組み込みプロセッサ&プラットホーム・ワークショップ2008開催
2008年4月18日、秋葉原コンベンションホールにて、CQ出版主催の「組み込みプロセッサ&プラットホーム・ワークショップ2008」が開催されました。今年で3回目となるこのワークショップは、テクノロジ・セミナーやベンダ・セッション、組み込み製品の展示など盛りだくさんの内容でした。その様子をレポートします。
当日はあいにくの豪雨。しかし、会場に入るとそこには既に長蛇の列ができていました。並んでいる皆さんのお目当ては、鈴木直利氏の基調講演。鈴木氏はJR東日本メカトロニクスの技術企画本部で、統括リーダーをしています。
今回の公演テーマは「Suicaシステムなどの駅務機器を支える組み込み技術」。改札機における組み込み技術の歴史は、1971年に磁気乗車券用の改札機が本格導入された際に搭載された、8ビットCPUと独自リアルタイムOSから始まりました。その後1991年ごろには16ビットCPU、マルチタスクOSになり、2000年には32ビットCPUとVXWorksが導入されました。そして、2007年のPASMO、SuicaによるICカード相互利用開始時には高性能32ビットCPU、VXWorksが搭載されるようになり、世界最大規模のICカードネットワークを支える技術へと発達しました。
SuicaやPasmoの処理は、タッチ基盤に判定ユニットを搭載した「改札機モジュール」が独立してIC処理を行うそうです。
この改札機モジュールに求められる処理性能は次の3つです。
- 0.2秒の高速処理(毎分45~60人)
- 間違った運賃を引かない
- 間違ったデータをNetworkに流さない
首都圏の交通基盤を支えるシステムなので、信頼性の確保には特に力が入っています。ICカード相互利用開始の際には、シュミレータを使い12億件分の乗り渡りパターンを検証し、実際にICモジュールを搭載した改札機を使用した総合試験は15ヶ月間、40万件にもおよぶ乗り渡りパターンを検証したのだとか。聞いているだけでも気が遠くなりそうな作業ですが、1683駅をカバーするICカード網の構築にはこうした影の努力があったのか、と深く感心しました。