対象読者
- Windows Azureの新機能に興味のある方。
- Windows Azureのサブスクリプションを持っており、Azureを利用したことがある方。
必要な環境
- Windows Azureサブスクリプション
- Visual Studio 2010もしくは、Visual Web Developer 2010 Express
- Windows Azure Tools for Microsoft Visual Studio 2011.3以降(Windows Azure SDK 1.4含む)
- Windows Azure AppFabric SDK V1.0 - April Update
Windows Azure AppFabric Cachingとは
Windows Azure AppFabric Caching(以下、AppFabric Caching)とは、高いスケーラビリティと低いレイテンシ、高いスループットを実現する分散インメモリキャッシュで、Windows Server AppFabric Cachingのサブセット機能を提供します。2011年4月28日正式版として提供され、以前は開発コード名「Velocity」として知られていました。
図1は、AppFabric Cachingを構成する概念図で、以下のような特徴を備えます。
- Web/アプリケーション層からは、単一のキャッシュに見える
- Web/アプリケーション層と、データ層の間に挟むことで、スケールアウトに適した構成を取ることができる
- WebロールからASP.NETセッションプロパイダー、OutputCacheプロバイダーとしても利用可能である。
AppFabric Cachingの利用方法にはいくつかの方法がありますが、本稿では、AppFabric CachingをASP.NETのセッションプロバイダーとして利用する方法について説明します。
Windows Azureにおけるセッション管理
ここでは、Windows Azureにおけるセッションデータの取り扱いについておさらいしておきましょう。
Windows Azureはスケールアウトを前提としたPaaSプラットフォームです。同じWebロールを複数のインスタンスとして異なるVMに展開して動作します。外部からのリクエストはロードバランサを介して、各Webロールのインスタンスに接続されます。このとき、ロードバランサにはセッション維持機能はないため、リクエストごとに異なるインスタンスにリクエストが送信されます。例えば、1回目のリクエストはWebロールのインスタンス1、2回目のリクエストはインスタンス2へと振り分けられます。このときはInProcのように各インスタンスのメモリ上にセッションデータを保持しておく仕組みであった場合に、2回目のリクエストで、本来あるはずのデータが見つからずに問題となります。
このため、複数のインスタンスから供用できるセッション状態ストアが必要なわけですが、現在までマイクロソフトからは正式に利用できるセッションプロバイダーは提供されていませんでした。このAppFabric Cachingのリリースによって、ようやくマイクロソフトが正式に提供したセッション管理方法が登場したといえます。
参考までにAppFabric Cachingを使わないセッション管理方法として以下がありますが、正式にサポートされておらず、有効期限切れのセッションデータを自力で削除する必要がありました。
- SQL Azureをセッション状態ストアとして利用する。
- Azureストレージサービスをセッション状態ストアとして利用する。
(1)は、「KB2006191 - Updated ASP.NET scripts for use with SQL Azure」を参照してください。
(2)は、「Windows Azure Platform Training Kit - April Update内にASPProvidersとしてサンプルが提供されています。