11時間に及んだ熱い発表
日本UNIXユーザ会(JUS)と各ライトウェイト言語ユーザー会の協力によって開催されるLLイベントは、2003年の「LL Saturday」に始まり今年で6回目となる。毎年趣向を凝らせた過剰なプログラムで知られ、夏に開催される“熱い”イベントとして多くの支持を集めてきた。はじめて千人規模となった今年も、Perl作者のラリー・ウォール氏による基調講演のほか、5つのパネルディスカッションに、LL系イベントではおなじみのライトニングトークと、午前10時から夜9時近くまで約11時間にもわたってが熱い発表が繰り広げられた。
Perl6はバベルの塔?
今年のテーマは、タイトルがあらわす通り「未来」。最初のパネルディスカッションでは「LLで未来を発明する」と題し、ポール・グレアム氏の有名な講演「百年の言語(The Hundred-Year Language)」を下敷きに、この日最初のプログラムでPerl6の拡張性について基調講演を行ったラリー・ウォール氏や、Rubyの作者であるまつもとゆきひろ氏らを交えて“100年後の言語”について論じられた。
2人のビッグネームを囲むパネラーには、東北大学でMinCaml(関数型プログラミング言語MLのオブジェクト指向的実装OCamlの教育用サブセット)を開発する住井英二郎氏、リトルウィングでYpsilon(関数型プログラミング言語LISPの方言であるSchemeの実装)を開発する藤田善勝氏、サイボウズ・ラボでMosh(同じくSchemeの実装)を開発するひげぽん氏と、数十年にわたり雌伏する関数型プログラミング言語畑の論客ばかりがなぜか集められた。
ひげぽん氏が2078年のプログラミング言語の大統一理論「すべてLISPだった」を予言するなどリラックスしたムードの中にも、ラリー氏が基調講演でプレゼンテーションしたPerl6の拡張性に対して、まつもと氏が「言語を定義するような機能をユーザーに開放すると、ひとりひとりが別々のDSL(ドメイン固有言語)を持つようになり、バベルの塔の再来という感じでコミュニケーションができなくなるのではないか」と問題提起したことは、100年よりもっと現実的な近未来のプログラミング環境において注目すべきポイントかもしれない。
食事休憩を挟んで、午後からは「サイコー?!フレームワーク」と題して、νガンダムやサザビーに搭載されたサイコミュ技術ではなく、ウェブアプリケーション開発のフレームワークについて再考するセッションが行われた。フレームワーク開発において、Ruby on Railsのように常に新規機能を導入して進化を続けるべきか、もっと安定を求めるべきかなどが話題となった。進化を求めると安定性の不安(Ruby on Railsの暗黒面)があり、会場にどちらかへの挙手を求めた際にも、どちらを取るか難しさをうかがわせた。