Delphi/C++Builder 2009の新機能
国際化サポート
今回の新バージョンで、IDEからコンパイラ、フレームワークに至る最大の変更点は、すべてに渡ってUnicodeをサポートしたことだ。例えば、ということで、Hodges氏は日本語文字列による識別子を定義してみせた。
procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject); var メッセージ: string; begin メッセージ := 'Delphi 2009へようこそ!'; ShowMessage(メッセージ); end;
IDE、コンパイラがUnicodeを識別し、その上に構築されているランタイムライブラリやコンポーネントフレームワークがUnicodeを標準文字列として扱う。もちろん従来からの互換性のためにANSI文字列も扱える。しかし、Delphi/C++Builderで新規にアプリケーションを作成する場合には、Javaなどと同じように外部とのインターフェースを除き、Unicodeによってすべて処理するという前提でプログラミングを行うのが推奨されるようだ。
そのほかに、ローカライゼーションツールが搭載され、ユーザーインターフェースの翻訳も効率的に行える。
多層データベースアプリケーションの開発
データベースアプリケーション開発では、Delphi/C++Builderの標準データベース接続アーキテクチャとなったdbExpressのアップデートのほか、多層アプリケーションフレームワークが強化された。
Delphi/C++Builderのデータベース開発の魅力は、コンポーネントによって、データベース接続、データの取得、編集、更新までをビジュアル設計中心で、わずかなコード量で実装できることだ。また、接続するデータベースを変更しても、コードへの影響が少ないポータビリティも魅力だ。
今回強化された、「DataSnap」という多層アプリケーションフレームワークは、このコンポーネント技術の延長線上にある。つまり、ビジュアル操作によって、C/S型のデータベースアプリケーションを多層型のアプリケーション構成に拡張可能なのだ。多層型にすることで、アプリケーション構成を柔軟に設計できるようになるため、例えばデータアクセス部分を従来のWindowsアプリケーションだけでなく、Webアプリケーションなどでも利用できる。
新しいコンポーネント
Delphi/C++Builderには、200以上のコンポーネントが搭載されている。これらのコンポーネントをマウス操作でフォームに配置すれば、すぐに使えるアプリケーションを作成できる。言い換えればコンポーネントの性能は生産性を左右する。
Delphi/C++Builder 2009には、新しいコンポーネントとして、TCategoryPanelGroup、TButtonedEdit、TLinkLabel、TBalloonHint、TRibbonControlが搭載されている。これらのコンポーネントは、Windowsの新しいユーザーインターフェースを簡単に実装できるように用意されているものだ。
コンポーネント | 説明 |
TCategoryPanelGroup | Outlookのようなカテゴリー分けされたパネル |
TButtonedEdit | 左右にボタンを持つことのできる編集ボックス |
TLinkLabel | リンク先URLを設定できるラベル |
TBalloonHint | バルーンヒントを表示するコンポーネント |
TRibbonControl | Office 2008スタイルのリボンコントロール |
また、既存のコンポーネントについては、Windows Vistaの新しいユーザーインターフェースに対応するなどの機能強化がなされている。強化されたコンポーネントとして、TButton、TEdit、TImageList、TTreeView、TListView、TProgressBarが紹介された。
コンポーネント | 主な強化点 |
TButton | イメージの配置、コマンドリンク、スプリットボタンスタイルなど |
TEdit | 入力文字を数字に限定、パスワードのキャラクター設定 |
TImageList | PNG形式をサポート |
TTreeView | 項目を開いたときに別のイメージを指定可能 |
TListView | Vistaのグループ機能をサポート |
TProgressBar | マーキーのサポート、Vista上で一時停止、停止ステータスをサポート |