いカンファレンスだからこそだろうが、そのようなイベントに千人近い聴衆が参加し(チケットの販売枚数としては1000枚を超えたそうである)、10時間近いセッションを満喫していくところに、日本のライトウェイトプログラマーの底力を見る思いがした。
エンディングでは来年の開催が早々と予告され、今年と同会場の「なかのZERO」において、2009年8月29日(土曜日)の予定。はたしてライトウェイト言語の奥深い世界がさらにどこまで広がりを見せるのか楽しみであり、来年に備えて(プログラミング言語への幅広い)知力と(長丁場に耐えうる)体力を鍛えておきたいと思い知らされる濃く充実した1日だった。